6 王都での再会
「『対人』のスキル戦術……?」
キャロルとエルザがきょとんとした顔で俺を見つめる。
「今までの戦いで、モンスターや兵器の類なんかは吸いこんで倒してきたけど、人間が相手だとやっぱり話が違うからな。下手すれば虐殺だ」
「虐殺……」
ごくりと息を飲むキャロル。
「以前に【ブラックホール】内部──【虚空の領域】に行ったとき、スキルで吸いこんだものは領域の最終層まで転送されて、そこで消滅したり、幽閉されたりする……って言っていたんだ。もし吸いこんだ敵兵がみんな消滅するなら虐殺だ」
「じゃあ、幽閉で済めば──」
「そう、武装解除させるなり、降伏させてまた外に出せばいい」
エルザの問いに、俺はうなずいた。
「その消滅や幽閉、ってマグナさんがコントロールできるのです?」
「いや、無理だ」
キャロルの問いに、俺は首を振った。
「ただし、現時点では。だから俺は──もっとスキルを使いこなせるようになろうと思う」
方法は、まだ分からない。
ただ、ヒントは一つある。
【ブラックホール】内の世界──【虚空の領域】の第三層に行くことだ。
第一層と第二層は一度行ったことがあるけど、第三層についてはまだ訪れていない。
あるいはそこで、俺がスキルを制御するためのヒントを得られるかもしれない。
雲をつかむような話ではあるけれど──。
可能性は、ある。
三日後、俺たちの馬車はラエルギア王都に到着した。
その足で魔法戦団の本部に向かう。
最高ランクの勇者であるリオネスやセルジュのおかげで、すぐに通してもらえた。
「また会ったな、マグナ・クラウド」
「あ、マグナくんだ。おひさしぶり~!」
本部では、王国選りすぐりの魔法使いたちが戦闘訓練をしているところだった。
帝国との戦いも激化し、臨戦態勢といった雰囲気だ。
さらに、魔法使いたち以外にも二人の冒険者の姿がある。
一人は、戦士のような革鎧姿の精悍な男。
一人は、東部大陸風の赤いドレスを着た、凛々しい美少女。
「お前たちは──」
強大な風の魔法を操る『烈風帝』クルーガーと、徒手空拳なら大陸最強と称される『闘鬼拳』レイアだ。
ともにSSSランクの冒険者である。
「聞いたぞ。あんた、SSSランクに昇格したんだって? いずれ上がってくると確信していたが、ここまで早いとは……まずはおめでとうと言っておく」
「同じSSSランク同士、よろしくねっ」
クルーガーとレイアが俺に笑顔を向ける。
「なんで二人がここに?」
「ボクはシルカの、クルーガーさんはラエルギア出身なの。祖国が帝国の侵攻にさらされてるから、立ち向かおうって感じ」
説明するレイア。
冒険者としてではなく、祖国を守るために傭兵として戦いに参加してるってことか。
「旧交を温めるのは、それくらいでいいかな?」
俺たちの会話をさえぎったのは、リオネスだった。
「悪いが話を進めたい。魔法戦団の責任者を出してくれ」
「団長は先の戦いで負傷して、療養中だ。俺が臨時で団長代理を頼まれている」
進み出たのはクルーガーだ。
「団長代理?」
「帝国との戦いで強い魔法使いたちが軒並み負傷して、今は人材が足りないんだ。で、俺に依頼が来たってわけだ」
「魔法戦団の団長代理を任せられるなんて、すごいな」
「クルーガーさんは、先代の魔法戦団団長だからね」
と、レイア。
「え、そうなの?」
「宮仕えはどうにも性に合わなくて、すぐ辞めちまったけどな」
驚く俺にクルーガーはばつが悪そうな表情で言った。
「ならば、話は早い。お前たちの力を借りたい。無論、我らも貴国にできることはしよう」
と、リオネス。
「私は勇者リオネス、こちらはセルジュ、アイラ、キーラだ」
「リオネスにセルジュって……まさか四天聖剣!?」
声を上げたのはレイアだ。
「人類最強戦力──第一階位勇者か」
クルーガーがうなる。
「で、俺たちの力を借りるってのは……?」
「我らは帝国に乗りこみ、仲間の奪還を計画している。だが帝国の中には、少々手ごわいのもいてな。お前たちに助力を頼みたい」
「……勇者たちとの共同戦線ってことか」
クルーガーがまたうなった。
「へえ、いいんじゃない。人類最強たちと一緒に戦えるなんて光栄だねっ」
レイアのほうは眼を輝かせている。
──その後、リオネスたちとラエルギア上層部で正式な交渉がまとまり、帝国相手に共同作戦を行うことになった。
最強クラスの勇者と最高ランクの冒険者──これほどのメンバーと一緒に戦えるのは頼もしい限りだ。
これが本作の今年最後の更新になります。
来年の更新は3週間ほどお休みをいただき、1月22日(火)から再開予定です。
2か月半くらいずっと毎日更新だったので、そろそろちょっと充電しようかと~。
再開まで気長にお待ちいただけましたら幸いです。





