5 魔法王都へ
マグナ視点に戻ってきました(´・ω・`)
帝国にさらわれたベアトリーチェを奪還するために、俺とキャロル、エルザはアイラたち勇者に協力することになった。
「まずは情報収集に当たる」
「現在、この付近で帝国と激しく戦っているのはラエルギアとシルカの二国。わたくしたちはラエルギアの王都に向かいましょう」
「ラエルギアの魔法戦団は強力です。場合によってはベアトリーチェさん奪還のために、彼らと連携するのもよいかと」
「その場合、僕たちもラエルギアになんらかの助力をする必要は出てきそうですね」
リオネス、セルジュ、アイラ、キーラ……四人の勇者たちが今後の方針を相談している。
俺たちはほとんど蚊帳の外というか、お任せという感じでそれを聞いていた。
「交渉次第だな。仮にラエルギアの協力が得られなくても、いざとなれば私が帝国まで行ってベアトリーチェを取り戻してやるさ」
自信たっぷりに宣言したのはリオネスだ。
……ラグディアにけっこう苦戦してたはずだけど、この人。
「さっきの人みたいに強い兵士もいるのです。協力していったほうがいいと思うのです」
「そうよ。手こずってたじゃない」
キャロルとエルザがツッコんだ。
「むむ……」
リオネスが顔を引きつらせる。
「……この人プライド高そうだし、そういうツッコミはなしの方向で」
俺は小声で彼女たちをたしなめた。
「あ、そんな感じなのです。以後気を付けるのです」
「それもそうよね。天下の四天聖剣だし、帝国の一兵士に苦戦したっていうのは認めたくない事実でしょうし」
うんうん、とうなずくキャロルとエルザ。
「でも、本当に単身で帝国に乗りこんだら、またピンチになって俺たちで捜索……ってことになりそうだよな」
「それを、もうちょっとプライドが傷つかない方向で説き伏せるのです」
「人類最強戦力の四天聖剣って自負があるでしょうからね、リオネスには」
ひそひそと話す俺たち。
「……全部聞こえているのだが」
リオネスはますます憮然とした様子だ。
しまった、けっこう耳がいいんだな、この人。
「まあまあ、その辺で」
セルジュがクスリと微笑んだ。
「わたくしたちだけで話を進めてしまいましたね。マグナさんたちのご意見も聞かせてください」「意見、って言われてもな……」
正直、俺が【ブラックホール】を展開して帝国まで行けば、とりあえず勝てそうな気もする。
ただ、ベアトリーチェは人質状態だろうから、正面からの力押しはまずいかもしれない。
「お前の力は重要だ。『運命を超越せし者』」
「いや、その仰々しい呼び名はできれば遠慮したいんだけど」
「そうか? 私なら喜んで名乗るが」
「俺はそういうの趣味じゃないし」
「むむ……」
なぜか残念そうな表情を浮かべるリオネス。
「私が名乗りたいくらいだぞ……かっこいいのに」
とりあえず、方針としてはまず魔法王国ラエルギアの王都に行き、魔法戦団に協力を要請する……ということになった。
さっそく出発だ。
この辺境地帯から王都までは数日の道のりである。
俺たちは馬車に揺られながら、一路王都へと向かう。
馬車は二台体勢で、一台にはリオネス、セルジュとアイラ、キーラが、もう一台には俺とキャロル、エルザが乗っている。
「俺、前から考えていたことがあるんだ」
キャロルとエルザの前で、俺は言った。
「考えていたこと……?」
「今回はモンスターだけじゃなく、帝国の兵士が──人間が、相手になることが多くなるだろうから」
俺は二人を見つめ、告げる。
「『対人』のスキル戦術を身に着けようと思う」





