14 合流
ようやくマグナ視点にもどってきましたw
はるか前方で、激闘が繰り広げられているようだった。
断続的に聞こえてくる爆音。
爆光や爆炎の輝き。
押し寄せる衝撃波。
……まあ、衝撃波は近づく端から【ブラックホール】が吸いこんじゃうんだけど。
激しい戦いであることは、一キロ以上離れていても十分に伝わってくる。
距離が離れているから、誰が戦っているのかも分からない。
エルザとアイラ組か。
キーラとセルジュ組か。
あるいは探しているリオネスなのか。
もしかしたら、その誰とも無関係な帝国と他国との小競り合いの可能性だってある。
何もわからないだけに、不安と焦りだけが募る。
くそ、自分が戦うよりもよっぽどきつい──。
俺は苛立ちながら走った。
自分のスピードがもどかしい。
いくら無敵のスキルがあっても、俺自身の身体能力は並でしかないのが──本当にもどかしい。
「いろんな匂いが混じって……それに木々が焼ける匂いもあって、上手く判別できないのです」
併走するキャロルが困り顔で言った。
「とにかく走ろう。射程距離まで入れば、問答無用で敵を吸いこめる」
俺が一キロ圏内に到着するまで──。
耐えてくれ。
俺は祈るような気持ちで走った。
しゅおんっ……!
いきなり【ブラックホール】が作動する。
「これは──」
自分のスキルながら、突然発動するとびっくりしてしまう。
すごいスピードで前方から何かが向かってきて、黒い魔法陣内に吸いこまれた。
「えっと……やっつけちゃった、のです?」
「あ、ああ、そのはずだ」
俺とキャロルは立ち止まり、顔を見合わせた。
「あ、でも、敵の攻撃だけを吸いこんだとかそういう可能性はないのです?」
「……なるほど。なら、本体は無事かもしれないな」
「あたし、ちょっと探ってみるのです」
と、キャロルが狐耳を、ぴょこん、と動かした。
さらに、すんすん、と鼻をひくつかせる。
音や匂いで前方の様子を探っているんだろう。
「──戦いの音や匂いがなくなったのです」
「そういえば、爆音が消えたな……」
やっぱり、さっきのは敵だったんだろうか。
吸引スピードが速すぎて、何を吸いこんだのか分かりづらいのが困りものだ。
「……まあ、敵を吸いこんだんなら、当面の危機は去ったってことだよな」
「なのです」
「現場に行って、確認だ」
「なのです」
なんとも戦場らしからぬ、締まらない雰囲気の会話だ。
俺とキャロルは思わず苦笑しつつ、さらに進んだ。
やがて──、
「エルザ、みんな、無事だったか!」
「よかったのです~!」
戦場には全員がそろっていた。
エルザにアイラとキーラの双子、四天聖剣のセルジュ。
そして──青い大剣を構えた、精悍な男。
敵の姿はない。
「『水』の四天聖剣リオネス・メルティラートだ」
リオネスが名乗った。
「マグナ・クラウドだ。こっちはキャロル・キール」
「はじめまして、なのです」
「お前のことなら知っている、冒険者マグナ」
リオネスが俺を見据えた。
鋭い眼光だった。
同じ四天聖剣でも柔和な雰囲気のセルジュとは、随分と違う。
視線を合わせているだけで、斬りつけられているような強烈な威圧感があった。
さすがに『人類最強戦力』とまで言われる四天聖剣の一人だけのことはある。
「妙な気配だ。これが因果の外に在る力──『運命を超越せし者』と呼ばれる存在なのか……?」
リオネスが俺をジッと見つめる。
ん、『因果の外に在る力』って言ったな?
またそのフレーズか……。
と、
「ふう、危なかった。間一髪で吸いこまれずにすんだよ」
空から声が聞こえた。





