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ショートショート7月~

はしご

作者: たかさば
掲載日:2020/07/08


俺は、はしごを上る。


一心不乱に、はしごを上る。


はしごを上りきったとき。


俺はきっと。


俺は。


…俺は?


俺は何で、はしごを上ってるんだ?


おかしいぞ。


俺は…屋根に上らなきゃいけなくて。


はしごを上ってた、はず。


何でこんなに上り続けてるんだ?


もう、屋根に上っててもおかしくないんじゃあるまいか。


ちらりと、下を見てみる・・・


「うわああああああ!!!」


なんだこりゃ?!


はしごが!!


雲を突き抜けてやがる!!


俺は今、雲の上にいる!!


上り続けすぎて、こんな所まで来ちまった!!!


戻れ!!戻らないと!!


下に降りていかなければ!!


けど!!


さっき見た地上が、あまりにも遠くて!!


遠すぎて!!!


怖くて、降りることが…できん!!!


足を踏み外したらと思うと、どうしても降りることが…。


上るしか、ない。


上るなら。


最後まで。




はしごを上りきるとそこには。


…なんだ?

ビルの建ってる、芝生…?

おや、誰か来たぞ。


「おーい、ちょっと!!」





「…で、貴方こんな所まで来ちゃったと言う訳ですか。」

「はしごってのはだな、上るのは怖くねえけど、降りるのは結構怖いのさ。」


はしごを上りきった俺の前には、なにやら羽の生えて、頭の上にわっかを乗っけた奴ら。

いわゆるあれだ、天使って奴だな。


「気付いたときに飛び降りるかしたら戻れたんですよ、貴方。」

「怖いじゃん!!無理だよ、エレベーターとかないの、ここ。」


「そんなのあるわけないでしょう!!!」


俺は周りを見渡す。連れて来られたビルの中には、無機質な部屋が並んでいるが・・・。


「貴方ね、はしごから落っこちるときに、怖がって魂抜けちゃったんですよ。で、体だけ落っこちたのに気が付かないで、魂だけになってはしご上り続けちゃったんだよ。」

「え、じゃあ俺の体今どうなってんの。」


「魂抜けて、ぼやっとしてます。左手ぽっきり折ってるけど、命に別状はないかな。」

「じゃあ、戻りたいんだけど。」


「はしごで帰るしかありませんね。」

「無理だよ!!怖いんだって!!」


「ここにいたら戻れなくなりますよ?!」

「それって死ぬって事?!」


「まあ、有り体に言えば。」

「マジか…。仕方ねえな。」


「はあ?!あんたね、無事な体あるのに、戻らないつもりなんですか?!」

「いや、だって怖いし。無理。」


「怖いも何も!あんた今魂なんですよ?!こっから飛び降りたって平気な霊体なんですよ?!」

「霊だろうと何だろうと、怖いもんは怖いんだってば!!」


「だめです、貴方強制送還します。ちょっと!!皆さん来てください!!緊急事態です!!!」

「どうしたどうした。」

「この人はしごでここまで来ちゃって!!戻りたくないって言うんですよ!!」

「なーにー!よし強制送還だ!!」


ヤバイ、なんか大事になってきたぞ。

そろり、そろり・・・。


「つかまえろ!!!」

「ラジャー!!」


大捕り物が始まった!!!

捕まったら…ここから突き落とされる!!


運動不足が身にしみる!!

俺は逃げ切れず、天使どもに捕まってしまった。


「さあ、観念して、ここから飛び降りて下さい。」


ずらりと並ぶ、天使どもにずいずいと端まで追い込まれる、俺。


「背中押しますか?それとも自分のタイミングで行きますか?」

「じ、自分のタイミングで!!」


とはいったものの!!

地面!!地面が見えない!!


「ちょっと待って、着地地点が見えない、変なところに落ちちゃったり…!!」

「自動でもとの体に戻るから!」


「ちょっと待って、とりあえず一息つかせて!」

「はよいけ!!」


背中を押された俺は、とっさにすぐ横の天使に手を伸ばし…!!!



ぶち!!ぶっちぶちぶちぃいいい!!!



天使の羽根を一部、毟ってしまい!!



「ぎゃああああああああああ!!!」

「ぎゃああああああああああ!!!」



天使の叫び声を聞きながら、自分も叫び声を上げ、地上へと落ちていった。




「…はっ!!!」


「あ、目が覚めましたね、貴方二日も眠ってたんですよ!!!」


気が付くと、病院のベッドに眠っていた。

俺の左手はぽっきり折れている。


「ああ、そうなんですね。」

「そうなんですねじゃないですよ!あんた人の羽に何てことしてくれるんです!」


げげ、さてはこいつ…天使だな?!


「いやまあ、怖くてね、あはは…。」

「あははじゃない!おかげで降りたはいいけど上れなくなっちゃったんですよ!どうしてくれるんだ!」


「なに、飛べないの?」

「羽の枚数が足りないんだよ!」


「ダイエットでもしたら軽くなって浮かぶんじゃないの。」


ちぃとふくよかな、いや、かなり太ましい兄ちゃんに軽口をたたく。


「天使に体重があるかっ!羽はね、成仏した魂の脱け殻なんだよ!僕がどんだけがんばって集めたか…知らないくせにいいいい!」


ぐええええええ!


て、天使に絞め殺される!こいつ実は悪魔なんじゃ…!


「あんたには責任取ってもらいます。僕が飛べるようになるまで、依り代になってもらうんで。」

「はあ?!無理だよ!俺はただの一般人で…。」

「今から一般人でなくなる、それだけの話です!」


すぅーーーーー…


ーでは、よろしく。


俺の中に天使が入りやがった!

ぐるりと周りを見渡すと…!


げぇぇぇぇぇぇぇぇ!


なんか!

めっちゃいる!


包帯巻いてるのや、血噴き出してるの、頭へこんでるのに、顔色悪すぎるやつ…!


ーじゃあ一個づつ成仏させて…


ふぅ…ん……がくっ


ーちょっ!こんなんで気絶?!勘弁してくれよ…!


頭の中で、天使の愚痴が盛大に響いた。




あれからずいぶん経って、今日。


「ようやく戻れそうです、長いこと世話になりましたね。」

「ふん、長くかかって悪かったな。」


この天使とのやり取りもこれで最後か。俺の魂でちょうど飛べるようになるんだってさ。ホントかよ。


「とっとと連れてけよ!」

「はいはい。」


俺は長年の相棒に抱えられて、あの忌々しい天界に行くことになった。はしごの上から見下ろした、あの恐ろしい景色も抱えられて見ればまあ、きれいなもんだな。


「あ、やっと来たよ!」

「いよー、久しぶり!」


天使は懐かしい仲間たちと談笑している。


「あなたちょっとこっち来て下さい、ちょっとお話が。」


なんだよ、俺はもう成仏してだな…。


「なんか僕羽集め過ぎちゃったみたいでした。」


ほれみろ!集めすぎたと思ってたんだよ!返せ!俺の苦労!…まあ、今さらいいけどさ!


「太ましいし、いっぱいもってたら良いんじゃないの。良かったね、じゃ。」


立ち去ろうとする俺の周りを天使どもが囲いこむ。ちょ…!やな予感…!


「そんなわけに行くかい!」

「まあまあ、あのね、あなたこの天使と一緒に羽集めたでしょう、なんかね、羽があなたに愛着持っちゃってね。」


なんだそれ。ちょっとヤバイ風向きになって来た…。


…げぇぇぇぇぇぇぇぇ!

俺の背中に!羽が!羽がぁぁぁぁぁ!


「「「ようこそ、天使組合へ!」」」


「あなた羽の数足りないから、ここから落っこちないで下さいね。」

「落ちたら僕と同じ事をしないといけなくなっちゃいます。」

「あ、これ君のわっかね!なくしたらダメだよ!」


「ちょっ!俺に拒否権は?!」

「「「ない。」」」


俺は、俺は……!


何で、何ではしごを上って、降りなかったんだ!

何で、何ではしごを上って、魂だけで上っちまったんだ!

何で、何で一人でサクッと、飛び降りなかったんだ!


今さらながら、すんげぇ後悔が!


成仏してのほほんと過ごす、俺の計画っ!



「まあまあ、そのうちまた生まれることもできますからね、それまで仲良くやっていこうじゃありませんか、わはは。」


かくして、俺は今日も雲の上で働いているのであった。



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― 新着の感想 ―
[一言] ハシゴは、上むいて登るぶんには、怖くないですよね、確かに。下を見る方が怖いですね。はい。 にしても、魂だけで、上ってしまうとは、うっかりですね。
[良い点] 盛大に始まりそうでこのお話はおしまい。 [気になる点] なんというか、微笑ましいような [一言] 坂道はビビリながら降る人です
2020/07/08 20:58 退会済み
管理
[一言] 星新一さんのショートショートみたいで面白かったです。
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