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プロローグ

2016年5月1日


うろな町商店街の表通りから一歩中に入ったところに

最近旅行代理店が開業したらしい。


そんな噂が春先に商店街を中心に流れていたのだが、

お店がどこにあるのか見つけられた町民は誰もおらず、

商店街活性化担当である高原直澄(たかはらなおずみ)達すら、

その店の存在を認識していなかった。

そのため噂は何かの勘違いかデマとの結論が下され、

町民たちもその存在が忘れられ始めていたGWのある日。



「なぜわがうろなツーリストに、

1ヶ月経ってもお客が一人も来ないんだーーー!!!」


どこか『不自然な、しかし綺麗な店内』において、

スーツ姿・坊主頭の男性が頭を抱えて叫んでいた。

胸に『店長』という名札をつけたその男性に

どこかけだるそうな、

『副店長』という名札を付けた女性が、

溜息をつきながら突っ込んだ。


「いや、家賃を渋って、空間の狭間なんかにお店作るからですよ、店長。

どうやってお客がたどり着くんですか?」


そうこのどこかおかしなお店、

『店長』が良く分からない力を使って作った不思議空間の中に存在しているのである。

そのため家賃も水道光熱費も一切かからないが、同時に住所は広告等に載せられないし、

郵便物も届かない。

商店街の裏手と空間的に一応繋がっているとはいえ、

『普通の人』がたどり着くのはまず不可能である。


「強くわが社のサービスを求める人は自然とたどり着けるようになっているんだ。

現に初日に双子を連れた若夫婦が来店してくれたじゃないか!」

「あの家族、特に双子ちゃんからは『異常な力』を感じましたから、

とても普通の客とは思えなかったですけどね。

・・・結局直前におばあさんの実家に帰省していたらしくて、

成約にならなかったですし。

そう言えば名刺貰ってましたよね。」

「おうそうだそうだ。」


女性に突っ込まれて坊主頭を机の下に突っ込む『店長』。

全然お客が来ていないのにすぐ取り出せない程整理してないって

どうなんだと『副店長』が更に深いため息をついていると、

そんなことは意に介していない『店長』嬉しそうな顔で名刺を頭上に掲げていた。


「『うろな中学校国語科主任 清水渉 初代うろな町教育を考える会連携担当』か。

なかなかやり手の人物っぽかったから、

彼に最初のお客さんになってもらえれば、

学校関係とか色んな所から引き合いがあると思ったのに!」

「・・・正直彼個人は面白がって使ってくれたかもしれないですけど、

うちみたいな怪しい所に公的な用務を回してくれたかは疑問な気がします。」

「何を言うんだ!あんなおいしいお土産をくれた人のことを悪く言うなんて!!」

「信用の根拠は結局そこですか。・・・まあ、いただいたゴーフルや炭酸せんべいは

美味しかったですよね。帰省先が神戸なんでしたっけ?」

「その通りだ。『いや、単に母親の実家として見ていた時は住むにはいいけど、

観光するには微妙だなと思っていましたけど、大事な人達を案内するために

色々調べると、また新たな魅力が見えてきますよね。』なんて、

非常に素敵なことを言ってくれたんだが・・・

やはり実績がないのがネックなのか。」


そう言って再度頭を抱える『店長』。

その姿に「アホの相手は疲れる」という

更に深いため息をつきながらも、

何とか真っ当な方向を模索しようと提案する『副店長』


「いや、そういうレベルではなくて。

ちゃんとした店舗借りるとか、

広告打つとかそういう所から始めるべきでは・・・」

「うん、神戸はいいよな。

よし、決めた!

『開業記念 うろな町民を神戸にご招待ツアー』

略して『うろな神戸ツアー』を実施する!!」

「ああ、もう人の話を全然聞いていない・・・

実施するって言ったってそんな費用どこに」

「そんなのもちろん・・・こうするのだ!!!」



『店長』の手からほとばしる不思議な力。


それと同時に平和なGWを過ごしていたうろな町に響き渡る、

複数の驚きの声。


一体『店長』は何をしでかしたのか。

その答えは神戸にある。






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