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幼馴染もの

幼馴染に告ったら「あんたなんて別に好きじゃないんだから」とフラれたので潔く諦めたら何故か泣かれたのだが

作者: テル
掲載日:2023/08/30

 放課後。誰もいない校舎裏。


 風の音さえ今は聞こえない。


 俺は今、一大イベントを迎えようとしていた。

 しばらくすると、一条 紗江(いちじょう さえ)がやってきた。


「ごめんお待たせ、はっ話って何?」


 紗江は髪をくるくるといじりながら視線を逸らして近づいてくる。

 おそらく紗江も勘付いているのだろうか。



 俺と紗江は小さい頃からの友達、いわゆる幼馴染であった。

 家も近いということもありほとんどの時間一緒に過ごしていた。

 なので今までは仲の良い親友という感じだったのだが、高校に入ってから紗江は色々と垢抜けた。

 以前より可愛くなった。今思えば前も可愛かったのだがそれに磨きがかかって輝き始めたという感じだろうか。

 かなりの美人になったと思う。そして性格も明るくなった。クラスの陽キャ的立ち位置なのではないだろうか。

 

 そのせいで紗江を異性として意識せざるをえなくなったのだ。

 多分恋愛感情というものが芽生えていたのだと思う。


 素の紗江のツンデレで不器用なところも可愛いと思えるようになってしまったのだから。



 そして数日前。

 俺は友人とのゲームに負けて罰ゲームで紗江に告白することになったのだ。

 このまま親友という関係でいたいという思いもあったが、想いを伝えたいという感情もあった。

 というわけで俺は罰ゲームをきっかけに一歩踏み出すことになったわけである。

 これが吉と出るか凶と出るかわわからない。ただフラれたら潔く諦めて今までの関係のままでいよう。


 いざ言うとなるとやはり緊張するものである。

 心臓の鼓動がいつもより数段速い。


 俺はそれを落ち着かせるように一呼吸置いた。


 そして紗江の方を見て言った。


「紗江、俺と付き合ってください」


 人生で初めての告白。


 しばらく沈黙が続いた。


「私が好きってこと?」

「ああ、だからお前の気持ちを聞かせて欲しい」


 そう言うと俺はキッパリと言われてしまった。


「......あんたなんて別に好きじゃないんだから、でも、その、えっと」


 好きじゃない......ああ、そうか、無理だったか、まあ伝えられただけ良しとしよう。


「そうか、はは、ダメだったか」


 俺は自虐的に少し笑った。


「あっえっと、いやっ別にそういうわけじゃ......」


 紗江も俺を傷つけないようにしてくれているのだろうか。

 まあでもフラれたと言う事実は変わらない。


「ごめんな、時間取らせて、これからも友達ではいてくれ」

「うん、それはもちろんだけど......」

「じゃあまた明日」


 俺は紗江に背を向けて歩き出した。


 フラれるってこんなにも心が痛いものなのか。胸が張り裂けそうと言う表現の意味がわかった気がする。


「ちょっちょっと待っ......ちょっと待ってよ」


 震えた声で紗江は何故か俺を呼び止めた。

 後ろの方を向くと大粒の涙を流している。


「さっ紗江?」

「......っ!? ごっごめん」


 なんで紗江の方が泣いでいるんだ?


 ......相手をフる側も心が痛むと聞いたことがある。

 やっぱり罰ゲームなどやるべきではなかったのか。結果紗江を困らせてしまった。


 俺はもう立ち去った方がいいか。こう言うのは1人にさせた方がいい。明日謝ろう。


「ごめんな、じゃあまた」


 俺まで涙腺が崩壊しそうである。走って俺は帰路についた。


 ***


「......で、フラれたって訳か、そりゃあ可哀想に」

「大体、お前の提案した罰ゲームのせいなんだよ」


 次の日、俺はやりようのない気持ちを罰ゲームを提案した友人、高城 輝樹(たかじょう てるき)へ怒りに変換してぶつけていた。


「乗ったのはお前だからな」

「......まあそれもそうか、はあ」


 ごもっとものことを言われてため息をついてしまう。

 結局、紗江との関係はぎこちないものにもなってしまった。

 まあ昨日の今日である。また元通りに戻ったら良いのだが。


「とりあえず今日は心の傷を癒すのに専念しとけ」

「言われなくてもそうしてる」


 ぐだーっと俺は机に倒れ込んでもう一度ため息をついた。


 そういえば紗江には他に好きな人がいるのだろうか。

 高確率でいるだろう。高校生だし恋愛事情の1つや2つあってもおかしくない。


 俺は単なる昔からの友人という感覚なんだろうな。



「いやあ、行けると思ったんだけどなあ」

「......所詮は友達止まりですよ」


 ***

「......いや、でもあれでよかったんだよね」


 茅原 湊(かやはら みなと)をフった後、紗江は帰ってベッドでうずくまっていた。

 紗江も好きとまではいかなくとも湊に対して特別な感情を抱いていた。

 だから告白された時は気持ちが揺れ動いて、本当は了承するつもりだった。


 ただ、数日前。紗江は親友とも言える存在から恋の相談を受けていた。


 ***

「ねえねえ紗江、ちょっと聞いていい?」

「うん? どうしたの?」

「紗江って湊くんのこと好きなの?」

「なっえっ!? わっ私があいつを!? ありえないに決まってるじゃん」


 この時紗江は少し湊を異性として意識し始めていた。

 そんなところ親友からこんなことを言われた。


「そっか、よかった、私実は湊くんのこと好きなんだ」

「あっ、そっそうなんだ」

「うん、それでちょっと恋のキューピッドになってほしいの」

「私が?」

「うん、湊くんと幼馴染で仲良いし、私も仲良くなりたいなって思って」


 親友の頼みである。紗江はもちろん了承した。


「いいよ、その恋応援するよ」

「本当? やったー! ありがとう!」



 そしてその親友と湊の距離は段々と近くなっていた。

 紗江としてもこのままいって付き合ってほしい。


 しかし何故かそんな2人の様子を見るたびに胸が痛んだ。


 (私もしかして嫉妬してるの......? いや、でもそんな訳ない、ないに決まってる)


 湊と一緒にいると心臓の鼓動が速くなっている。これは明らかに意識している証拠だ。

 しかしそれでも紗江は自分の心を偽り続けた。


「......何やってるんだろうな、私」


 ***


 しばらくうずくまっているとドアをノックする音が聞こえた。


「紗江ー、入るよーん」


 そして入ってきたのは一条 飛鳥(いちじょう あすか)、紗江の実の姉である。

 変わらぬテンションで部屋に入ってくる。


「ってあれ? どうしたの紗江、そんな布団にうずくまって」

「......別になんでもない」

「あんたって昔からそうよね、少しはお姉ちゃんを頼ってくれてもいいのに」

 

 飛鳥はドアを閉めてベッドに座った。


「どうしたの、紗江、お姉ちゃんに相談してみなさい」


 飛鳥は紗江の頭を撫でた。


 今まで取り巻いていた複雑な感情が一気に落ち着いていく。


「......うん、実は」


 そして紗江は湊への想い、今日会ったことなどをほぼ全て話した。


 話しているうちに自然と涙が溢れ出てくる。飛鳥はそんな紗江を優しく慰めた。


 そうして全てを話し終えた。


「......なるほどね、甘酸っぱいね、それでぶっちゃけ湊とどうなりたいの?」

「湊とその子が付き合ってくれればそれで......」

「違う、紗江は湊とどうなりたいの?」

「私......私はその......」


 湊とどういう関係でいたいのか。

 飛鳥は紗江の性格上自分を偽っていることが大体わかっていた。

 だから飛鳥は紗江の本心を問いかけたのだ。


 それによって今まで隠していた気持ちが露わになってくる。


 

 (優しくて頼もしくて今までずっと一緒にいてくれて......そんな湊が好き! だからっ)


「みっ湊の彼女になりたい」


 本心を言うと飛鳥は満足げに笑った。


「そう、それでいいのよ、まだ遅くない、明日にでも気持ちを伝えておいで」

「でも多分気まずいだろうし......」

「何言ってんのよ、もうこの先チャンスはないかもしれないのよ」

「......わかった、言ってくる」


 ***


「ねえ、ちょっといい?」

「うん、どうしたの?」

「実は......」



 紗江はその親友にこれまでのことを洗いざらいすべて話した。

 正直ビンタの1、2つもらう覚悟である。


 裏切られたと捉えられてもおかしくない。実際そうなのだから。


「......そっか」


 紗江は目を瞑った。罵倒罵声全て覚悟した。


 ただ返ってきたのは意外な言葉だった。


「そうだよね湊くんかっこいいもんね、紗江が好きになっちゃうのも無理ないよ、だから行っておいで」

「......え?」


 顔を上げると半分涙目になっていた。

 そして震えた声で続けた。


「私、感謝してるから.......紗江には」

「......ごめん、ありがとう」


 ***


「湊、一緒に帰ろうぜ、どうせ紗江にフラれたばかりだから一緒に帰らないんだろ」

「人の傷心に漬け込むな、まあいいけど」


 やったぜ、と言われ俺は肩を組まれる。


「次の恋を探してみないか?」

「嫌だよ、俺にはあいつしかそもそもいなかったし」

柚李(ゆずり)とか実際どうなんだ? 最近仲良いだろ?」

「まあ友達だな」

「ふーんそっか」


 そうして話をしながら校門前まで行った時だった。

 紗江が門の前で立っているのが見えた。


 そして輝樹は俺の背中を押して......。


「ほい、行ってこい、多分お前待ちだろ」

「はっ? ちょっ!?」


 そして意図せず紗江の元へ来てしまった。


 紗江は少し驚いたような顔をしていた。

 

 気まずいなと思いながらもこれまで通り話しかけようとした。

 しかし先に話しかけたのは紗江だった


「みっ湊、今日よかったら一緒に帰らない?」

「えっああ、別にいいけど」


 後ろを振り向くと輝樹は親指を立ててニッコリと笑っていた。


 

 と言うわけで俺たちは一緒に帰ることになったわけである。


 気まずい感じがするかなとも思っていたもののそんなことはなかった。

 いつも通りの会話である。なんだかんだでこの関係のままの方が良かったのかもしれない。


 ただ、少しした後、紗江は急に立ち止まった。


 俺もそれに気づいて止まる。


「ねえ、湊」


 そして紗江は一呼吸置いてから言った。



「私、湊が好き! だから付き合って」

「......え?」


 俺は自分の耳を疑った。

 今紗江が行ったのは告白なのだから。


 俺は「あんたなんて別に好きじゃない」と言われてフラれたはずである。


「ごめん、湊、嘘ついて、迷惑だよね、後々言われても、でも優しくて頼もしくて、そして今の今までずっと一緒にいてくれた湊が好き」

「......それは本心なのか?」

「うん、これが私の本音」



 たしかに前はフラれたかもしれない。ただ今は立場を逆転して紗江からの告白である。


 俺も紗江も同じ想いだったってことだ。

 ともかく俺が言えるのは......。


「俺もお前が好きだ、だから......こちらこそよろしく」

「本当!? ありがとう、湊」

 

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