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ネコミミ少女に転生したら殴り特化でした~剣も魔法も使えないのでとりあえず近づいて殴ることにする  作者: 八万岬 海
3章 ― 急追するモノ

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第60話-ティエラ教会④

 ヨルはアサヒナにティエラ教会の穏健派と急進派のことをなるべく解りやすく説明していく。


 急進派が違法な手段で魔力を集め、それを使い聖典に記されている危険な魔獣の復活を企んでいること。

 そのためにティエラ教会聖騎士団が掌握され操られている可能性が高いこと。



 ヨルはそれを止めようとしていることなど、神やら細かいことは除いて三十分ほど掛けてアサヒナに伝えた。


――――――――――――――――――――



「なるほど、ではその急進派をぶっ倒して聖騎士団とやらを正気に戻せば一件落着なんだな」


「簡単に言えばそうだけど」


(意外に……いやなんとなく解っていたけれど、アサは脳筋だなぁ)



 操られている聖騎士団やエイブラム大司教だけならヨルは勝てると見越している。


 だが、エトーナ火山には大樹海のように未知の凶暴な魔獣が多く存在して居る上に、もしテュポーンが復活してしまったら、ただの人間であるアサヒナやヨルでは勝ち目はなくなる。



(でも、ぷーちゃんが言うにはアサも神力をもっているんだったっけ)




「で、ヨルはこれからエトーナ火山に向かうのか?」


「一応そのつもりだけれど」


「私も着いていっていいか?」


 アサヒナは一応質問しているように聞いてくるが、その表情はニヤリと笑みを浮かべており、既に行く気満々のそれだった。


 ヨルとしては一人でサッと行って、倒せるなら倒す、無理なら逃げ帰る作戦で行きたかったのだが、アサヒナが居るとその作戦は使えない。



「アサが着いてくるメリットって?」


「これでもそれなりに戦えるぞ? 一応これでも近衛騎士団の団長だしな」


「……ソロで倒せる魔獣ってどのレベル?」


「一人か……あんまりやったことはないな。あ、でもこの間、冒険者ギルドでS級認定された"ナイアー"ってやつならソロで倒したことはある」


 ソファーに座ったままふんぞり返るアサ。

 ヨルはその胸元を半眼で睨みながら"ナイアー"という魔獣を思い出そうとするが記憶にない。




「ねぇ"ナイアー"ってどんなやつ?」


「えっと、気持ち悪いやつ。下半身がタコみたいで丸い頭に目が三つ付いてて……」


「え、それって……」


 アサヒナが語った魔獣の容姿は、村を出たヨルがアルフォルズを助けた時に現れた正体不明の魔獣であった。




(あれをソロで倒せるんだ……アルはキツそうだったけれど)


 しかし、アサヒナがソロであの魔獣を倒せるのなら数が出てきても共闘は可能だろうと、渋々ではあるが一緒に行くことにした。



「あのカリスって子は連れて行かないのか?」


「さすがに何があるのか判らないしね、危ないわよ」


「魔力量だけなら、ぷーちゃんより高いんだし連れてけば? 魔力供給があればヨルも普通に魔法使えるんだろ?」


「え? カリスってそんなに魔力量多いの?」


 驚愕したヨルが隣に座っているサタナキアに視線を向ける。


『へい、カリスは内包魔力だけなら、あっしより高いです』


「へぇ……そんなこと気にした事無かったけれど」




 確かに黒ローブたちが彼女一人の魔力をキーにしてサタナキアを召喚していたと思い至る。


『ちなみにヴォルはカリスの倍ありやす』


「まって、その前に……なんでアサはぷーちゃんの魔力量とか解るのよ」



「言わなかったっけ……? あ、あのときヨルは脱ぐのに忙しかったから聞いていなかったか」


「脱ぐのに忙しかった?」


 言葉として色々とおかしなことをいうアサヒナだが顔は至って真面目だった。


「ほらあの夜、ヨルが私の鎧着てみたいって言い出して、着込んだ途端重さで動けなくなり、藻掻(もが)いていた」


「……あの夜の私は私じゃないから」


「そうだった、記憶も無くなっていたな」


「その時に言ったんだが、私の目は特殊でね、相手の内包魔力が見えるんだ。色々と制限もあるが魔法型かどうかぐらいは解る」


「へぇ……」


 いわゆる「魔眼」という身体的特徴であり、一部の悪魔や先祖返りをして強大な力を持ったセリアンスロープが持っている事がある。そして基本的に人間で魔眼持ちは報告された事はない。


「ちなみに、私は?」


 ヴェルに魔力はもっていないと聞かされていたヨルだったが話の流れから聞かないとおかしいかなと思い聞いてみる。


「ヨルは……正直わからない。少しだけあるのは見えるんだが、色が……な」


 アサヒナ(いわ)く、相手の魔力量は範囲で、属性は色で見えるそうだ。

 火が得意なら赤っぽく、水が得意なら青っぽくといった具合だそうだ。


「なんていうか、ぷーちゃんは赤だ。黒が混じっているように見えるのだが、火属性が得意なんだろ?」


『火……確かに火属性でやすが』


 サタナキアの使う魔法は火属性ではなく、正式には黒炎系魔法という水系の魔法では消すことが出来ない特殊な魔法で、一部の上位魔族が使えるものだ。


「で、ヨルはパッと見た感じは魔力はゼロ。……だけどじっと見ていると薄っすらと有るのが見えるんだ。でも色が着いていない。こんなパターンは初めてなんだ」



 アサヒナが言う「色がついていない」というのは、おそらくヨルが持っているのが魔力ではなく神力だからだろう。

 しかし、アサヒナが神力を見ることができるという方がこの場合問題だった。


(アサは神力が見える……つまり魔眼ではなく神眼。やっぱりアサはベストラの子孫っていう可能性が高い……)


 神力はどんな場合においても人間やセリアンスロープには感じることができない。

 その力を使った神法が起こした現象しか認識できないのである。


 神眼とは一部の神が有する権能であり、ヨルの知り合いの神「霜のベストラ」という女性は、"すべてを見通す"規格外の神眼を持っていた。

 魔力だけではなく、相手の心や感情、肉体の寿命など、ありとあらゆる情報を観ることができたのだ。


(そのせいであの子は若干……じゃなくて、かなり病んでたんだけどね)



「私は魔力がなくて、使うときに周りから無意識に集めているって昔診断してもらったのよ。だからちょっと変なんじゃない?」


「魔法を使うときに周りから必要分を集めて使うのか……? それはそれで相当気になるやり方なんだが、普通なのか?」


「さぁ……詳しい話を聞いたことが無いから判らないわ。ちなみに自分で自分を見るとどうなの?」


「私か? 私自身のことはわからないんだ。でも魔法が使えないからな、きっとゼロなんじゃないかなと思ってる」


「そっか。それで話は戻るけれど、カリスがそんなに大きな魔力量ってのは具体的にはどれぐらいなの?」



 ヨル自身、魔法を使うことができないが知識は問題なく持っている。

 それこそヨルが育った村の教会のおばちゃんに叩き込まれたのだ。最近の魔法だけでなく、最近では使うものも居なくなった魔法ですら知識として持っていたのだ。



「うーん……どれぐらいって言われてもなぁ……神雷嵐鎖(サンダーチェイン)なら十発ぐらい余裕じゃないかな」



 神雷嵐鎖(サンダーチェイン)は上級の雷魔法であり、雷槍(サンダーランス)が一条の稲妻だとすると、神雷嵐鎖(サンダーチェイン)は降り続く稲妻だ。

 その暴威から逃げることはほぼ不可能で、他に逸らして直撃を逃れるか、結界などで防ぐしかダメージを防ぐ手立てがない魔法である。




『アネさんが以前使った時にあっしの二割ぐらい持っていったんで、それぐらいかと思いやす』


 それならば、言い方は悪いが「魔力タンク」として同行してもらうのはありがたい話だと考えるのだが、今回に関しては命の危険が十分考えられるのだ。

 同行者が増えれば触れるほど、危険は大きくなる。




 なお、悪魔は内包魔力は多くある必要は無い。使いたい時に使いたいだけ周りから集め自分のものとして変換する。その効率が究極に良いのが悪魔という種族である。

 だがサタナキアはヨルの眷属となっているため、魔力を周りから集める際に"ヨル"というフィルターを通るために、その能力の行使に大きな制限が掛かっているのである。




「……やっぱり今回は私とアサで行きましょう」


「ヨルがそれで良いのなら構わない。ただ足手まといにはなりたくないから、いざというときは私のことは無視してくれて構わない」



「そういうわけには行かないよ」



「いや、これでも近衛騎士団団長でね。生き残ることに関してはそれなりに対策をしているのさ」


 ニヤリと笑うアサヒナに、ヨルは「わかったわ」と返事をして具体的な出発計画を立て始めるのだった。


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