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デカグラマトン読んでてクッソ書きたい外伝が出来たヤバい助けて
「そのファッションに似合ってない薙刀だなぁ!」
「長巻を、ご存知無い!?」
悲報、妹様、長巻という武器種を知らない模様。その体で存分に味わいやがれオラァ!
「あぁ!?」「へぇ!」
踏み込みからの大振りに合わせられたガード、至近距離の激突の結果は……拮抗。
私の今のステータスに対し何故かこの女は着いてきていた。きもっ!
「どんッなステータスしてんだよお前ッ!」
「あはっ、さては二次職剣豪かな!?」
「加えてAFでバフしてンだよこちとら!」
ただのドーピングじゃねぇか。
さておき裂帛と共に体ごと双剣で弾かれる。
弾かれた勢いのままターン、一歩退いてから回転のままに高速の横薙ぎ。
ガキィン! と金属同士の衝突音を鳴らして、私の刃は片手で真正面から止められている。
力を込めているが、然し腕はそれ以上進まない。
反撃、空いていた左の剣の突き。動き出し時点で避け、長波を剣身に滑らせ次手を妨害しながら戻す。踏み込みを視認、左足を接地したまま滑らせ後ろに重心移動、右足を浮かすと同時に進路に迎撃を置く。直後に二刀との激突。
衝撃、力を抜きそのまま後ろへ跳ぶ。押し切りに来る妹の出鼻をリーチで潰し、懐に入れないよう中距離から怒涛の連撃。
対応を間合いの外から強いる。
持ち場所を高速で切り替え、鶴を折るが如く綺麗且つ流麗に、袈裟に、逆袈裟に、切上げに、横薙ぎに。全身の筋肉を使って長い刀身を全方位から叩き付ける。
踊る、踊る、踊る。
斬撃の嵐に閉じ込め、中距離から無慈悲に磨り潰す。
脳が覚えてる動きの通りに、脳死で雑に攻撃を出力して武器を振るう、武器となる。
(相当なSTRだな)
長巻である蒼刀[長波]は刀身も柄も両方1m弱あって重く、それを扱う私のSTRもかなり高い。それを体重と遠心力乗せた私のPSでぶつけてんのに、妹はあろう事か片手の剣だけで真正面から受けても揺らぐだけで吹き飛ばない。
二次職『剣豪』、STRに1.5倍、DEXに1.3倍の補正を掛ける脳筋職であり、スキルも剣戟を強化する順当な剣士系上位職。
過熱へと誘う商船中に20分間戦ってきた彼女は果たして、私の圧倒的火力に追い付いていた。
「……まぁ、だから何? だけど」
「ッ!」
久々に脳を働かせてみる。
ビルド考察、対人環境でそれだけのSTRを振るのは無理がある。AFで盛るにも素は中々の馬鹿振りは確定、これで他の長所を用意するのは無理が出るな?
畢竟、全能力値で見るなら私の優位は変わらない。イコール私はそれを押し付ければ大した相手じゃないや。
キュッ! と窓を拭いたような音を軍靴で奏で高速ターン、加速する斬撃が激突する直前に踏み込み、交錯と同時に即座に切り返してそこに移動速度を乗せる。
一撃の重さから手数を重視した立ち回りへ。
防御に回る二刀を弾きながらAGIを使い、肉体の加速の瞬間に攻撃を合わせ、反撃より速くその場を動く。
縦横無尽に飛ぶ斬閃にフットワークを追加、私のメインステータスのAGIを活かし、連撃のBPMを上げた。
「じゃあ、死ね」
鈍い火花が空中に咲き乱れた。
******
(化け物がよぉ!)
一撃一撃が馬鹿みたいに重いのに、それが狂った速度であらゆる方向から叩き付けられてる。
衝撃で腕は痺れ、ぶつかる度に爆音が鳴り、心臓が張り裂けるんじゃないかと思う程に加速する。
瞳孔かっぴらいて予備動作を死ぬ気で捉え、全速力で脳を酷使して漸く捌ける暴力的なまでの攻撃密度。
(予備動作少な過ぎんでしょコイツ!)
声を出す暇すらなく、悪態は心の中でしか着けない。
βテストとサービス開始からの計二週間、私はずっとこのゲームで試合を回してきたが、その中で幾度と見てきた天才達と比べてもコイツの技術は群を抜いている。
別ステータスの加算接続、攻撃点から次の攻撃点までの速さ、基本的な体捌き、徹底的に潰されている隙……何よりそれら全てを特別なことなんてしてないように、表情一つ変えずに平然としてくるのが凄まじい。
双剣は手数に振った武器種であるというのに、力負けしていないにも関わらず距離を離されてから詰められないのが私と姉との実力の差だった。
でも……
(視える!)
そんなの全部想定内だ。
寧ろ想定通りでなくちゃ越えようがないだろうが。
剣身に刃を滑らせていなし、即座の切り返しを側面を叩いて逸らす。
反射的に受けていた攻撃を、意識的に捌けるように変えていく。
それが出来るようになっていく。
目の血管が浮き出ててくるような錯覚があった。
どんどん遅くなっていく視界内と、反対に加速していく思考を認識していた。
頭が冴えていた、動きのキレが増していった。
絶えずシミュレートしてきたイメージに、漸く現実が追いついて来た!
「へぇ?」
また動きを変えてきた。
動き回る高速の連撃から、変則的な曲撃へと。
大振りを弾いた刹那、私を誘うように空間に空白が生まれる。
敢えて反撃を入れた瞬間剣身を柄で腕毎弾かれ、そっちに意識を逸らしながら同時に踏み込んでくる。
流れるように反転した逆袈裟を無理矢理躱せば既に私の間合いだが処理の遅れは丁寧に積み重なっていて、次の剣戟の対処に退くかどうか迷わせる場面。
それを俯瞰的に認識していた私は、コイツの答えを知っている!
「──蹴りでしょ?」
ズバァン! と凄まじい音を立てたのは私の膝。
足を曲げて防御に出したプロテクター部分は、音速の軍靴を芯で受け止めていて、
それを認識した化け物は、今日初めて表情を変えた。
「足癖悪いじゃん」
「あんたにだけは言われたくないけど!?」
──人読み。
よく見知った相手にだけ出来る、癖読みをより深く突き詰めた物。
私は基本性能でお姉ちゃんにはまず勝てない。技術も、狂気も、掛けた時間もきっとまだ及ばない。……でも、そんなことはとうの昔に知っている。
その前提で、私はお前を殺す算段を付けてきた。
私の中の目標は常にお姉ちゃんだった。
それは倒す目標でもありながら、技術の見本としてもずっと私の目標で、ここまで私が強くなったのはコイツの動きを真似て、参考にして来たからだ。
どうすれば近付けるか、どうすれば殺せるか……そんなシミュレーションを何万回とイメージの中にあるお前でしてきたからこそ、私の執念の刃はこの化け物に届きうる!
(──通じた)
これは覚醒とでも言うのだろうか?
成功体験は人を歓喜させる。
想像と現実の擦り合わせが進み、凡そ虚を突くだろう必殺を読みで防いで、私の脳は活性していた。
それを認識出来ていた。
アドレナリンが止まらない、興奮が終わらない。
世界がどんどん遅くなっていって、意識は過去一番にクリアになっていく。
全能感があった。姉の心音すら聞こえるような超感覚があった。頭がおかしくなるほどの気持ちよさがあった。
「随分面白い顔してんね?」
……ああ、ヤバい。
多分今、最強だ。
実の所サイコちゃんがヤバいのは反応速度や反射神経ってより判断速度。思考が大幅にショートカットされてるから一瞬で仕掛ける手数がダンチ




