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莠̵̧҇悟̴̛͜捉̸̡͠逶̷͢͡ョ̵͢͞縺҈͢͞ョ̶̢͡繧̷͢͡オ̸̨̛繧̷̧͠、̷̡͠繧̴͢͡ウ̷̧͞繝҈̢̛代҉̧҇せ̸͢͠  作者: ?
2章前編:LIVE TO THE INSANE

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世界観考察して垂れ流してる時が一番楽しいまである

「……トラップはいいけど、壁に凭れるのは下策でしょ」

「うわぁっ!?」


 家屋の出入口全てに仕掛けられていた罠を無視し、プレイヤーの位置を気配で読んで薄壁に環境爆弾を仕掛けて起爆。

 鮮やかなダメージエフェクトと爆煙のする方に続けてフラッシュグレネードを投げ、状況把握に意識を割く暗闇に慣れた目に、閃光の直撃。


「6」


 悲鳴と共に空いた風穴から突入し、無防備な首を切り飛ばす。

 五秒に満たない決着。

 忽ち散らばる様々な物資と、ログに流れるキル報告が、暗殺の報酬だ。


「壁からの奇襲には気をつけようね」


 精神的雑魚には用はないんだよなぁと。

 使えるドロップは……氷の魔剣にリフレクターか。覚書は私には意味無いけど、まぁ悪くないラインナップ。

 惜しむらくはこれまで手に入れたアーティファクトが全て攻撃系であることだが、現状探索能力は知識で潰しが効くので問題ないっちゃないか。


「……さて、釣れるかな?」


 二回目のスキャンも無事やり過ごし、そろそろ縮小していくエリア外周が迫ってきた頃合。

 未だにそれなりにいる餌を捕食しているのは、或いは出来ているのは、他プレイヤーが前に進めない面倒臭い問題があるからだった。


「おっと」


 暫し待つ。

 これ見よがしに屋根の上で雨に打たれること約一分、先の閃光弾で戦闘を嗅ぎつけたのだろう、プレイヤーからの攻撃が飛んできた。

 雨を裂く鋭い狙撃は然しあくまで弓矢、敢えて掴んで止めてやる。

 爆発もしなけりゃ威力も低い、様子見といった具合の一撃だった。

 対して私はフラッシュグレネードを一つ空に投げ、刹那の太陽を闇夜の中に作り上げる。


 お互い顔も知らぬ敵同士で、声の無いやり取りではあったが、果たしてそれは実を結んだ。


「……どこまでやるかによるよー」


「アレを潰すまで」


「OK、乗った」


 木陰からの声に目的を告げれば、了承と共に女のプレイヤーが両手を上げながら現れる。

 装備は……結構充実してるな。大分濡れてるし、屋外で活動してた同業者ってとこだろう。


「よっと……裏切るなよ?」

「せめて抜けてからするよ」

「上等」


 尻を濡らすベニヤ板から飛び降りて、バシャっと音と泥が地面に鳴った。


 察しがいいのは最低条件だったが、流石に高レートの予選となれば状況が分かるやつがいて助かる。

 使える物は全て使う……それだけ貪欲でなきゃ、これから先には行けないし。


「……前衛職?」

「まぁそう。中でいい?」

「うん。先行してね」

「ちっ」

「普通に怖いんだからね、これ?」

「許容範囲だよ、これは」


 生憎とVRゲームのラインについては詳しいもんで。




 ******




「おやこれは……」

「チーミング、ですね」

「なるほど、そうきましたか!」


 試合中の面白い場面を自動ピックアップするカメラ、それを切り替えながら解説していた実況席にて、ある雨が降るマップにて注目されたのは、丁度ある二人の女性プレイヤーが言葉少なげに行動を共にする光景だった。


「鳶さん、そういえばこの大会でのチーミングについてはどういう取り扱いなんでしょうか?」

「システム判定で失格が決まる基本設定です。この場合の彼女らの目的は……まぁ明白ですね」

「エリア縮小も差し迫ってきましたし、これは注目の一戦になりそうですねー」


 チーミング……それは主にバトルロワイヤル性のゲームにおいて課題となる、本来敵同士であるプレイヤー同士で協力して戦う行為である。


 通じない可能性の高いVC、或いはゲームキャラの行動で示すしかない昔のゲームと違い、自分の思った通りにアバターが動く昨今のVRゲームでは容易く出来るようになっていた。


「このマップ古城跡Aでは、外周の森林地帯から人工物のある城下町との境目に大きな川とそれに掛かる橋があります。外周スタート勢がいつ、どこを、どう渡るのかが本来の中盤の鍵なのですが……」

「天候が雨のため川が増水して、中央へ渡るルートは現状橋に限定されています」

「加えて夜、かつ大会であることから試合展開が遅く、早期に中央に抜けたプレイヤーは少ない上に、エリア縮小が普段より早くなっています。……一応中央ど真ん中の戦場跡は森から地続きですが、かなりの遠回りかつ終盤では微妙な位置のため、間に合わなければ選びたくない、選べない択になっています」

「──だからこそ、こうして門番が刺さる訳ですね?」

「ええ」


 画面が切り替わり、次に映ったのはこの試合会場の前回のソナー結果だ。

 実況席のそれは試合中のプレイヤーが見れるものよりも詳細に表示されていて、巨大な川に掛かる幾つかの橋の内、先程の二人の近くの一つに赤点が有るのが見て取れた。

 そうして更に画面が切り替わり、今度はその赤点がカメラによってピックアップされた。


「あー上手いなぁ! 光源置いて視界確保しつつ橋の前面には地雷でガードと!」

「縮小があるから退路からの奇襲は警戒する必要無いし、橋は落としても後に影響は無いですからね。ソナーで外周に残ってる数は凡そ割れてるから引き際ギリギリも分かりやすい」

「装備は長弓と……見にくいですが魔法触媒の指輪もありますね。橋という一本道でトラップで妨害されつつ狙撃されるとか、自分だったら相手したくねぇー!」

「大分アーティファクトも回収してますし、なにより"風鎧"を確保してるのが大きいですね。これは相手の飛び道具を逸らしながら射撃に補正を掛けるアイテムなので、正に難攻不落といったところでしょうか」


 バトルロワイヤルでは三人四人による乱戦は平気で起こりうる。

 チーミングが頻繁するようになり、その判定を人間がAIに任せた結果、ある程度の共闘は乱戦の一模様であると判断されるケースが多発した。

 完全に平等な乱戦は生まれない。

 AIの学習と改良の果てに到達した真理に対し、VRゲームが発売してから変わったのは人々の認識の方であった。


 過剰な協調行為は駄目であるが、状況次第での必要最低限の協力は、人と人が面と向かい干渉するVR世界において認められる。


 それが常識として浸透したこの世界において、AIが失格を言い渡さなかった二人のプレイヤーの共闘は、その理由は、状況を俯瞰することで誰しもが読み取れた。


「エリア縮小が迫る中、中央に抜けるには橋上の門番を倒すしかない」

「それ以降も組むようだったら失格になるでしょうけど、まぁこのレート帯の実況試合なんでそれは無いと思いますね」

「まぁ何にせよ……」


 ……或いはAIの判定を知り尽くした人間が門番がいる状況を想定し、協力が容認されるまで餌場で遊んで時間を潰していただけかもしれないが。


 未だにチーミングという行為そのものを嫌う人間が、AIの判定を認めず小さな嫌悪感を表す中。


「「面白い展開になってきました!」」


 チャット欄も、実況席も、ゲームという遊びを見るような人間の大半は、ただどうなるのだろうという期待を胸に、その中継を楽しんでいた。

あくまで作品内の話だから現実でのチーミングはやめようね!

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