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貧乏貴族ノードの冒険譚  作者: 黒川彰一(zip少輔)
第二章 見習い竜騎士ノード

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60/63

36 終戦(中)

2020/12/25 挿し替え済み


文字数(空白・改行含む):2515字

文字数(空白・改行含まない):2265字


 魔石の刃が生み出した魔力の奔流が、炎へと姿を変えて蜘蛛たちに襲い掛かった。


「「「キシャアアアア!?」」」


 轟然と燃え上がる火球が、蜘蛛の群れの先頭集団に直撃し、数体をまとめて一瞬で焼き殺した。

 爆炎の被害はそれだけにとどまらない。周囲にいた蜘蛛たちにも炎は燃え広がり、絶命には至らないまでも、数多の蜘蛛が炎に巻かれて悲鳴をあげていた。

 蜘蛛たちは転げまわり、運よく火が消えた個体は助かるものの、そうでないものは苦しみながら焼け死んだ。

 周囲には赤い炎と黒煙とが蔓延していた。

 そして群れを指揮する筈の元帥蜘蛛もまた、その被害を受けていた。


「グシャアアアアア!?」


 半身に炎が纏わりつき、痛みに悲鳴を上げる。

 一体何が、元帥蜘蛛はそう考えるものの、痛みで思考が中断して答えを出せない。二十ある複眼で周囲の光景を見渡すも、同胞くもたちの燃え盛る炎と煙が見えるばかりだった。

 だからだろう。そのことに気が付くのが遅れたのは。


 ――いない!

 

 あの獲物ニンゲンが、何処にもいない!


 炎と煙に遮られた向こう側が、風に揺らいで僅かに見えたその瞬間。元帥蜘蛛の二十の瞳は、確かに先ほどまで居たはずのあの獲物ニンゲンの姿が、あるべき場所にいなかったのを、確かに捉えていた。


「グシャアアアアオ!!」


 探せ! あのニンゲンを探し出せ!


 炎に焼かれる痛みに思考を奪われながら、元帥蜘蛛は半ば本能でそう叫んだ。数多の同胞を手にかけ、女王の宮殿に踏み込んだあの下手人ニンゲンを何としても逃がしてはならないと、そう思って。


 そこまで考えて、はた、と気がついた。


 あの獲物は、一体どこへ行ったのか。

 森の奥? それとも逃げようとしていた獲物たちの住処へか?

 それとも別の場所……?

 


 「キシャアアア! キシャアアア!」


 その鳴き声は前方、周囲に立ち込める炎と煙の壁の向こうからだった。

 気をつけろ、とその同胞くもは叫んでいた。

 何だ、何に気をつけろというのか。元帥蜘蛛は要領を得ないその警告の鳴き声に、苛立ちを覚えつつ思考を巡らせる。

 火にか、煙にか、それとも……まさか!


 英明な知性を持つ、元帥蜘蛛は、すぐにそのことに思い至った。

 ――あの獲物ニンゲンは、逃げたのではなかったのか! あいつの狙いは……!


 元帥蜘蛛は獲物ノードの狙いについに気が付き、蜘蛛たちに指示を飛ばすべく、叫び声を上げようとした。


「グシャアアアア!!」

「そうは……させるか!」


 元帥蜘蛛が声を上げるのと、炎と煙の壁を飛び越えて、ノードが元帥蜘蛛の眼前に現れたのは、ほぼ同時だった。


§


(しめた! 手負いか!)


 蜘蛛の死体を踏み台にして、炎の壁を飛び越えると、計算通りそこには元帥蜘蛛の姿があった。半身が炎に包まれ、少なくない被害を与えているのが見て取れた。


 目くらましと、露払いが目的の魔剣の一撃だった。

 それが大将首にまで負傷を与えているとは、なんという幸運だろうか。


(これが最初で最後の機会チャンスだ……これで仕留める!)


「はああああああッ!!」


 炎の壁を飛び越えて空中に躍り出たノードは、落下しながら、剣を振りかぶった。

 落下の速度を加えた、強烈な一撃。


「グシャアアアア!?」


 その一撃は、奇襲に対応できなかった元帥蜘蛛の顔面、その半分へと叩き込まれた。

 蟲甲が砕け、赤く輝く複眼がいくつも切り裂かれ、潰れる。

 悲鳴を上げる元帥蜘蛛が、痛みにのけ反った隙を、ノードは見逃さず、一気呵成に攻め立てる。

 着地の反動を活かし、大地を踏みしめ、今度は逆袈裟の一撃。口蓋の触腕を切り飛ばす。もう一度大上段から切り落とし、次は横に凪いだ。

 縦に、横に、斜めに、時には体を回転させながら、強烈な一撃を次々と叩き込む。


(絶対に……逃がさん!)


 切る、斬る、ぶった斬る。

 動きを止めた瞬間が自分の死だと自覚して、体が動く間に出来るだけの負傷を与えようと、攻撃を止めない。

 だが、元帥蜘蛛も黙ってやられるだけではない。


「ギャアオオオオオ!」

「っ――うおっ!?」


 苦し紛れの一撃。単なる前肢の横凪の一撃が、暴風を引き連れながら、ノードの頭上を掠め通過した。掠っただけだというのに、一瞬首から上が消えたのではないかと錯覚するほどの強烈な一撃だった。


――まともに食らえば、一撃で終わる


 ノードがそう確信する威力が、元帥蜘蛛の攻撃には秘められていた。

 本能が恐怖心を呼び起こし、冷や水を浴びせられた心地がした。

 脳裏に、一度体勢を立て直すという考えがよぎる。


(いやダメだ、一歩も退くな!)


 だが、ノードは恐怖で後ずさりしたくなる己の心を叱咤した。

 ここで一気に押し切らなければ、待つのは死のみであると、そう思って。

 

「う、おおおおおおおお!!」

「グシャアアアア!!」


 ノードはさらにもう一歩、力強く踏み込んだ。

 勢いの乗った翠緑鋼の刃が、再度、元帥蜘蛛の身体に食い込む。


 あと一撃、あと一撃。

 ノードは全身に残る力を最後の一滴まで振り絞るようにして、攻撃を続けた。


 酸素が足りないと、全身の筋肉が悲鳴を上げた。

 脳が休めと、命令を下した。

 全身の節々が、動きに耐え切れず、痛みを訴えた。


 その全てを無視して、ノードは攻撃を続ける。


 そして、ついにその時は訪れた。


「ギ、ギイイイイイイ」


 元帥蜘蛛が、猛攻にたまらず、脚を折った。

 巨体が、ズシリ、と音を立てて地面に沈む。


(ここだ!)


 その千載一遇の機会チャンスを、ノードは決して見逃さなかった。

 

 元帥蜘蛛の前肢を踏み台にして、鎧を着ていると思わせない軽やかな動きで飛び上がり、元帥蜘蛛の背中に飛び乗る。


(夏にお前の仲間と戦ったからな……学習させてもらったよ)


 蜘蛛の心臓は、背中にある。

 その急所に向け、ノードは満身の力を注ぎ込み、翠緑鋼の刃を突き刺した。


緊迫したシーンは書きずらい、作者覚えた。

というわけで一応、最新話? です。

終戦(後)とエピローグを年内に投稿出来たらいいな……

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― 新着の感想 ―
[良い点] ああー、将軍とかの解体で実地で体の構造を覚えていたという事か。 砕け散った描写が無かったから3発目のイグニスに賭けるのかと思ったら自力で刈り取った!
[一言] 一話の文字数が極端に短い場合は、後日にでも前後の話と纏めてみては如何でしょうか。
[一言] いい最終回だった(え
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