後で悔いるから後悔と書くらしいよ
惚れ惚れするような全体的に真っ黒な刀。
全体的に真っ黒な
細かい部分まで黒とはいかなくとも藍色や濃い紫の徹底ぶりである。
何か………二つ名とこの刀の組み合わせは凶あk、いえ気のせいですね。
あの二つ名は認めてないんだからねっ!最近は殲滅してなっ…………無い、よ?うん。
まあそれは置いといて、エヴァーの家から帰還アーンド久しぶりに町に来ました!
エヴァーとルナは長期休暇中魔帝領に居るっていうし、イナンナは執事さんに《転移魔法》で好きな場所に送ってくれると言われたので獣王領に帰郷。クラウスは家の方で用事があるとか……で、
寮に帰っても一人だわ……寂しい……
そんなワケで、
刀が高すぎて装備系厳しかった(値段的に)ので珍しい素材だけ購入し、グランツさんに加工してもらおうと思った。という理由(長い)を付けて町に来ました。
宿は勿論《巨人の右足》だよ!
顔を出したらマリアンヌさんから熱い抱擁いただきました。むぎゅる。
グランツさんとネロさんに会いに行き素材を渡す。
能力と大まかなデザインは今と同じような感じでおなしゃーす!と色々丸投げしてギルドへ。
……首都のギルドも良いっちゃー良いけど、やっぱこの町のギルドが一番好きです!
「お久しぶりです!」
扉を開けてすぐ、ハンナさんと目が合った。
わー、ハンナさんったら目ん玉落ちるんじゃないかってくらい開いて
るぅえぶふえぁうるあぁああ!!!!?
ハンナさんの だいれくとあたっく!
うわああああ!熱烈な抱擁ぅう!!
おれは肉体的には十代ですが転生分ぷらすすると精神的には四十代であってうぬえああああ(ry
ハアハア……お、落ち着きました。おっちゃんにはトンでもない強烈さでした。
マリアンヌさんは、こう……オカン的な感じで流せたけど……うら若いお姉様(あれ?ハンナさん何歳?)の熱い抱擁は脳ミソ混乱したわ。ポーカーフェイスで耐えたよ!
くっそ、三人組居たのかよ、ニヤニヤしやがって…
「三年ぶりですねっ!お元気そうで良かった。」
「ハンナさんもお元気そうで良かったです。」
ギルドの顔触れに変化は無く、皆知り合いなのでさらっと挨拶をしクエストを探す。
「あ、オーリくん。よかったらこのクエスト受けてもらえない?」
そう言ってハンナさんが差し出してきたのは指定依頼の紙だ。
「指定?何か出ました?」
依頼の紙を覗き込むと、書かれていたのはケルベロスの討伐。
ケルベロスなんてA級魔物、マジか。
「え、出たの?」
「うん、出たの。町の冒険者じゃどうにもならなくて困ってたんだよね。」
ケルベロスはウルフの亜種で、ウルフの中からごく稀に産まれる。
三つの首を持ち、火を吐く魔物だ。
ウルフだと大きくても虎くらいのサイズなのにケルベロスになると象くらいのサイズになるとか、解せぬ。
「んー、コイツって三つ首落とさなきゃならんタイプでしたっけ。」
「ええ、一つ落としても暫くしたら再生しちゃう厄介なタイプよ。」
うわ、面倒。
縄張りに侵入しなきゃ危害は加えられないけど……このケルちゃんの縄張りが貴重薬草の生える泉だから早く退治したいと。
うぅむ……ハンナさんのお願いだしなぁ……
「んじゃ、これ受けます。」
「たっすかるわ〜!頑張って殲滅してね!」
ハンナさん、それ笑顔で言うセリフじゃないっす。
――――――――――
「そろそろかな」
もうケルベロスの縄張りに入ったから追い払いに来るんじゃないかね。
何て呑気に考えつつおニューの刀を鞘から抜いた。
森の奥から木を薙ぎ倒しながら近付いてくる何かに切っ先を向ける。
頭から突っ込んできたソレを横に飛び退いて躱しつつ、こちらを向いてる三つ首の一つとの間に氷の壁を出現させる。
氷壁はケルベロスの口から吐き出された炎を阻み、一瞬にして蒸発した。
「うん、来たのは良いけど特に何も考えてなかった。」
首落としても再生=短時間で討伐なんだが、象並の巨体にウルフ並の素早さって大変厳しい。
しかもこちらがあっさり防いだのを見て警戒しておる。
さすがに三つ首同時に斬れないし。
「『カマイタチ』!」
《風魔法》で作り出した風の刃をケルベロスは咆哮で掻き消した。
魔法でも三つ首同時に斬れないとか、ヤダねぇ。
書物のケルベロス退治は複数人で同時に首を落としたらしいけど、俺一人だし……。
首を落とす、で一つだけ案が思い浮かぶ。
神話か何かで首が再生する蛇を倒す話あったな。
アレは松明で傷口を焼き焦がしたんだっけか……?
この新しい刀は魔力を通しやすい、つまり魔法剣(いや、刀だから魔法刀?)として使えるんじゃ………?
《雷魔法》を刀に通し電熱で焼き焦がしながら首を斬れば再生しない!かな?
「よし、それで行こう。」
そう決めて刀を構える。
ただし一つ問題が………
刀に魔法通すってどうやんの?魔力通すのとは勝手が違くね?
刀に魔法攻撃するイメージで良いのか?
分かんないから格好良くドヤ顔決められねっす。
――――――――――
装備加工に数日かかるから暫くは町に滞在なんだよね。
ギルド内の酒場でネロさんにどうしたらグランツさんを落とせるか相談されてるなう。
てか未だに落とせてないんっすか。
「泉に薬草を採取しに行きたいんだが……ケルベロスが出たって本当か?」
違う町なのだろう冒険者がハンナさんに声をかけている。
「大丈夫です、ケルベロスなら先日通りすがりの冒険者が退治してくれましたから。」
「本当か!ケルベロスを退治するなんて……かなりの腕前の冒険者だな。」
いやー通りすがりの冒険者サン凄いわぁー(棒読み)
ネロさんこっち見ないで。
俺じゃないから。通りすがりの冒険者サンだから。
「所で泉に行って驚かないで下さい。
落雷で所々焼けてますから。」
「落雷?このところ天気が荒れたなんて話聞かないが……」
「いえ、人災です」
「え?」
「人災です」
いや、ちょっと失敗して雷落として火事なんてしてないよ。
………ちゃんと消火したからノーカンで………(ダメ?)




