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この世界で俺だけが【レベルアップ】を知っている(Web版)  作者: 坂木持丸
第9章 魔剣レベルイーター

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46話 魔剣レベルイーター


 サイクロプスが斬った魔物の死体から光が立ちのぼり、魔剣へと吸い込まれていく。

 その光景はまるで――。


「――【レベルアップ】?」


 思わず呟くと、サイクロプスが反応した。


「ほぅ、【レベルアップ】というのが、人間の天恵か?」


「……なに?」


「なるほど、レベルが上がるか……信じがたいが、それならば貴様の力にも、この魔剣の力にも納得がいく」


「魔剣の力?」


「くくく……我が天恵は【鍛冶剣魔(ブラッドスミス)】。材料とした生物の天恵の力を、武具に宿すことができる力だ。そこまで言えば……わかるであろう?」


「……っ! まさか、お前……」


 そこまで聞けば、さすがに察しがついた。

 サイクロプスの手にある魔剣がなにを材料に作られ、どんな力を持っているのかを……。


「この“魔剣レベルイーター”は、町1つ分の人間を材料にして作った、命を喰らう剣だ。ほんの気まぐれから作ってみたのだが……正解であった。この魔剣は斬れば斬るほど、どこまでも限界なく成長していく。いずれは世界最強の剣となるであろう」


 サイクロプスがにたりと笑うのが、兜越しでもわかった。

 たしかに、サイクロプスの魔剣は――強い。


 そして、この剣はこれからまだまだ強くなっていく。

 レベルアップする魔剣――いずれ世界最強に至る魔剣。


「…………ちっ」


 思わず、舌打ちが出る。

 癪ではあるが、認めなければならない。

 俺が持っている剣では、どれだけ強化したところでサイクロプスの鎧を貫けないし、サイクロプスの剣を防げない。


 かといって、今の俺には大魔法をぶっ放せるだけの魔力も残っていない。

 ミミスケ戦でも剣を2本失っていたから、手持ちの剣も残り1本だ。


『ふふ……もしかして、万策尽きたのかしら?』


 フィーコがにんまりと微笑むと。

 すいーっとサイクロプスの背後に移動した。


『それじゃあ、絶望パーティーの始まりよ!』


「……さあ、やっちゃってください、サイクロプスの旦那」


「お前ら……」


 分が悪いと思ったら、迷わず寝返る頼もしい同行者たちがそこにいた。



「さて、そろそろ貴様も――魔剣の糧となるがよい!」



 ごぅううう――ッ! と。

 サイクロプスが魔剣をめちゃくちゃに振り回す。


 周囲を破壊し尽くす剣圧の嵐。

 この魔剣による斬撃は、威力も範囲も桁違いだ。


 さらには型もなく、狙いもつけず、そして――速い。

 大振りであるにも関わらず、軌道がほとんど読めない。


「……ちっ」


「ぬははははッ! いつまで避けられるかな!」



「『――かーて! かーて! 魔剣のかーて!』」



「魔剣の糧コールやめろ」


 ぎりぎり見切って避けられないことはないが。

 とはいえ、こちらから決定打を与えられないとなると、ジリ貧であることには変わりない。


(となれば……)


 俺は剣撃の雨を避けながら、サイクロプスへと接近した。


「ぬ……!?」


 俺に狙いをつけようと、一瞬サイクロプスの動きが止まる。

 その隙に、サイクロプス股の間をくぐり抜け――。



「――“土掘ドミク”!」



「ぬ……ぉおおッ!?」


 土を掘る地属性の初級魔法で、サイクロプスの足元の地面を崩す。

 前のめりに体勢を崩したサイクロプスは、なかなか立ち上がれずじたばたともがきだす。


「どうした? 俺はここにいるぞ?」


「こんのぉ……ちょこざいなァ……ッ!」


 サイクロプスの大きな弱点の1つが俊敏性だ。

 ただでなくても巨体な上に、重鎧でがちがちに固めているのだ。


 思えば、戦闘が始まってからサイクロプスは一歩も動いていない。

 これだけレベルが高いサイクロプスがザコ魔物を大量に引き連れていたのも、自分の鈍足では逃げられると考えたからというのもあるだろう。


 体を起こすのは一苦労のはず。

 その間に、サイクロプスに通用する武器を手に入れればいい。

 というわけで。


「……ふへ?」


 俺はミミスケの頭をむんずとつかみ、盾にするように掲げた。


「な……なにをするのですか、人間!? ぼ、ボクを盾にするのですか……! な、なんて、卑劣な!」


『げ、外道……』


「お前らにだけは言われたくない」


 ミミスケでは盾にならないことはわかっている。

 もしも、サイクロプスの斬撃が当たれば、2人まとめて両断されるだけだろう。


「くくく……どうやら、逃げなかったようだな」


 サイクロプスがついに体を起こし、どっしりと俺たちのほうへ振り返る。


「だが、もうこれで終いだ――」


 そう言って、魔剣をゆっくりと振り上げる鋼鉄の巨人。

 その威容と真っ向から対峙する。


「さて、ミミスケ。このままじゃ、俺もお前も斬られるな」


「な、なにが目的なのですか! こんなことしても意味なんてないのです! や、やっぱり、人間は愚かなのです……!」


『おっろーか! おっろーか! やっぱり、おっろーか!』


「リズムに乗せるな」


 いちいち鬱陶しい。


「ところで、お前は俺を食いたいか?」


「ふへ?」


「どうなんだ、答えろ?」


「それは、もちろん……食べてやりたいのです」


「そうか、なら――」


 ごぅううう――ッ! と、サイクロプスの魔剣が振り下ろされる。

 その眼前で、俺は言った。



「――化けろ、ミミスケ」



 魔剣の刃が迫るが、今度は避けない。

 数多の命を喰らった、いずれ最強に至る魔剣。

 しかし――その刃が俺に届くことはなかった。


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