表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四季姫、始めました~召喚された世界で春を司るお仕事します~  作者: もちだもちこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/137

97、それは輝く星のような


 秋姫の手土産は、もちろん私の描いた絵……というか、一筆描きの漫画だ。鉛筆と消しゴムって、素晴らしいものなんだなぁと再実感しているところである。早く誰か作ってくれないかな。

 もちろん他にもお土産はある。

 春の塔近辺にしか咲かない花があるとか、地元?でたくさん摘んできたのだ。ふふん。


「姫さん、あいつも一緒でいいよな?」


「いいもなにも、秋姫様の身内なんでしょ? とりあえず連れていかないとだよね」


「……姫さんは甘いな」


「ダメですか?」


「いや、そのままでいい。その分、俺たちが守るから気にするな」


「うぐぅっ」


 不意打ちの甘やかしは、いくない。(心臓に)


 ゆったり走る馬車の横で、騎乗したまま会話してくれるレオさん。

 ちょっと着崩した騎士服とか、チラ見せする胸筋とか……色々思うところはある。だがしかし、心を平穏に保つよう深呼吸をしておこう。すぅ、はぁ、ほんと心臓に悪いわぁ。

 ちなみにアサギは、今もなおジャスターさんとジークリンドさん二人の間を行き来している。


「あのチビ、いつの間に爺エルフと仲良くなったんだ?」


「そ、そうだね。不思議だね」


 ほんと、いつの間に仲良くなったんだろうね? あははー。


 赤、黄色、茶色という秋色の絨毯が敷かれている道を静々と辿った私たちは、見慣れた『塔』に到着する。

 出てきた騎士は、ジャスターさんよりも細身の青年で、定例会を行なっているからしばらく待ってほしいとのことだった。


「定例会?」


「ここには百人を超える騎士がおります。筆頭以外の騎士たちが、秋姫様のご尊顔を拝見することができるのが定例会なのです」


 どこかうっとりとした表情の騎士を見て、交渉役のジャスターさんがドン引きしているのが分かる。

 うん、なんというか、狂信的に秋姫を崇拝しているように見えるよね。見えるだけだと信じたいよね。


「では、我らはここで待たせてもら……」


「よろしければ!! ぜひ!! 皆さまも定例会にご参加されては!?」


 こちらの言葉にカットインしてきた、細っこい青年のギラギラした目が怖い。恩寵『交渉』を持っているジャスターさんをおさえるとは、この青年なかなか侮れない。

 よろしければって言ってるけど、これ、私たちが参加すれば自分もついていけるからってやつだよね? 善意とかじゃない私利私欲の香りがぷんぷんするんですけど?


「はぁ……、せっかくなのでお受けしましょう。傭兵さんたちは野営になっちゃうかな」


「ここらへんは魔獣も出ないから、差し入れに酒でもやれば喜ぶと思う」


「レオさん、お願いできます?」


「おう、任せとけ」


 コソコソと小声でやり取りする私とレオさん。

 傭兵さんたちには、元傭兵団長であるレオさんをあてがうのが最適だ。

 でも……。


「……姫さん」


「あ、はい、何でしょう?」


「そんな顔するな。すぐ戻るから、ここで待ってろよ」


「…………ハイ」


 どんな顔をしていたのだろう。

 サラさんから生温かい視線を感じるけど、気にしないことにする。







 春の塔と違い、秋の塔周辺は紅葉でうめつくされている。

 定例会とやらがどこでやっているのかと思ったら、庭でやっているみたい。さすがに室内は狭いよね。人数が増えれば広くなるとはいっても、限界があるよね。


「キラ君からも聞いていたけど、秋姫様は人気があるんだね」


「たしかに秋姫様の美しさは有名ですが、春姫様の愛らしさも負けてないです」


「それは、サラさんの贔屓目だと思う」


 細っこい青年騎士に案内されたのは、姫の私と騎士四名とサラさん。

 おまけのピンク髪少年は、うまく『侵食』の恩寵を使って私たちと一緒にいる。まぁ、塔の敷地内は、害意がなければ関係者じゃなくても入れるから、たぶん怒られないでしょ。

 アサギはちゃっかりジークリンドさんの肩に乗ってて、エリマキみたいな状態になってる。なんだかもふもふ暑そうで申し訳ない。


「皆さま! ここが定例会の会場です!」


 枯葉の絨毯が広がる広場。その中心には円形のお立ち台?がある。

 その周りを取り囲むように詰めかけている騎士たち。彼らの騎士服は白が基調となっていて、見ていると眩しすぎて目がショボショボだ。

 この白の中で青い服の私たちは目立つかと思ったけど、秋姫の騎士たちはこちらを見向きもしない。


「秋姫様が参られます!」


 うおおおおおーっという野太い声と、「秋姫様ー!」「LOVE♡秋姫!!」などと、わけのわからん掛け声に居心地の悪さ感じる。

 案内してくれた青年も、その細い体のどこから出るのかと思うくらいの大声で、秋姫への愛を叫んでいた。


 まるで水着のような白い衣装に、フリルのついた体が透けて見える薄布を身にまとい、銀色の装身具をシャラシャラと響かせて登場したのは『秋姫』……なの……かな?


 ゆるくウェーブのかかったピンクがかった金色の髪は、日の光に当たってキラキラと輝いている。

 たゆんたゆんと揺れるその二つに、うちの騎士たちも釘づけだろうと見てみれば……あれ?


「レオさん、恩寵使ってるんですか?」


「ああ、ちょっと刺激が強いからな」


 ジャスターさんとジークリンドさんは平然としていて、キラ君はレオさんの背中に隠れて深呼吸していた。

 サラさんは「破廉恥な!」と顔をしかめて、近くにいたピンク少年の目を手で覆ってやっている。


「みんなーっ! げんきかなーっ!」


『げーんきーっ!!!!』


「秋姫のことーっ! すきなひとーっ!」


『はあああああああああいっ!!!!』


「秋姫もーっ! みんなのことだいすきーっ!」


『ウオオオオオアアアアアアアアーッ!!!!』




 ……どこのアイドルだよ。



お読みいただき、ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ