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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
機体をコントロールするのにスティックは握りしめるな。生卵をそっと包み込むように。
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戦力移動とその遅延

一方の自衛隊側の空襲後の動きは、やや混乱している。

本州に対する北朝鮮からの弾道ミサイル攻撃は止まったが、巡航ミサイルの攻撃は散発的に続いており、ロシアも威嚇を本格的に開始していた。


これに対応するため、特に航空自衛隊は、やや過剰な戦力を対応させていた。

日本には北朝鮮側の思惑は相変わらず伝わってはいなかったから、やむを得ない部分もあったが。

このため、那覇基地が大損害を受けたという事情はあるものの、戦闘飛行隊の南西方面への増援が遅れている。


日本海からは、イージス艦「あしがら」他、護衛の「たかなみ」型護衛艦2隻が、BMD対処任務を解かれ沖縄に向かっている。

同じく、米軍も太平洋側に配置していたBMD任務のイージス艦の一部を沖縄に向けた。


航空自衛隊は、2日の夜には三沢の第3航空団と、新田原の第5航空団の配置を入れ替え、虎の子のF35A装備の第3航空団を新田原に前進させた。

千歳の第2航空団からは、201飛行隊が築城に移動。百里の第7航空団は、オーストラリアに退避していたが、やはり築城に移動しつつある。


第7航空団の移動は、リスキーと言えた。築城にF2の稼働機の殆どが集結したからだ。

もし弾道弾や、巡航ミサイル攻撃で地上撃破されるようなことがあれば、航空自衛隊の対艦攻撃力は、大幅に低下することになるだろう。

耐爆シェルターが1個飛行隊分完備された三沢基地に対し、新田原、築城の両基地はようやく去年になって、分散パッドが整備されただけだ。だからF35の展開にも同様のリスクが当てはまった。


分散退避していた、航空自衛隊機が集結したところを狙っての、弾道・巡航ミサイルによるダブルタップ攻撃も、当然ながら想定される。

だが、開戦と同時に先島に向けて、全速で敵上陸船団が迫っている状況だ。

危険は承知の上で、反撃することを統合司令部は選択したのだった。


応急処置が進んだ那覇には、第9航空団が戻りつつあったものの、既にその保有機の3割を失っていた。整備・修理中の機体を含めるなら、現時点では半減に近い。

そのため、基地機能の復旧具合を見つつ、増援を投入することになっていた。

さらなる弾道ミサイル攻撃も警戒して、小松の第6航空団から306飛行隊のF15改のみが那覇基地に投入される。


F35A装備の301、302、303各飛行隊のF35Aは、築城基地および新田原基地から空中給油を受けつつ沖縄上空に進出することになった。(小松で機種改編中の303飛行隊もまた、オーストラリアに退避していた)

しかもKC46の欠陥のため、F35Aに対応する給油機がKC767だけという状況で数が足りず、米軍のKC135の支援を依頼する有様だ。


海上輸送部隊の護衛グループは、本州まで輸送船団を送り届けたあと、対艦弾道ミサイル攻撃を警戒して海上を高速で遊弋していたが、いまや再集結しつあった。

まずは撃沈された「ひゅうが」の姉妹艦「いせ」を中核とするグループを形成すると、沖縄から退避してくる「ひゅうが」を喪った日米BMD任務部隊を援護するべく、沖縄に向かう。


BMDグループは、撃ち尽くしたミサイルの補給を終えてからでないと、戦列に復帰できない。

弾道弾攻撃が予想される中の港での補給には懸念があったが、やらないわけにはいかなかった。

このため、佐世保でのBMDグループの補給を援護するために、「あしがら」は佐世保沖に向かっている。


反撃態勢の構築には、どうしても相手に先制される上に、その後の敵の意図するところを推定するにも時間がかかる。それは分かっているが、先島への上陸を阻止出来ないでいる状況に、自衛隊の高級幹部は苛立っていた。


頼みの綱だった先島周辺の海上自衛隊の潜水艦は、どうやら沈められてしまい、先島諸島は敵潜水艦の包囲下にあると判断されている。

こうなっては、先島に対する増援と補給を、海上輸送で行うことは簡単ではない。

つまり、先島諸島は孤立一歩手前だったのだ。


自衛隊側は、那覇基地の復旧作業の進捗具合には安堵していたが、中国の反復攻撃が行われないことを不可解に思っていた。

彼らは、中国側は中国側で、大損害と戦果の過大評価によって、沖縄本島への反復攻撃を無理に行わない判断を下していたことを知る由も無かった。


中国側は、断片的な視覚情報しか得られていないにもかかわらず、ロケット軍、爆撃隊の攻撃で、那覇と嘉手納が48時間は使用不可能になったと、かなり楽観的に判断していた。

わずか8時間で那覇A滑走路が、嘉手納共々仮復旧しているなど考えもしなかったのだ。

(これは南西方面統合司令官の有坂陸将の好判断の結果でもあった。

戦前の計画では、那覇基地は弾道弾と巡航ミサイル攻撃で、早々に壊滅すると想定されていた。

その上で、生き残った整備員や基地要員は、九州の基地へ退避させるのが既定方針だった。

だが、有坂司令は那覇基地からの「被害が想定を下回ったため、半日で復旧可能」という強気の報告を容れて、基地要員を那覇に留めていた。

この判断のため、那覇基地は8時間で基地機能を復旧出来ていた。

もし、既定方針通りに人員を九州に退避させていたら、那覇基地の復旧が間に合ないという結果になっていただろう。)


よって彼らは、翌日の沖縄本島への攻撃はSEAD任務に留めることにしていた。

その構成は対レーダーミサイル装備のJ16DとJ16を20機、護衛のJ11が30機だ。

機数が少ないが、可能であれば第2波の攻撃も行う予定だった。

残りの250機の第4世代機は、船団護衛のJ11B、2個旅団約50機を除き、全て先島諸島への爆撃に投入される予定だった。


2025年4月3日 0:00 築城基地


中国の攻撃が開始されてから20時間が経過し、日付が変わった。

オーストラリアから築城に移動してきていた、303飛行隊のF35Aが4機、深夜にアフターバーナーによる光の尾を引いて、それぞれ異なる方向へ離陸していった。

任務は偵察。自衛隊の反撃開始だった。


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