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かつて白ブタと呼ばれていたクラスメイトが何年か見ない間に白雪姫とか呼ばれて雑誌のグラビアを飾っていた  作者: 竜山三郎丸
白雪姫と呼ばれた幼馴染

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ずるいよね

◇◇◇


 結果、公開収録は大成功と言える反響だった。


 人気タレント濱屋らんまさかの初スキャンダルがまさかの横恋慕?とSNS界隈では早速火がついている。しかもお相手は話題のシンデレラガール白田桐香の想い人であり、そのマネージャー……まぁ俺なのだけれど。以下SNSから一部抜粋。


『あああああ、俺のはまにゃんがぁぁぁ』

『濱屋らんと白田桐香に惚れられるって一体どんな男だよ』

『桐香ちゃん普段より慌てててかわいい』

『どっちも好きすぎてどっちを応援すればいいのか辛い』


 今までは白田の名前で検索など行わなかったが、マネージャーとして仕事をする上で、どんな風に言われているのかを知るのは業務として必要なので今は積極的にエゴサーチを行い、必要であれば良い感想とかは本人にも伝える。今まで伊吹さん達がやってくれていたことだ。


 全てに目を通している訳ではないけど、八割以上は好意的な意見や感想だ。正直な話、白田が誉められるのは嬉しい。すごく嬉しい。


 八割以上は好意的なものだが、逆に言えば一割ちょっとは否定的な意見もある。

『ぶりっ子』

『絶対枕。ごり押しが過ぎる』

『貧乳』

『ブサイク。整形するならもっと上手くやれ』


 幾ら何でも白田に対してブサイクはちょっと無理があるんじゃないのかなぁと思う。まぁ人の好みは十人十色、(たで)食う虫も好き好きと言うからその逆もまた(しか)りか。


「あの子大手の事務所なんだけど、恋愛方面結構縛りキツいのよね」

「あ、そーなんすか」

「でも向こうが一方的に言ってるだけだから雨野くんに何かある訳じゃないからね」


 帰りの車で沢入さんはそう言った。白田は殆ど口を開かずにずっと窓の外を眺めていた。


◇◇◇


「なぁ、白田。何か怒ってる?」


「ううん、怒ってないよ。不安なだけ」


 帰り道、いつもより口数少ない白田に問うと予期せぬ答えがかえってきた。だが黙って一人で不安になられるより遥かに良い。


「隠さないで教えてくれて助かる。不安って濱屋さんのことか?あんなのどう考えても嘘だろ。ある程度以上計算でやってると思うぞ。三角関係っぽくして話題になればって感じで」


「そんなのわかんないじゃん。じゃあもし本気だったら五月くんはどうするの?」


 沢入さんに最寄り駅まで送ってもらった後、少し遠回りして公園に立ち寄る。


 何となくベンチでなく隣り合ってブランコに座る。キィと古い金属の擦れる音がする。


「んー、別にどうもしない……って言うか、普通に断るだけなんだけど」

 白田は自信なさげな表情のまま横目で俺を見る。

「……あんなにかわいい子に好かれても?顔も仕草もすっごくかわいかったよ?」


 ブランコを漕ぐ雰囲気でも無いので、ゆらゆらと軽く揺れながらのやり取り。丁度時間は今までのバイト上がりの時間に近い。


「まぁね。それでも別にどうもしない」


 俺の答えが不服だったようで、白田はブランコを降りると俺の前に来てブランコのチェーンを掴む。


 そして、顔を俺に近付ける。

「こんな距離であんな事言われて、それでもどうもしないの?」


 自信たっぷりと言った感じだった濱屋らんと違って、白田は今にも泣きそうだ。吐く息がかかるような距離。少しブランコが揺れればもう触れてしまいそうな距離。


「重ねて言うけどどうもしない。……言葉で信じてもらえないとなると、どうしたものか」

 

「あっ、違うの。ごめんね。五月くんが悪いとか信じられないとかじゃなくて全部わたしのせいだから。もっとわたしが――」


 白田の言葉が止まる。

 俺がブランコのチェーンを握る白田の背中に手を回したからだ。我ながら自分らしくない行動だと思う。一応言い訳をすると別に力強く抱きしめるとかでなく、軽く両手で身体の周りを覆う程度のもの。


「……っさささ五月くん?」

「いや、だってさ。白田のせいだぞ」

「う……うん、うんうん。わたしが悪いんだけど……、何で?って、別にいいんだけど……」


「非常に言い辛いんだけどさ。……一応俺も我慢してたりするわけですよ。相手が白田さんの場合は」

 自分で言いながらみるみる身体の温度が上がっていくのがわかる。


 鎖の軋む音がしたかと思うと、白田の手も俺の背に回る。

「……本当?」


 改めて聞かれるとだいぶ恥ずかしい。

「ウソデスヨ」

「ふふ、その言い方は嘘じゃないやつだ。そっか。五月くんも我慢してるんだ」


 嬉しそうに白田は笑う。

「いや、待て。その言い方は何か語弊がある」

「わたしも我慢してるんだよ?」


 白田が俺の背に回す腕に少し力が入る。白田の胸と俺の身体が触れる。心臓が忙しそうに働く音が伝う。俺の心臓か、白田の心臓か。たぶん両方。


 今更かもしれないけれど、俺と白田は付き合ってはいない。だから当然手も繋がないしそれ以上もしない。面倒くさい話に聞こえるかもしれないけど、白田から向けられる好意に簡単に応えられる程俺は自分自身を許せていないから。白田に言わせるとキープされている状態との事だが全く以て人聞きの悪い話だ。


 あと一年少し、高校卒業と共に満了する白田の芸能生活を終えたら――。


「五月くん知ってる?」

「ん?」

 頬の横で、耳のすぐ近くで白田の囁き声が聞こえる

 

「マンションとか不動産を取り置いてもらうときって手付け金って言うのを払うんだって」


 唐突な話題転換に多少困惑する。白田が実際どの位稼いでいるのかはわからないけど、買えても不思議ではないだろう。

「へぇ。不動産買うの?」

「ううん。わたしの話。だからわたしも払って貰おうかなって」

 そう言ってもぞりと顔を動かしてくる。察しの悪い俺がようやく理解したのは白田の顔が目の前に来たときだった。


「……ふふ、ごめんね?ずるいよね」


 顔は近づき、そして触れる。


 外はもうだいぶ寒いはずなのに、不思議と全く寒くはなかった。






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