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チート魔術で運命をねじ伏せる  作者: 月夜 涙(るい)
第六章:ソージが呼ばれた意味
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エピローグ:真実を知るために

 目を開く。

 すると講演会で使ったホールの中央にいた。


 シリルやクーナ、アンネたちが緑の鬼としか表現できない魔物たちと戦っていた。

 シリルは宙を舞いながら、獅子奮迅の働きをしており、劣勢な者がいればサポートに入り死傷者を出さないようにしていた。

 そして、クーナとアンネは背中合わせになり、お互いの死角を潰しながら戦っている。


「邪魔しないでください! 早く、ソージくんを探しにいかないといけないんです!」

「戦っても戦っても、キリがないわ……魔物たちが消えていく」


 彼女の言う通り、鬼の魔物たちがすべて青い粒子になって消えた。

 もしかしたら、あの白い部屋にいた連中によって作られていた魔物かもしれない。


「あっ、ほんとです。あれっ!? ソージくんが帰ってきました!」


 クーナが走り寄ってくる。

 それもキツネ尻尾をたなびかせて全力で。


「ソージくん!」


 クーナが飛び込んできた。

 その突進を受け止め……きれずに尻餅をついてしまった。

 いつもなら大丈夫だが疲れ切っているらしい。


「ソージくん、いきなり魔方陣が現れたと思って消えて。父様に聞いても、死にはしてない。連れ去られただけだってことしか言ってくれなくて」


 よほど、俺のことを心配してくれたらしい。

 涙声で胸板に顔を擦り付けてくる。


「クーナ、抜け駆けはずるいわ」


 アンネもやってきた。

 俺と、俺にしがみつくクーナを見て苦笑している。


「二人とも、心配かけたな」

「まったくですよ!」

「ソージが悪くないことはわかっているわ。でも何があったかを説明はしてほしいわね」

「ああ、ちゃんとあとで話すさ」


 白い部屋に飛ばされ、天使どもと戦い、謎の存在と話をした。

 そして、俺を救いに来たユーリ先輩が現れ、最後には光になって消えていった。


 あの人はずっと、あくまで自分のために動いており、味方でも敵でもない。俺たちを利用しているだけと言った。

 その言葉を疑ってはいない。事実、そういう行動を続けていた。

 だけど、どうしても今回、俺を助けにきたのが自分の目的だけだとは思えなかった。

 彼女が最後に見せた表情はあまりにも感情的すぎて、俺の胸をえぐった。


 彼女の本心を聞きたい。

 だが、それが叶うことはないだろう。ユーリ先輩は消えてしまったのだから。

 足音が聞こえて、そちらを向くとシリルがいた。

 激闘の後なのに生き一つ切らしていない。


「やっぱり、生き残ったか」

「あなたは知っていたんですか?」


 あえて、何を知っているかを明確に言わなかった。

 彼ならその意図を悟ってくれるから。


「ほんの少しだけだな。あれとは付き合いが長い、正確に言うとあれを作った奴からの付き合いだ」


 あれを作った奴というのは、ユーリ先輩が本体ほんとうのあたしと言った存在のことだろう。


「どうして、教えてくれなかった?」

「前にも言わなかったか。そういう制限がある。教えたところで何ができたわけじゃない」


 また、それか。

 歯がゆい。

 まるで、舞台の上にすら立ててないように思えてしまう。

 俺は何かに巻き込まれており、おそらく重要な役割を果たしている。

 それなのに蚊帳の外に置かれている不快感。


「ソージ、今回のことで君が気に病むことはない。むしろ、君はよくやった。俺やあいつの期待以上にな。……何が起きているかを本当に知りたいなら。あいつに会うといい。今のあいつならソージに説明ができる」

「ユーリ先輩が連中を倒したからですか?」

「そうだな。おかげでいくつかの制限がなくなった。……だが、覚悟が必要だ。聞いたら戻れなくなる」

「聞かなくても、こうやって巻き込まれています。なら、行くしかない。せめて自分の意思ですべてを理解して、道を選ぶ。誰かの駒なんてまっぴらです」


 どうしても夢想してしまう。

 ユーリ先輩は、許されない介入をして罰則を受けた。

 もし、俺がすべてを知っていれば別の結末を用意できたのではないかと?


 そんな力があると考えるのはうぬぼれかもしれない。

 それでも、せめてあがきたい。


「わかった。近いうちに迎えに来よう。あいつは変わり者でひねくれてる。住んでいる場所までな。普通にはたどり着けない」


 シリルが背を向けた。

 去り際にクーナを頼むと言って。


 ◇


 祭りは魔物の襲撃によって中止になった。

 シリルのおかげで死傷者や重傷者は出ていない。


 俺の講演も無事終わったものとみなされている。

 何人かの研究者は、きっちり吸収すべきことは吸収し、俺のことを高く評価してくれたようだ。

 山ほど研究所や大学からのスカウトの依頼が来ていたが、全部断った。

 その道はその道で楽しいのだろうし危険もなく収入も安定するだろう。

 だけど、俺は別の道を進むと決めている。


「ソージくん。置いてけぼりはいやですよ」

「ソージが首を突っ込むなら、私たちも当然首を突っ込むわ」


 あの襲撃の影響で一週間ほど騎士学園が休校になっている。

 その期間を利用してシリルの紹介でユーリ先輩の本体ほんとうのあたしとやらに会いに行く。


 そこで、さまざまな真実を知ることになるだろう。

 そして、俺がこの世界に呼ばれた意味を知る。

 ずっと、見て見ぬふりをしていた。【破滅】を止めるために呼ばれたと知っていたはずなのに。


「馬車が来ましたよ。ソージくん」

「ああ、行こうか」


 シリルが手配した馬車が来て、俺たちはそれに乗り込む。

 さあ、行こうか。

 真実を知り、そして俺たちがどう進むのかを決めるために。

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