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第56話 燃える鬼は媒体を作る

 デイルが引き連れてきた人喰い鬼を倒していきながら、俺はホッと胸を撫で下ろした。

 シュヴァリエさんとビアンカさんが待機していた小屋から、ビアンカさんとラルヴァが飛び出してきたからだ。


「よかった。ビアンカ、ちゃんと生きてたよ!」


「ええ、本当によかったわ」


 俺と同じように人喰い鬼達と戦いながら、フロラとウィンディーもその表情を明るくした。


 ラルヴァと前に話した時、あいつは俺にだけこっそりとビアンカさんが人間であることを打ち明けてくれた。将来的にビアンカさんを人間として俺達の村で住まわせてほしい、ということも。


 シュヴァリエさんがデイルにやられて気絶した時、ラルヴァが誰よりも早くビアンカさんの元に駆け付けていった。それはきっと、彼女の命を、人間として生きる未来を潰さないためだろう。


 とはいえ、ウィンディーが巻き起こした風にデイルの身体を煽らせ、俺とフロラで挟み込んで連続攻撃を打ち込む作戦。

 これは結果的に見れば失敗といっていいだろう。


 そのせいでデイルの落下地点を見誤り、シュヴァリエさんとビアンカさんを危険に曝してしまったのだから。

 それでも俺達がすぐに彼女達の元へ向かえなかったのは、他の人喰い鬼達に足止めを食らわされたからだ。


 だが、今は違う。俺達だけではなく、ドラコス、オグル、オグレスの健闘もあって、人喰い鬼の数は確実に減少してきている。


「ドラコス、オグル、オグレス! そのままそいつらの相手を頼む! フロラ、ウィンディー、二人は俺について来て! ビアンカさんとラルヴァに加勢しよう!」


「うむ、妾に敬語を使わんのは許さんが、任せておけ!」


「頼んだぞー! おれもちゃんと殺すぜー!」


「が、頑張って!」


 俺達三人からは少し離れた場所で人喰い鬼を倒しているドラコス、オグル、オグレスの三人が俺の指示を快諾してくれた。一人だけ怒ったヒトがいたけど、俺は戦闘中で必死だし敬語だの何だのに気を取られている場合じゃないんだから、この戦いが終わったら何とかして許してもらおう。

 勿論、普段なら歳上への敬意は忘れないけど。


 一方のフロラとウィンディーは俺の指示に無言で頷くと、デイルの方へと走る俺の後についてきてくれる。


 視界の隅で、ドラコスがリッターさんに何かを話し、それを聞いたリッターさんが走ってシュヴァリエさんの元へ駆け寄っていくのが見えた。

 おそらくドラコスは『ここは自分達が引き受けるから、シュヴァリエさんの介抱をしてやれ』とでも言ったのだろう。


 ドラコス、たまには優しいことするじゃないか。

 ここ屋外だし、いい加減に本来の巨体に戻った方が人喰い鬼を討伐する効率も上がると思うけどな。

 まあ、そこまでは口出ししない。突然の指示にも文句一つ言わずに従ってくれたんだ、感謝しないとな。


「ビアンカさん! ラルヴァ! 俺達も加勢する!」


 デイルの背中側に着いてすぐ、俺がビアンカさんとラルヴァに告げると、


「助かる。だが甘く見るなよ。足手まといになるようであれば、速攻でこの戦域から引き剥がす」


「足を引っ張るつもりはないよ!」


 言ってから、フロラが俺に向かってニシシッと歯を見せて笑う。

 それに頷いてから、俺は槍を構え直してデイルの懐へと飛び込んでいった。


 気が付くと、小屋の外で気を失って倒れていたシュヴァリエさんはリッターさんに抱かれたまま別の小屋に連れていかれていた。

 ヒルス村長が手招きをしていたから、大人達が待機している小屋でシュヴァリエさんを介抱するつもりなのだろう。


 とにかく今はデイルの討伐に集中だ。ここで倒す。デイルも他の人喰い鬼も__!


 槍に火炎を纏わせ、デイルの身体を傷付けつつ焼いていく。


「ウガ!! ヴヴヴ!!」


 槍による直接攻撃と炎による外側からの炎症攻撃。このダブル攻撃を受けたデイルは、赤い炎に包まれた瞬間に手足を振り乱し、肌を鋭く長い爪でかきむしって暴れ始めた。


「はあっ!」


 暴れるデイルの背後に素早く回り込み、ウィンディーが右腕を降りきる。その動作によって風魔法が発動したため、俺の魔法の火力も上昇。


 フロラは、今俺の火魔法が消えるのは痛手だと気を遣ってくれたのだろう。弓にセットした矢に水魔法を纏わせることなく、そのまま矢を射ってくれている。


 グサッ、グサッ、グサッ、と三連発でデイルの血色の悪い肌__背中や肩のあたりに矢が突き刺さり、そこから赤黒い血が流れる。火に包まれている上に弓矢の連続射撃を食らったデイルは、勿論痛そうな呻き声をあげた。


 俺達がデイルの身体にダメージを与える度に、デイルは叫び声にも似た呻き声をあげながら、グルグルと回ったりして暴れている。


 フロラの気遣いを無駄にしないためにも、デイルに逃亡の隙を与えないためにも、俺はさらに槍を振るってデイルを攻撃していった。

 それに合わせるように、ウィンディーもさらに風魔法を強くしてくれる。


「ウグッ! クソッ……忌々しいニンゲンどもがアアア!!」


 俺の炎魔法による火炎に包まれた状態になっているデイルは、血管の浮き出た細くて弱々しい両腕を必死に振るい、何とかして消火をしようとしている。

 消火のため、デイルが行っているのは腕を振るうことだけではない。

 前方にはラルヴァとビアンカさん、後方には俺とフロラとウィンディー。合計五人に挟み撃ちにされることの防止も兼ねているのだろう。


 俺達の間を縫って懸命に足を動かし、走る走る走る。


「おい、お前ら! ニンゲンを潰せ!」


 ドラコス達が相手をしてくれている他の人喰い鬼達に向かって声を張り上げ、デイルは命令を下す。

 他の人喰い鬼達の方に視線を移して初めて気付いたのだが、ドラコスも元の巨体に戻っていた。その巨大な足で人喰い鬼達を踏み潰していったのだろう、人喰い鬼の数は見違えるほど激減していた。

 それでも、まだ彼らが完全に全滅したわけではない。親玉であるデイルの命令で、人喰い鬼達が一斉に俺達の方へ駆けてくる。


「あー! 逃げるなよー!」


「と、止めなきゃ!」


 すかさずオグルとオグレスが後を追いかけ、何とか人喰い鬼達を引き留めようとしてくれた。


「何にも出来んただのガキは、黙って()()()()()()()()


 デイルが地を蹴って両腕を勢いよく振り切った瞬間、オグルとオグレスが血塊へと変貌した。

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