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第25話 久しぶりの朝

 俺が村に帰ってから、おそらく二日くらいが経過した。

 昨日目を覚ました俺は、フロラから全てを聞いた。

 町から来てくれた騎士団の二人が俺を治療してくれたらしく、その際の麻酔によって俺は少しだけ眠っていたみたいだ。


 そしてさらに翌朝。俺が目を覚ましベッドから身を起こしていると、


「おはよう、レノン」


 コンコンコン、と軽快なノック音がして、フロラがひょこっと顔を覗かせた。


「おはよう、フロラ」


 俺も彼女に向かって微笑みかけ、朝の挨拶をする。


 フロラは俺のベッドの方まで歩いてきて、


「怪我の方は大丈夫?」


「ああ、うん。まだちょっと痛いけど大分マシになったよ」


 俺は、包帯が巻かれた頭に手を当てて言った。


 反射的に頭を触ってしまったが、まだ完全に傷が塞がっていないのかものすごくズキンとした。でも大したことはない。


「そっか。良かった〜」


「ごめんな、フロラに助けてもらわないと帰れなくて」


 心の底からホッとした様子のフロラに、俺は謝罪する。


「本当だよ、もう。これでもあたし、結構怖かったんだからね」


 フロラは腰に手をやって、ぷっくりと頬を膨らませた。


「だ、だよな……」


 フロラの声が聞こえた瞬間、安心したのか急に体の力が抜けたんだよな。

 勿論、驚きが一番最初だったけど、その後で『ああ、やっと村に帰れるんだ』って思ったから。


「でも、本当にありがとうな、助けに来てくれて」


「当たり前じゃない。あたしを誰だと思ってるの?」


「えっと……フロラはフロラだろ?」


 俺が戸惑いつつも聞き返すと、フロラは足をドンと鳴らして怒った。


「違うよ! もう! レノンの鈍感!」


「ご、ごめん……」


「あたしはレノンの彼女なんだよ? 彼氏を助けに行かないなんてあり得ないでしょ?」


「フロラ……!」


 フロラの言葉に、俺の視界が涙で歪む。

 感極まったせいか、涙が流れてきてしまったみたいだ。


「えっ!? ちょ、ちょっと! 何で泣いてるの!? あたし、別にレノンを泣かせるつもりじゃ……」


 フロラは怒った表情から、急に心配げにオロオロとし始めた。


「うん、分かってる。ごめん。でも嬉しくてさ」


「レノン……」


 フロラが安心したように微笑んだ時だった。


「レノンちゃぁぁん!」


「レノンちゃぁぁん!」


「ちゃぁぁん!」


 あっ、この声は___。


「あっ、おばあちゃん達だ!」


 フロラが嬉しそうに言い、弾かれたようにドアの方を振り返る。


 ていうか、勝手に人の部屋に入ってこないでくださいよ……。

 俺はそう抗議しようと口を開きかけたが、それは叶わず。


 おばあちゃん達はドタドタと俺のベッドの側までやってくると、口々に俺に質問してきたのだ。


「レノンちゃん、大丈夫?」


「鬼達に捕まってたんでしょ?」


「でしょ?」


 マルコさん、センコさん、ツブコさんが口々に尋ねてくる。


「そ、そうなんです。そこまでは作戦の内だったんですけど、そこからちょっと失敗しちゃって」


「偉いわよぉー! ちゃんと作戦を立てて皆を取り戻してくれたんだもの!」


 マルコさんはパチンと両手を合わせて感激したように言った。


「レノンちゃんは私達の英雄よ!」


「よ!」


 センコさんとツブコさんも、必要以上に俺を上げてくれる。


「あ、ありがとうございます……」


 何か、いつもおちゃらけているおばあちゃん達が真面目なこと言ってると調子が狂うな。


「本当にありがとうね、女の子達を取り戻してくれて」


 マルコさんがふんわりと笑いながらお礼を言ってくれる。


「もう怪我は大丈夫なの?」


「なの?」


 続いて俺の怪我を心配してくれたのは、センコさんとツブコさんだ。


「あっ、はい。大分マシになりましたよ」


「そうなのー! 良かったわぁ!」


「本当よ! ねぇ!」


「ねぇ!」


 珍しくそれっぽい会話がセンコさんとツブコさんの間で成されてる!


 俺が感動していると、いきなりおばあちゃん達が抱き付いてきた。


 突然のことに受け身も取れず、俺は後ろに反り返る感じになってしまう。


「あ、あの……急に抱き付いてこられると___」


 嬉しく思いながらも、一気に三人が抱き付いてくるのは流石に重い。


 そう思っておばあちゃん達の方を見ると、彼女達は瞳から大量の涙を流していた。


「おばあちゃん……」


 彼女達が心の底から俺を心配してくれて、そして俺の無事に安堵してくれたかが痛いくらいに伝わってきた。


「本当に良かった、本当に……」


「よく生きてたわね、レノンくん」


「レノンくん」


 たっぷり俺を抱擁してくれた後、おばあちゃん達は自分から体を離してくれた。


「失礼します」


 すると突然ドアの方から声がした。


 俺がドアの方を見ると、そこには赤髪の男性と紫髪の女性が立っていた。どちらも鎧を身に纏っているため、一目で騎士団の人達だと分かった。


 確か、フロラやウィンディーと一緒に俺を助けに来てくれた人達だよな。あまりよく覚えてないけど……。


「あっ、私達はお邪魔だったわね」


「じゃあレノンちゃん、お大事にね」


「お大事にね」


「ありがとうございます!」


 おばあちゃん達は騎士の二人を見ると、大事な話があることを瞬時に察してくれたのか、すぐに俺の部屋を後にした。


「すまない、ご淑女方を追い出す形になってしまったね」


 赤髪の騎士___リッターさんが申し訳なさそうにしながら、俺のベッドへと歩いてくる。


「おばあちゃん達も気にしてないと思いますし、大丈夫ですよ」


「あとでお礼を言っておかないと」


 そう言いつつ、リッターさんは何枚もの紙束を取り出した。


「それは……?」


「鬼達のことについて調べた調査資料だよ。それから人喰い鬼のことも調べてきた」


 リッターさんは、何故かフロラに資料のうちの何枚かを手渡した。


 一体どういうことなのか、俺が理解できないでいると、


「あたしがリッターさんに頼んでたの。あの眼鏡鬼は『人喰い鬼は絶滅した』って言ってたけど、本当にそうなのか怪しかったから」


 眼鏡鬼……ラルヴァのことか。あいつ、フロラにそんなこと言ってたんだな。


「ていうか、人喰い鬼って?」


 ラルヴァ本人が『人喰い鬼は絶滅した』って言ってたんだったら、あいつらは人喰い鬼じゃないってことだよな。

 あいつらの他にも鬼が存在していたのか?


「お父様が出発前に言ってくれたの。『人喰い鬼に気を付けろ』って。でもあの鬼達に聞いてもそんな答えしか返ってこなくて」


 フロラが俺に説明してくれ、リッターさんがそれに続く。


「昔はよくそんな噂を耳にしていたよ。何故か町じゃなくて村の方面ばかりに現れて、人の血肉を食って生きている鬼がいるってね」

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