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第18話 監禁

「ついてこい!!」


 俺はラルヴァに胸ぐらを掴まれたまま、どこかに連れていかれる。


「あ、あのっ、ラルヴァさん!」


 ビアンカさんが俺の後ろから制止の声をあげてくれているが、ラルヴァさんは聞く耳も持たない。


「ラルヴァさん! レノンさんはまだ完治していないのです! 無理をして悪化してしまうと大変です! お願いしま______」


「うるさい!!」


 ラルヴァの怒号に、ビアンカさんの肩がビクッと小刻みに震える。

 今にも泣き出してしまいそうな表情で、水色の瞳を揺らすビアンカさん。


 俺はそんな彼女を首だけで振り返って見ながら、ものすごく申し訳ない気持ちになった。


 彼女は俺の身の回りの世話を任されただけであって、何も俺を守る義務などない。


 ビアンカさん自身は『お世話係としてその対象を守るのも仕事のうち』だと言ってくれたが、本来ならそんなことをする必要は全くないのだ。


「ご、ごめんなさい、ビアンカさん。私が悪いんです。だから、もう私のことを庇ってもらわなくて大丈夫です」


 俺が半ばラルヴァに引きずられるようにして歩きながら言うと、ビアンカさんは『で、でも……』と言いつつ俯いて口ごもった。


「お前には他の役目があるだろ。侍女としての責務を全うしろ」


「で、では、レノンさんのお世話係として、彼を牢獄までしっかり見届けます!」


「ふん」


 ラルヴァはビアンカさんの方を振り返りもせずに鼻を鳴らして、


「勝手にしろ」


 赤い絨毯が敷かれている長い廊下を歩いていると、暗い廊下が見えてきた。


「な、何、ここ……」


 俺は思わず声を漏らしてしまう。


 ここを進めばずっと暗がりだけということは明白だった。奥まで長く続いている廊下の天井には、小さな緑色の灯りが細々と点灯している。


 ______行きたくない。


 すぐにそう思った。だが、俺の願いが聞き届けられることはなかった。


 ラルヴァは俺の胸ぐらを掴んだまま、俺を引きずるようにして暗い廊下に足を踏み入れた。

 明るい屋敷とは正反対の、暗がりに。


 数十秒ほど歩いていると、


「ここに居ろ」


「わっ!」


 突然、前方へ投げられた俺は情けない声をあげてしまった。

 何とか地面に手をついて、顔面からの転倒は回避する。


 一体何なんだよ。急に突き飛ばしやがって……!


 俺がうつ伏せの状態で地面に倒れ、苛立つ気持ちを押さえてラルヴァの方を振り仰いだ時だった。


 ガチャン!


 と、鍵の閉まる音がした。


 鍵……? かぎ……カギ……?


 まさか! 閉じ込められた!? 牢獄に!?


 そう言えば手をついた時に感じた違和感。氷みたいに冷たい地面は、今まで歩いてきた廊下の感触とは明らかに違った。

 それにザラリとした感触もある。長く使われていなかったから、埃が溜まっているんだろう。


 これが、牢獄の床なのか……。


「ラルヴァさん!」


 檻の中に閉じ込められた俺を見て、ビアンカさんが叫ぶ。


「言っておくが、ここで収監されたのはお前が初めてだ。一生、自分の行いを呪い続けろ」


 牢獄の外からラルヴァは俺を見下すと、背を向けて去っていった。


「れ、レノンさん、ごめんなさい。助けられなくて……」


 牢獄の柵を外から掴み、ビアンカさんは小声で謝ってくれる。ラルヴァに聞こえないように配慮してくれているのだろう。

 でも、そんな気遣いは無意味だった。


「ビアンカ! 何をしている。余計な手間をかけさせるな」


 背を向けて牢獄から去っていたラルヴァが振り向き、目を見開いてビアンカさんに向かって叫んだ。


 ビアンカさんは肩をビクッとすくめて、悲しそうな表情で目を伏せると、


「は、はい……」


 大人しくラルヴァに従った。

 掴んでいた柵から手を離し、クリーム色の髪をなびかせて、ラルヴァの後を追う。


 二人が明るみの場所へと姿を消してから、俺は起き上がって体勢を整えた。

 あぐらをして、重い息を吐く。


 一体、これからどうしたら良いんだ。ウィンディーには『後で追いつく』と言ってしまった。


 おそらく生贄の女の子達はもう村に到着している頃だろう。


 俺がなかなか来ないのを心配して、不安な思いをさせてるんじゃないか。


 それに何より心配なのはフロラだ。


 ヒルス村長に叱られただけでもあんなに落ち込んでいたのに、彼氏がなかなか帰ってこないとなればどうなる。失神しちゃうんじゃないか。


 それに、夢で見たあの光景……。


 俺の夢でしかないし、ラルヴァに計画を見透かされていたショックも相まって俺の脳が作り上げた幻想なのかもしれない。


 でも確かに、あの夢の中でフロラは俺を軽蔑して、背中を見せて去っていった。


 あんなことが現実に起ころうものなら……。俺だって失神しかねない。


 怖い。怖い……。


 俺は膝を抱え込んだ。


 その時だった。


 急に、屋敷の方が騒がしくなった。そして、


「レノンはどこ!?」


 フロラの声が聞こえてきた。


 いや、待て、どういうことだ!?


 何でフロラの声が聞こえてくるんだ?


 それとも、これはフロラに会いたいっていう俺の思いが生んだ幻聴なのか……?


 何で、何でフロラが_____!?

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