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第10話 生贄の少女

 何でだ……? 何でウィンディーがここに居るんだ……?


 俺と同じように目を見開いて、驚き硬直している少女、ウィンディーは、口を開けたままだった。


 待て、何で彼女がここに……?


 俺が代わりに生贄になったはずだ。だからウィンディーは生贄として連れ去られなくて済んだはずだ。それなのに……。


「レノンくん、顔怖いわよ……?」


 こんな時に場違いだと分かっているのだろう。俺の顔を窺うように腰を屈めて前のめりになり、下から俺の顔を見上げるような姿勢を取るウィンディー。


「あ、ご、ごめん……」


 俺は一応謝った後、ウィンディーをまじまじと見つめた。


 ウェーブがかった薄緑色の長髪に、くりくりとした桃色の瞳を持つふんわりとした印象の彼女は、フルフルと首を振った。


 まるで、大丈夫だよ、と言ってくれているかのように。


 どうしてウィンディーが他の生贄の少女達と同じように、この部屋にいるのかはまだ分からない。でも怪我をしているようにも見えないし、おそらく乱暴に扱われたということではないのだろう。


 ひとまず安心だ。ウィンディーが無事で。


 いや、ここにいる時点で、無事かどうかは断言できかねるが。


「何でここにいるんだ? 俺が代わりに来たはず、なのに」


「あ、実はね、レノンくんがもしも男だってバレたらいけないから、私も一緒に行くことになったの」


 どういうことだ? デイルさんは俺を信用してなかったのか?


 ウィンディーが生贄にならなくて済むように、俺があの服を着て鬼に連れ去られたと思ったのに。これだったら意味が無いじゃないか。


「でも安心して。長老も、レノンくんを信用してないわけじゃないと思うわ」


 俺の心中を察したように、ウィンディーが口を開いた。


「どういうことだ?」


 どう考えても、俺を信用していないからこその行動だろう。本当に俺を信用してくれてるのなら、俺を信じて俺以外の人間を鬼の元にやったりしないはずだ。


「もしレノンくんが男だってバレちゃっても、紛れ込んでたことにすれば、村が被害を被ることはないって長老が言ってたの。多分、村を守るためには仕方なかったのよ」


 そんなの、納得出来るわけない。万が一を想定している時点で、俺を信用していないのと全く変わらない。


 何なんだよ、デイルさん。最初からそんな魂胆だったってわけか。少しくらい俺を信用してくれたって____。


 いや、今はやめよう。確かに色々と疑問は多いけど、ここからの脱出が最優先だ。


 そのために来たんだから。


「で、ここはどういう部屋なん……」


 一応ウィンディーには伝えておいた方がいいかもな。


 俺はウィンディーに近付くと、耳元でそっと囁いた。


 俺が歩いてくるのを見て、ウィンディーが小さく悲鳴をあげて驚いてたけど。


「一応、鬼たちが俺たちの会話を聞いてるかもしれない。だから女言葉で話すけど、気持ち悪がらないでくれ。普通の女子と同じ風に接してほしい」


 ウィンディーはピクッと身体を動かすと、


「わ、分かった。でも大丈夫よ」


 ……どういうことだろうか。


「レノンくん、女の子っぽいから女言葉で話しても全然違和感ないわよ」


 うーん、それはそれで落ち込むな……。端から見たら事実なんだろうけど。


 とりあえず、ウィンディーに気持ち悪がられないってことだから良しとしよう。


 自分をそう言い聞かせ、


「じゃあ本題に戻るけど。ここってどういう部屋なの?」


「うーん、私もよく分からないのよね。王様の所に連れてこられた後、いきなりここだから」


「私と同じ順序だね」


「やっぱり生贄の子は全員そうなのね」


「見た限りでは、生贄の女の子は全員ここに集められてるって感じか」


 そこで俺は声をひそめた。


「……まだ誰も殺されたりしてない?」


「うん。みんなずっと一緒にいるわよ。ご飯とかもすごく美味しいし」


 なるほど。丁寧に扱われてるってことみたいだな。


「雑用とかは?」


「全然。ここ、本当に自由な所よ。ほら」


 ウィンディーは部屋の奥を振り返って言った。


 俺も改めて部屋の中を見てみると、女の子たちはみんな楽しそうに話したり、メイク道具でおしゃれをしたり。


 本当に自由な感じだった。


「た、確かに……そうだね……」


 これも鬼たちの作戦なのか?


 自由にさせておいて油断させて、丸々太ったら食べてやる、みたいな……。


 町の方では家畜を育てる過程で、しっかり栄養を取らせて身をつけてから食材にするって聞いたことあるし。


 どっちにしろ、俺だけでも危機感を持たなきゃな。


 今ここで、ウィンディーや他のみんなにこの可能性を伝えるのはさすがに違うだろうし。


「レノンくん……あ、ちゃん付けの方がいい?」


 ウィンディーに尋ねられて、俺は迷ったが顎を引いた。


 ちゃん付けも、俺が慣れれば済む話だからな。


「レノンちゃんも一緒に遊びましょうよ。ここ、本当に色々な遊具が揃ってるのよ」


 口角を上げて目を細め、ウィンディーは薄緑色の長髪を揺らして部屋の奥へと足を進める。


「あ、あのさ、ウィンディー」


 俺は居てもたってもいられなくなった。


 こんな命の危険と隣り合わせの場所で、安心して暮らせるわけがない。


 一刻も早く____。


「ここから、脱出しよう」


 ウィンディーの桃色の目が、大きく見開かれた。

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[気になる点] Vtuberのサイとです。RT企画ご応募ありがとうございました。 ここまで読んだことをお知らせします。 1話が途中から始まっている感があってイマイチ作品の空気が分からなかったです。 …
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