第二十一話「クソゲー主人公はおじいちゃんと友達になる」
「はぁ!!」
結局、じいさんに剣を教えてもらうことは諦め、素振りで自分を鍛える。
「……はぁ!!」
だが、それはじいさんに教えてもらうより愚策に感じる。結局じいさんに教えてもらえなかったから手あたり次第に力を求めているだけだ。それでも何もしないよりはましと、さらに強く刀を振る。
「……やっぱりこれじゃだめだ」
ならばどうする?
やっぱりじいさんにまた頭を下げるか?
「頭を下げるにしても、あの時以上の答えをもっていかなくちゃダメだよな」
どうすればいい? ただでさえこの世界の正体について考えなければいけないというのに。
「……そういえば風の加護って結局どんな能力なんだ?」
結局無我夢中で使っただけで全然試してなかった。
「……バカだな。己を知らずして己を磨くことなどできない……か」
親父がよく言ってた言葉だ。
まずは自分の力を知ることにしよう。ステータスに書かれたスキルを一つ一つ試すことにした。
「なるほど。これは便利だな」
俺が初めて錬成で作ったのは木刀だった。
これなら、天翔丸が破壊されたとしても戦うことができる……。
「だが、錬成って疲れるなぁ……」
正直木刀一つ作るだけでも一苦労だ。これ一個作るだけで体力のほとんどが奪われてしまう。
「……あれ? でもさっき風の加護を試したときは何ともなかったな?」
もしかしたら、適正みたいなのがあって、体内のマナを使う量が違うのかもしれない。
風の加護を使うときは全然疲れなかったから、俺には風の加護の才能があるのかもしれないな。
残りのスキルは夜目と見切りだが、正直これはどんな能力かはわかる。夜に目がよくなるだの、回避率アップだのそんなところだろう。
「ともかく、これで一通りは試したな」
結局成長の可能性を秘めているのは風の加護と錬成だけだ。それ以外は前の世界でも普通にできていたしな。
特に風の加護は俺の今までの戦闘スタイルを激変させる。驚くほど便利な能力だった。
だが、風の加護を極めるとなるとやっぱり……。
「じいさんだよなぁ……」
結局そこに帰ってくる。
だが、おそらくこの話をしたとしても、まだ断られるような気がした。
確かに成長はできるかもしれないが、それだけでいいのか?
じいさんの求めている答えはその程度の話ではないのだと思う。
「……いや、そうじゃないな」
きっと俺の中にはもう答えがあるんだ。
そうだ。ただ力を手にしてしまってはダメなんだ。きっと……。
じいさんは見抜いているんだ。このままただ単純に力を手に入れるだけではよくないことが起きるって。
ならどうすればいい? じいさんは何を考えてる?
「あーーもう!! 思考がループしてきた!!!」
もうこうなりゃヤケだ!! ちょっと卑怯かもしれないけどダメもとで試してみるか……。
と、思っていたのだが……。
「おう! いいぞ?」
あっさりと受け入れたこのじじい。
「ちょ、ちょっと待てじいさん! その程度でよかったのか!? プライドとかないのか!?!?」
「そりゃないわけじゃない。事実、今はわしのほうが腕は上じゃ。そんなお主にお互いに高めあう戦友になってほしいなんて言われた日には、普通に考えれば剣聖の名折れじゃろうな」
「い、いいのか? そこまでわかってるなら」
じいさんは失笑するように鼻を鳴らす。
「じゃが、お主がその目をするなら断れんわい」
「目……」
「あの時のお主の目はただただ力を求めて、怒りに支配されただけの未熟な気持ちしかなかった。おそらく、シーファトの一件がお主を、そこまで追い込んだんじゃろ」
そりゃそうだ。偶然スピカを助けられたからよかったものの……あ、そうか。
「スピカもまた、戦場に身を置いたあの時点では生死は紙一重だったって事か」
「そう、お主はそれを助けた。それは前世ではできなかったことなんじゃろ? ……お主が成長し、スピカ殿がお主との絆を大切にしたから生き残れた。お主はその紙一重を何が何でも守るために、つかみ取るという心を手にしなければならない。それは力を手にするより、なによりも大事な事じゃ」
あの時はシーファトで起きた事件の怒りで、何も見えなくなっていたから断られたのか……。
「お主は気付いてないかもしれんが、お主の心はひどく不安定じゃ。おそらく、お主の心はスピカ殿というたった一人の少女を失った瞬間壊れる。それがシーファトの一件でわかった。じゃから、お主はまずスピカ殿を何よりも優先で守れ。それこそわしより……フォルよりじゃ」
俺は、決意を固めて強く頷いた。
「その代わり安心せい。フォルはお主が守らなくとも、絶対にわしが守る……わしもおそらく、そういう意味ではお主と同じじゃろうからな」
俺達は苦笑して、手を握り合う。
「よろしく頼むぜ。親友」
「おう! 親友」
「はぁ!!!」
俺の切り上げを身をひるがえしてかわされる。
だが、俺も素早く刀を反転させ振り下ろす。
「っ!」
後ろにも目があるんじゃないかと思えるくらいの超反応で身を、半回転させ鞘で俺の刀を受け止める。
「ほいっ」
気の抜ける声と共に、俺の力を利用しさっきとは逆回転して左の刀が俺を襲う。
「なんのっ!!」
ベルトに刺した鞘を抜き取り、左の刀を受け止める。
「ほほう! これを読むか!! じゃが」
「ぐっ!?」
刀を受け止めたはずなのに、俺の頬に薄傷が浮かびあがる。
一旦距離を取り、戦闘が中断する。
「皮一枚だけ切っただけじゃ。じゃが、風の加護を利用すればこんなこともできる」
すげぇ……刀がすり抜けてきたみたいだった。風の加護を刀に纏わせて、俺の防御した時の衝撃で飛ばしたのか。
「双竜 刹華裂刃……。わしの得意技じゃよ」
しかも……名前までかっこいい!!! 俺の中二心が疼きだす!!!
「ほ、他にはどんな技名があるんだ!?」
「むっ? ま、まぁいくつかはあるが……双竜 蛇翔撃とか」
「うおおおおぉぉぉぉぉ!!! 超かっけぇ!! 俺こんな格ゲーみたいなネーミング好きなんだよ!!」
「……主の言うかくげーなるものが何なのかは知らんが、ちと恥ずかしいぞ……」
「恥ずかしがることねーぜじいさん!! 昇〇拳とか蛇〇崩天刃とかバン〇ィットリ〇ォルヴァーとか天覇〇煌斬とか~あと格ゲーじゃないけど天〇龍閃とかもいいよな~」
「な……な……なんじゃそのかっこいい技名の数々はぁ!?!?!?」
どうやら、じいさんと俺は同じ穴のムジナだったようだ。その日は、結局お互いに必殺技開発とその名前について講義するだけになったが、一応強くなった。……ような気がする。
いや、かっこいいから強くなった。うん! 中二病上等!!!
「して! 蛇〇崩天刃とはどんな技じゃあ!!!」
「こうやって蹴りを……」
「イカス!! 最高じゃあ!!!」
強くなった……よな?
「ねみぃ……」
そりゃそうか。あの後さんざん技開発とか、お互い技(俺は知ってるゲームの技だけど)を見せあってすでに深夜。
宿屋に戻るのも面倒になるほど語り合った俺達は、この日は野宿することになった。
じいさんも、さすがに眠たいようでテントの中でぐっすり眠ってしまっている。俺はと言えば細枝で焚き火をつついていた。
「じいさんのくせに中二病とは……俺も人の事言えねーけどな」
まぁ、そうはいってもやっぱりかっこいいと思うのは仕方ない。こればっかりは感性の問題だ。
「あら? 起きてたの?」
「スピカ……? と、フォルも」
二人とも、猫獣人族の里にいたはずだ。
「タクミー! ごはん持ってきたよー!」
「おお、ありがとう」
おそらく、さっきペルに野宿すると電話したから見にきてくれたんだろう。言われてみれば結構おなかがすいてきたなぁ。
カゴの中身は……骨つき肉に、から揚げ棒、串肉、肉の……。
「って肉だけかよ!!」
「肉だいすきー!」
フォルの好みかよ! ……まぁ俺も好きだけどさ。
「さ、さすがに肉だけだと辛いかなと思って、おにぎり用意してきたよ」
さすが料理人スピカ。肉にあったナイスチョイスだ。
「ついでに飲み物も。スポーツドリンクにオレンジジュース。あとタクミの好きなコーラもあるよ。トクホだけど」
……コンビニ帰りかな?
一瞬そんな懐かしい名前が出てきたところで、俺はペットボトルを受けと––––––––––––––
「……スピカ。これお前が作ったのか?」
「う、うんそうだけど」
当然そうだよな。じゃないとこの世界にペットボトルなんてあるわけないよな。
「だけど……じゃあどうやって創造したんだ?」
「? そりゃ私の記憶にあるから……」
そう、それはそうなんだが……。ちょっと待て、なんか引っかかる。
確かに今までもそうだ。この世界にないサンマを作り出したり、ビールもこの世界にないものだ。ポリエステル製品もある世界だ。ゲーム世界なら、そもそもペットボトルのようなプラスチック容器だって作れても、確かにおかしくない。それはそうなんだが––––––––。
だけど、それってゲーム世界とはいえありなのか? この世界は本当にゲームの世界なのか?
ゲーム世界だとしたらこの世界観だったらやっぱRPGだよな……こんなゲームどう考えてもRPGで––––––––は––––––––。
「っ!!!」
唐突に俺が気付いていなかった、重要な見落としに気付いてしまった。
俺は急いでステータスカードを手にする。俺の考えが正しければこの世界は––––––––。
「スピカ!! お前のステータスカード見せてくれ!!!」
「う、うん……」
俺は半ば奪い取るようにカードを受け取る。
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体力値:2436
筋力値:680
耐久値:1064
魔力値:1853
魔耐性:1724
俊敏性:1057
動体視力:1963
料理
錬成
創造
身体強化
治癒
炎適正
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やっぱりそうだ……。
「クソったれ……恨むぞアトゥム」
––––––––わかってしまった。
この世界の正体が––––––––。
それは、俺がこの世界に来た意味。この世界の本当の難易度を示していた。
「超ハードモードね……ハハッ趣味わりぃぜ。創造神様よぉ……」
俺の絶望の意味がわからないスピカとフォルは頭にはてなマークを浮かべて俺を見つめていた。




