[009]3月の№9 デスゲーム試験。
状況の分からないまま、雪かき休みが終わり、他の雪かきを行う。
いつも通りというべきか、いつもの面子での作業は進む、基本的に性別の違いはあるが、男性が力がある訳ではないが、何故かこき使われるのは主に男性、何やら理不尽な気分にもなるが、それを言ったら始まらない為に黙々と作業。
何やら嬉しそうに企んでいる美姫、純白の翼に清楚な美人さんなのに、残念な女性である、姉の光姫の方は、漆黒の翼を動かし、整った冷たい感じの容姿の美人さんだが、何やら困っていた。
(可愛いって彼方ではどんな意味なんだ)
この単語を言ったばかりの豹変してしまった、アーライルの清楚な美人な女性の美姫。
美姫の姉の方の光姫は、外見は確かに冷たい感じの美人さんであるが、性格の方は何やら懐かしい感じの、可愛げのある中身だ。
(どうしたものか)
正直なところ、面倒の二乗だ。だが二人は同じ様に過ごしてきた仲間だ。同じ時間の中で、同じ道を歩み、同じ様に戦ってきた仲間。戦友達であり、助けられる事も多く、なんだかんだ言っても掛買のないものだ。
(仕方ない、切り札を使うか)
フレンドチャットを使う。
スカオ:
『アキラ』
アキラ:
『?どうしたの?』
スカオ:
『切り札を使う日が来た』
アキラ:
『・・・マジ?』
スカオ:
『大マジ、バカ真面目にも地雷を踏み抜いたらしい』
アキラ:
『姉妹の事ね?』
スカオ:
『ああ。可愛いという単語を聞いた美姫が豹変して何か企んでいる』
アキラ:
『可愛い?もしかしてそれを美姫に言ったの?』
スカオ:
『何か不味かったか?』
アキラ:
『それを何を可愛いと表現したの』
スカオ:
『光姫の中身が可愛いと』
アキラ:
『確かに中身は可愛い人よ。いつも妹を案じる優しい人だし』
スカオ:
『何が不味かったのか』
アキラ:
『いえ、不味いなんてレベルじゃないわ。正直なところ逃げる事をお勧めするわ』
スカオ:
『そんなに不味い事か?』
アキラ:
『光姫の外見から言って、可愛いと評される事は一度もなかった、妹さんはそれが大変に気になっていた、姉の魅力が分かってくれる男性を探していた、OK?』
スカオ:
『ああ。大体察した、地雷原に突っ込んだらしい』
アキラ:
『アーライルの女性に気軽に可愛いとは評さない方がいいわ。何せ彼らには問題があるのよ』
スカオ:
『具体的に』
アキラ:
『アーライルは女性が多い、男性との交流が少ない人が多いの、このため男性に免疫がない人も多いわ、色々と勘違いして暴走する案件も多いのよ、最近は減って来たけど、とある男性が容姿が可愛いと評したら、その場で求婚を迫られるなんてこともあったわ、しかも彼らは男性が少ないから常に男性を求める傾向にあるのよ、WHO人の中でもアーライルは女性が良く生まれるので、男性を惑わすとも言われる人種なの、何せ他からすれば好きな男性を惑わし連れている女なのだから』
スカオ:
『問題だらけじゃないか、何でももっと早く言ってくれないんだよ』
アキラ:
『あんたが切り札を中々使わないからよ』
スカオ:
『どうしよう』
アキラ:
『どうしようもないわ。見かけに騙されたわけではないわ。もし美姫なら礼を言う程度で済むけど、何せ男性の色々な勝手な所を見てきたからわかるのよ。でも姉の魅力が分かってくれる男性は皆無だったわ。それがあの子の最大の悩みだった、それを解決してくれる貴方を逃すはずもないわ』
スカオ:
『姉の魅力を理解してくれた初めての男性と認識されたわけか?』
アキラ:
『簡単に言えばそうなるわ。最初って何かと勝手がわからないから問題が多いのよ』
スカオ:
『それって初恋とかいう奴か?』
アキラ:
『近いわね。正確には姉の魅力を理解してくれた初めての男性』
スカオ:
『もしかして美姫って』
アキラ:
『見た目も有るし、性格も有るし男性からの人気がない筈がないわ。全てが完璧だったけど、シスコンなのよ。自分よりはまずは姉って性格、姉の幸せを見届けてから僕は結婚しますと、そう言う子なのよ』
スカオ:
『じゃ光姫は?』
アキラ:
『確かに美人という人はいたわ。でもあんな性格だからモテないのよ。誰もが恐れて近づかないから、より男性が好きになれないというべきか、そんな中、姉の春を察知した妹がどんな行動に出るか予想できるでしょ?』
スカオ:
『ちょっと待て!いくらなんでも極端だろ!高々言葉一つでそこまでするのかよ!』
アキラ:
『本人を直に評するのなら何の問題もなかったわよ。でも姉妹の仲を取り持ち色々としてくれた上に、姉の魅力を分かってくれた初めての男性の貴方なのよ?何が何でも手に入れようとするわ。そりゃあもう色仕掛けで済んだら安心よ。そんな生易しいレベルにはないわよ?』
スカオ:
『どうしようもないのか?』
アキラ:
『どうしようもないわ。まさかあんたが女性の外見じゃなくて、性格の方に理解を示す様な奴に成長するとは思わなかったわ。いやーマジで驚くわよ。まあ人生の墓場ね』
スカオ:
『逃げていいか?』
アキラ:
『とこに?』
スカオ:
『怖いって思うぜ。戦慄するっ言葉がぴったりだ』
アキラ:
『無理よ。あんたが戦友を見殺しにするような非情な奴なら私だって協力はしないわよ。そんなあんたの性格から言ってももう無理なのよ。ただ妹より姉の方はどうかしらね。何せ貴方は色々としてくれた恩人であり、仲間であり、友人であり、大切だけど異性とは見なしていないわ。正確には見なしていなかったかもしれない、何せ最近は色々と変化しているし、あの光姫がファション雑誌や化粧を考える様になった、大きな事よこれは?』
スカオ:
『何やら深刻に不味い状況になっているような』
アキラ:
『まああんたには色々と借りは有るし、こっそりと支援するわ』
スカオ:
『持ちべきものは仲間だ』
アキラ:
『であんたの気持ちは?』
スカオ:
『姉妹に対する気持ちなら仲間かな、助けてもらったら色々と恩に着ている、俺らとの共闘を示してくれたことは、今でも恩に感じている、それが無かったら今はない、その大きな切っ掛けを作った二人は可能なだけ護りたいと思う』
アキラ:
『あんたらしいわね。恩には恩で返すという考えは、そう言う義理堅い所を利用されると思うわ。そう言った意味であんたは美姫にとってみれば都合のいい奴なのよ』
スカオ:
『光姫の方は?』
アキラ:
『多分、あんたが大切な友人って奴、異星人の初めての友人、それはもう大切にしない方がおかしいわよ。あの光姫の性格からしても恋愛より友情だしね。性格が性格だから女性のような考えでもないし、あんたを虜にしようとは思わないわよ。そう言った意味であんたというものが、姉妹の仲を取り持ったのはまだ良かったけど、まああんたには男性的な魅力は薄いしね。恋愛よりは友情の性格だし、光姫とは仲が良いのは二人の気がとても合うからよ。ただ合い過ぎるからこそ恋愛にはならないのよ』
スカオ:
『なるほど、光姫は味方になる可能性があるな、助かった』
アキラ:
『ただ光姫は受け入れ変化する事を選ぶわ。その結果的にはあんたの事が色々とキーとなるわね。良い選択がある事を祈るわ』
スカオ:
『光姫も言っていたが、受け入れ変化するするってのはどんな意味だ』
アキラ:
『そうね。彼らWHO人の共通するモノよ。成人に達するとある変化が現れる、それは地球人からすれば驚異的な物よ。何せ彼らは性別を変更できるようになるのだから』
スカオ:
『性別の変更?』
アキラ:
『そう、男性から女性へ、女性から男性へ好きな方を選べるのよ』
スカオ:
『・・・』
アキラ:
『だからこそ男性ではなく、男性型、女性ではなく女性型、どの性別が基盤となるかでしかないのよ。だからこそ光姫は女性型かも知れないけど、中身は男性型よ、もし成人に達すれば、きっと男性を選ぶわ。晴れて男仲間の誕生って訳』
スカオ:
『なんというか』
アキラ:
『美姫は女性ね、どう考えてもその選択肢しかないわ。二人の姉妹の時間はない、未来を選択し続け限り、姉妹という絆は残っても形が変わる、だからこそ最良の結果を選んでほしいわ。彼らが良い選択を選べるのなら私はいう事はないわ』
スカオ:
『だから美姫は姉が姉で居る事を望み、それを繋ぎとめる為に男性を探していたのか』
アキラ:
『そうよ。光姫は男性になる事を望んでいるわ。いつか男になる事が彼の希望なのだから、だが妹にとってみれば面白くないわ。大切な姉が男になるなんて考えられない、確かに男性的な姉でもあるけど、本当に男性になるのは断固としてお断り』
スカオ:
『何やら安心だな。光姫は女性を選ばないだろう。その理由は妹を守る為だ』
アキラ:
『・・・続けて』
スカオ:
『何故なら同じ男を取り合う事は必ずなくなるからだ』
アキラ:
『OK。あんたにも話しておいたけど、光姫は変わりつつあるわ。何を考えて女性であることを受け入れ始めたのかは確かに分からないわ。その選択をする必要がない彼が彼女を選択する気が無いのに、なぜその選択を考えているのか。それは女性からは聞けないわ。友人であり男性であるスカオだからこそ可能なのよ。案外楓も気付いているかもしれないけど、彼奴の性格も考え物だから』
スカオ:
『性別が変更可能ならば、確かにWHO人は他の種族にとってみれば魅力的に映るな』
アキラ:
『ええ。だから彼らはとても慎重よ。自分達がいかに変化し易いかを知っている、アーライルの人々が何故女性を多く選択するのかはわからないわ。しかも彼らアーライルの人々には結婚という概念は確かに有るわ。でもそれは性別との婚姻ではない、相手を半分と判断した時点での事なのよ。伴侶と判断したからの最良の選択、それだからこそこの試験には彼らWHO人には大きな意味があるわ。特に性別が偏りがちなアーライルの人々には、とても大きな意味があるわ。自分たちの変化し易い事を選択し、これを最良の結果に結び付けたいと』
スカオ:
『光姫は男性を選ぶ、妹との絆を守る為にはこれしかない、しかし妹は姉であった欲しい、この為には男性と結びつけるのが最も簡単、二人は絆と形かの選択肢の中で二人は既に離れつつある、しかし俺が仲を取り持った』
アキラ:
『そうよ。二人の距離を縮めたのは良かった、それは幸いだった、そうでなければ美姫が強硬手段出る恐れがあった、自慢の色香で男を虜にし、交換条件を出し、それが光姫を女性であることを選択させること、だけどスカオの行動の結果、これは延期された』
スカオ:
『何かおかしいぞ』
アキラ:
『あら美姫の味方?』
スカオ:
『違うな、美姫は虜に出来ない、何故なら兄の様な姉が絶対に妨害するからだ』
アキラ:
『なるほど、確かに頷けることね』
スカオ:
『だからこそ二人は未来の選択の中ですれ違い、警戒し、互いの目的の為に互いを妨害し合っていた、一見仲の良さそうな姉妹ではあるが、兄妹になる事を望む光姫にとってみればそれは望む結果ではなかったのだから、だが兄になる事を望む光姫は、妹である美姫の成長を願っていた、しかし美姫は姉であることが望ましいという自分の理想の中で、これを模索していた、いつの日かの事もあり、この日の為に力をためていた、何故光姫の方はああで、美姫の方はああなのかはそこにある』
アキラ:
『なるほどね。美姫の方は姉が姉である選択を選ばせるために、今まで全てを注いでいた、けど兄の方は既にそれを理解していた、正しく千載一遇の万に一の確率に全てを掛ける為に動き出した、これは大変な事になるわ』
スカオ:
『16年間、待ちに待った妹、これを理解しているからこそ光姫の方は最大限の警戒を発揮するだろう、そして妹では兄に勝らない事も多い、何故なら美姫には絶対的な事が欠けている、何故なら俺は光姫を女性としてみていないからだ。異星人の男性同士になる事で性別の厄介な事のない友情が手に入る、これを知らない美姫には理解できない事の一つだ』
アキラ:
『問題はあんたが中身を可愛いと言ってしまった事よ。美姫の方は念願の機会が訪れた、光姫の方は友人の台詞に警戒すべきか考える事に繋がるわ』
スカオ:
『違うな、美姫にとってみれば確かに機会ではあった、だが光姫にとってみれば男性の一択の彼にとってみれば鼻で笑う事だ』
アキラ:
『なるほど、やはり男性の事は男性がよく知っているわね』
スカオ:
『恐らく光姫は何かを考えついた、それが何かかはまだ良からないし測れない、しかし今ならわかる、光姫にとってみれば宿願が叶う絶好の機会なのだから』
アキラ:
『宿願?』
スカオ:
『美姫の幸せ、その最良の相手を探していた、兄にとってみれば妹の婚期がとても気になる、女性を選択するのに男気が全くない妹の事もあり、どうにかしなければならないその中に試験で光姫が友人になれると判断した少年がいて、美姫の方はわからないが、少なくても兄の方にとってみれば宿願ここに叶ったり、喜んで美姫とくっつけようとするだろう、そうすれば晴れて俺と弟になるからな』
アキラ:
『・・・姉妹なのに似ていないわね』
スカオ:
『兄にとってみれば妹の幸せを願っていたが、妹の方は兄という選択ではなく、姉という選択をしてほしいと願う、二人は恐らく幸せを願いながら、決定的に違う事に理解が及ばなかった、妹にとってみての幸せ、兄にとってみての幸せ、二人は意思疎通がよくできているようで、互いの目的の為に陰で動きつつ、本心を隠してきた、それが分かる』
アキラ:
『OK。まずは整理するわ。WHO人は成人に達する事で性別を変更でき、生まれた時の性別を元にそれぞれの型に別れる、アーライルの人達が何故女性を多く選択するのかはわからないわ。姉妹として生まれた二人の内、彼女は彼になる事を望み、彼女は彼を彼女のままでいて欲しかった、兄弟と姉妹という二人の理想が互いに衝突している。だけど直接的な衝突はせず、互いに慎重の互いの理想を通そうとしていた、それがスカオの登場で急速に現実味を増した、互いの個人にとってみての宿願が晴れて叶う事、それは互いの何かしら』
スカオ:
『理想とする幸せ、家族の在るべき形、理想とする家族像、この違いから二人は静かに争っているのだと思う、そしてこのままでは光姫の理想が優先される、焦る美姫にとってみれば俺という存在が光明となった、ただ二人は互いの理想とその関係から美姫には最初から勝ち目がなかった、何せ光姫は成人し、兄である選択を選べばよいのに対し、美姫は遅れた年齢でこれを変えるしかなかった、経験の違いからこれは成功する確率がない、何故二人が年齢を言わないのかはここにある』
アキラ:
『二人とも慎重派だからね』
スカオ:
『美姫はとある事を知っていたが、光姫はこれを長年隠していた二人の理想とする家族像の為に、二人は行動を起こせない、二人が慎重だからではない、二人の種族が変化し易い事を知っているからだ。互いの危険性から互いに動けない事を知っている、そこに仲間が出来た、地球人の仲間だ』
アキラ:
『それって私が利用されていると?』
スカオ:
『違う、二人は時間のない事に焦り、一つの決断を下したのだと思う、仲間を得たからひとまず考えうと、だから二人は必死に理解しようと努めた、自分の良い結果に結びつけるために、美姫は都合の良いPT、それが俺達であると判断し、協力する事を選び、光姫は妹の事もあり、今後の未来の事もあり時間のないから一つの決断も下し、恐らく最良の結果になるPTである俺らを選択した。ある程度の被害も覚悟してな』
アキラ:
『・・・』
スカオ:
『光姫は前提をはき違えるミスを犯し、失敗した、美姫はそんな姉への機会を得る絶好の機会を得ていた、しかし二人は夕霧には警戒した、都合の良い仲間の存在が欲しかった二人はとある馴染みを思い出し、楓と取引した、何らかの譲歩と、何らかの交換条件によりこれは叶い、楓の行動原理もあり、また楓のような考えの持ち主の為に都合の良い結果に結びつく筈であったが、互いへの情報不足からこれにと失敗した、楓が出し抜いたからだ』
アキラ:
『・・・』
スカオ:
『楓は頭が良い、二人の本質を理解し、一計を案じたそれが最大の結果につながると判断し、人生最高の賭けに出た、アーライルのレシピを俺に提供し、俺は良い結果を生むと判断した、その理由は女性には理解しにくいものだ。高い確率はほぼ100%、その最大の理由は同じであるからだ。好奇心の塊同士、互いへの共感からこれならば大丈夫と判断した。女性にはない物、それを知るからこそ互いが信用できることを知っていた』
アキラ:
『少年同士の共感ね』
スカオ:
『そうだ。その楓が何故行動に出なかったか、行動に出る必要が全くなかったからだ、何故かわかるか?』
アキラ:
『いえ分からないわ』
スカオ:
『既に勝利は目前にしていたからだ。試験に合格すれば楓の目的は達成できる、何故って二人の対価など楓にとってみればコイン1枚の価値もないからだ。勝利は目前、コイン1枚の価値のない対価、どちらを優先するかもしかして考えるのか?』
アキラ:
『・・・非情ね』
スカオ:
『価値のない者の為に動く様な奴じゃない、楓にとってみればまったく魅力のない話を持ち掛けられ、しかも断るのは難しかった、しかし意外の事だった自分と同じ物が紹介されたからだ、楓は直ぐに確かめ、納得した上で二人との取引を破棄した、楓を理解できなかったための結果だ、望まない約束を押し付けられた楓が激怒しない訳がない、その楓が少しの復讐心を生むぐらいの結果は出す』
アキラ:
『それが私?』
スカオ:
『ある意味違う、本来ならば夕霧を動かせばよかったが、これでは薬が強すぎると判断した、劇毒である夕霧より、比較的善性の高いアキラを考えた、これは成功する確率が高いが、少しの情報を持たせた大した策謀家だよ』
アキラ:
『うわ。利用されていたの私って』
スカオ:
『いや利用する必要がないが、確かめはしただろう。こいつはどっちだとね』
アキラ:
『・・・』
スカオ:
『だからこそ聞かなくてはならない、楓は何を渡した』
アキラ:
『OK、さすがは時雄の弟ね。心強い仲間だわ。何も渡されていないわよ』
スカオ:
『ああそういう事か、まあアキラつて女性かも知れないが、基本的にまあ正確には仲間側』
アキラ:
『OKOK、楓も悪くない選択だわ。そう言った意味でアーライルの人達って策謀家の多い所ね』
スカオ:
『正確には策謀家が多いからこの策謀に対しての造詣が深まるって事だ。分かるだろ、そんな中で楓が何故魅力を感じなかったのかは』
アキラ:
『策謀が好きじゃないのに、策謀に加担しろと言われた挙句に、まあなるほど』
スカオ:
『コイン1枚も魅力がない理由は、策謀が好きじゃないのに策謀に加担しろと言われたから、無理矢理に動かされた楓が復讐を考えない筈がない』
アキラ:
『ちなみに光姫は、策謀を好まないわよね』
スカオ:
『好きではない、たぶんそこには楓と同じ意味がある、策謀ばかりする訳じゃないが得意とするアーライルの人々の考えが好きじゃない、全体寄りの考えの持ち主は基本的に策謀を得意とする、個人寄りの考えは策謀を好まない、楓のような個人主義者は策謀が理解できない訳ではないが、好きじゃないから関係を持ちたがらない、まあそんな訳で美姫は最初から勝ち目がなかったわけだ』
アキラ:
『大した物ね』
スカオ:
『多分経験の違いだろう、楓はアーライルの社会で幼い頃から生きていたのに対し、美姫の方は兄の様な姉に守られてきた、護る者が居る者と、護る物がない者、当然のように性質の変化し易い彼らアーライルは、最良の選択は高い確率で失敗する、その大きな理由は殆どの者がそれを考える競争倍率の高さにあるからだ。対して楓はそれに気づき俺にレイズした、こいつなら大丈夫と、最良の結果ばかりを求める人達と、それ以外を考える人とは得られる経験が違う』
アキラ:
『効率主義の失敗ね』
スカオ:
『そういう事かな、皆が同じところに殺到すれば被害は大きい、だって同じところに同じ数があるとは誰も思っていないからそれは失敗する者が出る』
アキラ:
『男性が少ない弊害って奴、常に争うからそんな所になったって訳ね。じゃあ切るわよ』
スカオ:
『夕霧に伝えるのは別に良いが、彼奴の事だ。激高するぞ』
アキラ:
『対夕霧機動兵器の要請を出しておくわ』
スカオ:
『だから切り札を使いたくないんだよ』
アキラ:
『じゃ』
□
「光姫」
名前を呼ぶ、漆黒の翼の女性型はこちらを見る。
「アキラより事情は聞かされた、だからこそコウと呼ぶぞ?」
「こう?」
「光姫って文字の意味が分かるか?日本語の意味で」
「いや」
「光のお姫様、要するに女の子って意味だ」
「ならこうは?」
「男の子に付ける名前だ」
「ほう、男の子?」
「どうせ変えるのなら慣れておけ」
「なるほど、アキラが伝えたわけか、手間が省けてよかった、スカオの意味は?」
「本名の言葉遊びだ。単純な物だから国外の者には理解しにくい」
「ならスオだな」
「おうよろしくなコウ」
「うむ。何とも言うべき新鮮さだ」
「まあ最初にすべきことは、恐らく来るであろう、とある破壊兵器の妨害だ」
「夕霧?」
「ああ。たぶん激高して襲ってくる、キレやすいんだよ」
「危険な奴だな」
「しかも一度キレると戦闘能力が上がって手の施しようがない」
「ちなみに目的は美姫か?」
「ああ。間違いなくPKに来る」
「難儀な奴だ」
「ああいう温厚そうに見えるのも外面だけだ。アキラの事だから細工はしているだろう、全く面倒を押し付ける」
「面倒な事をする」
意味が分かっているのか、コウは武器を取らずに、雪かき用のスコップを近くに刺し、俺も仕方なしに旧式はなはだしいロングソートを実体化させる。コウにロングソードは渡し、もう一つのショートソードとナイフを実体化させた。
程なくして現れた夕霧、いつも通り温和そうなニコニコ顔で接近してくる、しかし近接範囲に入ると薙刀を実体化させ襲って来た。
二人が掛かりで妨害し、兎に角に戦闘能力が上がった夕霧に、防戦一方、さすがに二人は強いと判断したのが、珍しく後退し周囲を観察し始める。
分かっていない美姫は驚いており、理解が追い付いていないらしく、動揺した顔で立ち尽くしていた。
「夕霧、常々思うが、本当に日本人なのか、とても思えない様な暴力好きだ」
「分かりませんね。斬った方が速いでしょ」
「あれでも妹なのだ、護るのが俺の務めだ」
「スカオは?」
「仲間で争うのはよくない、それにお前に暴走を止めるのが時雄との約束だからな」
「理解に苦しみます、斬った方が速いのですよ」
直ぐに暴力に訴え、気に食わなければ、直ぐに斬ろうする悪癖があるのが、困り所で、兄からは、常々こいつから目を離すなと言われる困った仲間なのだ。
決して話が分からない石頭ではないが、頭に血が上り易くカッとなると直ぐに暴れる。
こんな夕霧に比べれば、アキラがどれほどの素晴らしい奴なのかは、よくわかる様な奴なのだ。
アキラもこんな夕霧の事もあり、常々に細工はしている、夕霧も気付いては直すが、アキラも成長し気付かない範囲で細工する様になっている、仲間なのだが直ぐに暴れる夕霧には全員が悩まされる、しかも一度キレると戦闘能力が上昇するのでとても厄介な仲間なのだ。
自警団時代には度々に暴れるので、夕霧の近くに配置される者はこの訳の分からない暴君に怯えない方がおかしいが、仲間だけはなるべく壊さないようにする奴なので、何やら暴発しない手榴弾の様だ。
「言葉ではわからない相手なら斬るべきではないのですか」
どうして言葉の次が殺人に行き着くのかとてもわからない、片方のコウはこの訳の分からない理論には理解が及ばないらしく、困った顔で剣を構える。
「俺にはさっぱりだ。どうして言葉の次が殺人に走る?」
「言葉の通じない相手にするのはキルで十分です」
頭がおかしい夕霧の台詞に、俺とコウは困った顔で武器を構える。
コウが、どうしたものかと考えた様子で、ひとまず言葉が余り通じない相手と判断した様子で、足元の雪を蹴る、同時に夕霧は飛び跳ねて避け、その追撃にナイフを投擲し、ショートソートでの薙刀の迎撃を行う。
夕霧が跳躍と回転により薙刀で全ての攻撃を弾く。
俺もコウも後退し、相変わらずの戦闘能力向上は厄介だ。
「強くなり過ぎだろ」
呻くコウ、いつもよりはこのコウがいるおかげで楽だ。
「コウのおかげでいつもよりは楽だ」
俺の言葉に、コウは深紅のルージュの唇を歪める。
「二人だからか、よくまあ」
「いつもなら入院コースだ」
「一度交友の問題について話し合う必要があるな」
「日本人にも色々ってね」
「日本への色々な物が揺らぐぞ」
「夕霧は日本人の女性にしてはかなり異例だ」
「アーライルにも居ないぞこんな奴」
「怒りが収まるまでは戦うぞ」
「アキラ」
ルージュの唇が呪詛のような名前を呼ぶ。
そこに夕霧の体にエフェクトが包む、周囲を見ればアキラがスペルを使っていた、こちらの視線に気づき手を振る。
「力が」
弱体化、魔法の妨害に属する魔法効果だ。恐らく夕霧の攻撃力の元となるSTRをダウンさせたらしい、中々冴えた奴である。
「取り押さえろ!」
二人で飛び掛かり、夕霧に被さって取り押さえた。
暴れる夕霧に、力が落ちた事で大変楽になった、アキラ様様である。
「アキラには酒を奢らないとな」
「好い奴だ」
捕獲された夕霧に、アキラより投げて渡されたロープで巻いて、そんなアキラも降りてくる、ひとまず夕霧問題は一件落着だ。
コウと握手し、近付いてきたアキラともコウが握手する、俺とは拳を突き合う。
「夕霧に言う前に楓に話したら、スキルポイントブックを渡され妨害を取れってね」
「楓、感謝」
「まっ楓も驚いていたわよ。あんな温厚そうな女性がキレやすいなんて」
「正直、女性不信になってもおかしくない戦闘能力だった」
「そりゃあ仕方がないわよ。夕霧がキレると戦闘能力が上昇し、私じゃ話にならないわ、いつもは時雄がいるけど、まあ今回はこいつも無事に生きているしよかったし、まあ毎度の様に暴れる夕霧にはいつも悩まされていたのよ」
「この為に剣を習ったからな」
「いつも夕霧の被害に遭うのに、私は力にならないから悩んでいたのよね、これで夕霧問題は解決ね」
三人で力強く頷く、付いていけなかった美姫は茫然とした顔で見ていた。
「さて、色々と話し合おう」
最大の原因の美姫は訳が分からず混乱する様子だ。
□
ひとまず整理すれば、コウ、美姫の二人の問題、コウは兄妹が理想、美姫は姉妹が理想という家族像により問題だ。
この話のこちら側の事を聞いて、二人は訂正するところはなかった。
俺とアキラのフレンドチャットの、会話により推測は全て当たっていた。
美姫は姉であった欲しいと願うが、コウがこれを聞き入れる様子はなく、何れは姉妹の時間は終わり、兄弟としての時間を歩む事になるのは確実で有った。
コウが何故、理想とするものが兄妹なのかはわからないが、コウの性格を考えれば自然の流れのように思え、どう考えても女性型の選択はない、そもそもの女性的な様子が殆どない、女性的な所のないコウが、妹の願いを聞き入れるのはまず無理なのだ。
もしコウに男性と結びついて家庭を持ち、そんな事を言っても中身が男性のコウにとってみれば受け入れがたい事なのは、想像に難くない。
まずは妹である最大の原因この美姫の事だ。
「なぜ理想が姉妹なのだ?」
コウの質問に、美姫は桜色の口唇を固める、答えたくないというべき事なのか、それとも答えられない事なのかはわからないがこの質問は失敗らしい。
「なら質問を変えよう、スオなら」
「スカオなら大丈夫です」
「随分と懐かれたわね」
「そうだな。なら美姫は理想と現実のどちらが欲しい」
「理想です」
「そうか、その結果、コウが苦しむのは想像できるか」
「・・・」
「たぶん美姫も何度も考えたが、理想が実現して欲しかった、そうすれば大好きなコウが取られる心配がないからな」
美姫が迷っていたが小さく頷いた。
女性のままなら大好きな姉のまま、女に取られる心配がなく、性格から男性に靡くとも思えない、このままなら姉妹として暮らしていける、そう思っていたらしい。
コウの性格もあり、容姿的には確かに美人ではあるが、全くモテない、もし成人に達し男性になればどうなるのか、恐らくそれは変化する事になる、何せ女性からすれば男性的過ぎるコウが、正真正銘の男性になれば、知らない女性にはどう映るのか?考えなくても分かる。当然のように何れは伴侶と結ばれ、美姫の願いは崩れ去る。
「ちゃんと話すべきだったな美姫も、コウも」
「・・・困ったな」
コウは正真正銘に困っていた、コウが男性を選択すれば困った事になり、女性を選択できないコウにとってみれば仕方ない事ではある、しかしそうすれば妹の願いが消える、自分を取るべきか、それとも妹の願いを取るべきか、この二択にある。
俺は考えていたとある提案をする。
「なあコウ、美姫、少し聞いて欲しい」
二人がこちらを見る。
「二人は今は姉妹だ、これは変えられない事なら、その時間を紡ぐことはいけない事か?続ける事はできなくても、今という時間を楽しんではいけない事なのかとも思う、コウにとってみれば大切な妹の願い、これを少しだけ酌んでやれないか、たぶん美姫にとってみれば理想は確かに潰えるが、今という時間は有って、これを姉妹の中での姉妹としての時間を楽しみたいという美姫の願いもある、なんせ長い間、これは叶わなかった」
コウは俺の提案というより話に、耳を傾け、その後に考えている様子で居た、美姫は不安そうな黒曜の双眸で、兄となる姉を見ていた、いずれかの終わり、それを選びたくなかった妹の事もあり、二人には話し合い時間がいるように思えた。
「・・・何がしたいのだ美姫」
「姉さんと姉妹の会話がしたい、兄としてではなく、姉として少しの間、話をしてほしい」
妹にとってみれば姉妹という当たり前のことがしたかった。
コウは迷った末に俺を見る、俺もアキラも頷いて夕霧を引き摺ってから去った。
□
楓の所に礼に来て、礼を述べてから全てを話した。
この少年も、幼馴染の問題が解決した事に礼を述べていた。
「上出来かな」
アーライルの至宝と呼ばれる天才付与学者は、正直な事を言った。
「これで二人の凝り固まった時間が、やっとの事、家族という時間が流れる、長かったけど、スカオ、アキラはよくやってくれた、感謝をしないとね」
「別にいい、二人は仲間だからなコウもこれで自分の時間が持てるようになる、美姫も同じように自分の時間が持てる、二人の静かな戦いは終わった」
「そうだね。いうのもあれだけど、僕らアーライルには必ず付き纏う問題でね、僕のような一人っ子にはない問題でもあるんだけど、二人はこの問題の典型的な例題でね。常に二人でいる理由が、互いを警戒するが故の事なんだ。家族なのに信じ切れない、でも二人は切実に家族の理想像の為に動いていた。これをアーライルの定めと呼ぶ。僕らアーライルのは毎度のことだ。日本でいう社会問題だね」
「閉鎖的だから、そう思うぞ」
「そうだろうね。この試験が僕らに変革を与えてくれるそう信じている、僕もスカと呼ぶよ」
「おう、ちなみになんだが楓って女の子の名前だぞ」
「え?うそ?」
「いや知らないのがむしろ驚きだぞ、なんで女の子みたいな名前なんだって思わない日本人は皆無だ」
「マジかよ、洒落にならん」
「だからこそ最初、楓って名前を聞いてこいつは男なのになんで女の名前なんだった素朴な疑問だったぞ」
「早く言え!」
「かといっても変えられないだろ?」
楓は恨むような瞳で見ていた、天才のミスがあったらしい事が判明、いくら翻訳機能が有っても、名前の事までは知識に該当するので知るはずがなかった。
「リアルに戻ったら改名してやる、絶対だ」
「今度はミスをするなよ」
「日本の名前で男性は」
「楓という名前からかえという名前も、榎枝という名前も、外した方がいいぞ、もし日本人の男性が楓という名前を聞けば間違いなく女性の名前としか思わない、またかえという名前も同じく女性の名前だ、かでというのは苗字だ、えだは木のあれな」
「全部失敗じゃないか!」
「ああだから考えを変えてみる、楓というのを名字にする」
「家名の事だね?」
「ああ。それなら何の問題もなくなる、楓何々君と言われれば誰も不思議には思わないからな、ただ楓何々さんと呼ばれたら気をつけろ」
「・・・あんまり歓迎できそうにない事そうだね」
「女性だったら安心だ」
「・・・」
「男性だったら年齢をまず確認しろ、もし若ければ警戒する必要が生まれるぞ、大抵の場合において問題を起こすのは男性だ。何せ日本の7割の犯罪者は男性だ」
「男性に偏り過ぎだよ」
「もう少し日本について学べ」
「日本への色々となものが壊れかねないよ」
「主にイメージな」
「大切な物と思うけど、分かった日本の新聞でも取るよ」
「なるべく文化を読めよ」
「文化ね。分かった」
「何やら代表も苦労しそうね、本格的に試験の事もあるからちゃんと寝るのよ」
「当然だよ。ちゃんと二時間は寝ている」
自信満々にいう楓に、このバカをどうしたものかと凄く悩む。
「楓、いうのもね。日本では最低でも6時間は寝ないといけないのよ」
「6時間!?」
「当たり前じゃない、むしろ2時間で足りる訳がないでしょうが」
「バカな、実験はどうすればいいんだよ」
「だーこの実験バカは」
「僕は馬鹿じゃない」
「阿保、学府に入ったらどうするのよ」
「学府・・あー。正直だるい」
「・・・その試験だろうが」
「休むよ。僕には清き正しい生活があるんだ」
「たぶん首根っこ掴まれて登校させられるわ」
「酷い、僕が何をしたんだ」
「学府に登校しなかったからよ」
「登校しないって重罪なのか」
「色々と足りなくなって毎年留年するわ。永遠に進級できずに卒業できないリサイクルに入るわよ」
「・・・どうしたものか」
「下手したら全員が卒業の日に貴方は1年生と登校日よ」
「そ、それは嫌だよ」
「もっと酷い結果も有るわ。小さい子達が卒業する日に貴方は1年生の入学式に出るかもしれないのよ。まあ学府がそこまで寛容なら言う事もないけど」
「むぅ。凄く困る、これは改善しなければ」
アーライルの人達は何かと自分基準に動く傾向にあり、自分を改善せずに、周りを改善させよとする悪癖がある、周りに合わすのではなく、周りを自分に合わせるタイプの困った連中なのだ。
飛行場の代表執務室から出る俺達、雪かき作業に戻り、夕霧のロープを解き開放した後に、薙刀も返し二人に謝りに行く。
夕霧も反省しており、いつもの温和な笑顔から意気消沈した面持ちでいた。
この黒髪ポニーの少女にも、少しは理性というものが宿ってくれることを切に願うしかない、もし止めなければ夕霧は確実に美姫をPKしていた。そんな過ちは犯してほしくなかった。
「一緒に謝るから」
「ありがとうスカオ、私もちゃんと話さずに、直ぐに頭に上ったら暴れる癖を改めようと思います、時間はかかるとは思いますが」
「ならいいのさ。夕霧も石頭じゃないし、話が通るから安心なんだ」
「ありがとうスカオ、アキラもいつもすみません」
「好いって、夕霧には何度も助けられたし、ちょっとした恩返しね」
こう言う所があるから、この黒髪ポニーの少女が気に入っている、直ぐに暴れるが悪い所を直ぐに改めようとする偉い所がある、自分の至らないところを改善する事が出来る良い奴なのだ。当たり前に思えてもこれは中々に難しい。
雪かきの持ち場に戻り、姉妹の会話をしていた二人に近付く、こちらを見てコウが片手をあげる、美姫もにこやかに微笑み頭を下げ、直ぐに三人で謝った。
二人は驚いていたが、夕霧がしっかりと話、二人もこれを受け入れてくれた。




