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【16200PV感謝】剣に見込まれヒーロー(♀)に 乙女の舞で地脈を正します 剣巫女・剣奈 冒険の旅  作者: 夏風
第九章 千剣破の奮闘 そして篠の道

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186 キャンプ撤収 淡路の青い空


 ブォン、ドドドッ……

 ブォン、トトトト……


 玲奈のビラーゴと、藤倉のVストロームのエンジンが始動した。お宝探しを終え、テントの撤収を終えた一行は、帰路につくことにしたのである。


 テントの撤収でも、藤倉はテキパキと動いた。テントを固定していたロープを外し、ペグの泥を拭い、テントを解体して、袋に収納していった。テーブルやチェア、マットなどもテキパキと分解、収納していった。


 玲奈は焚き火台、コンロ、風防などのキッチン周りを片付けた。ナイフやカテラリーを水洗いした後、ペーパーで拭いて収納していった。


「おい、藤倉、水はもういいのか?」

「泥を洗うからもう少し置いといて。俺が最後にウォーターバッグを片付けるよ。牛城さんは終わったら休憩してて」

 

「お、おう」

「ありがとう。牛城さんが要領いいからすごく手早く済みそうだよ」

 

「そうかよ」


 ぶっきらぼうに返答する玲奈である。その耳が赤くなっていることに、誰も気づいていない。


「おや?」


 いや、首に巻き付いた白蛇が、ニヤニヤしていた。


「んだ?この野郎」


 玲奈が白蛇をむんずと掴み、地面に叩きつける素振りをした。


「い、いや!ちょっと待て!わ、妾は何も見ておらん!見ておらんぞよ」

「ちっ、そうかよ」


「うふふ。仲良くなったね」

「ちげえよ」


 白蛇と玲奈のやりとりを見た剣奈が、嬉しそうに言った。玲奈はぶっきらぼうに返答した。しかしその口角は上がっていた。


 キャンプの撤収を終えた藤倉は、黙々とバイクに、キャンプ用具を積み始めた。玲奈もキャリアケースにキッチン用品などを収納していった。


「最終チェクだ。忘れ物なし!」

「ゴミも無いな。ちゃんと積んだな?」

 

「異世界で環境破壊は慎まないといけないからね。灰も持ち帰るよ」 

「意外とテメェ、きっちりしてるな」

 

「バイクにキャンプ用具積んで、いろいろ旅してたからね。っていうか、俺、どんなイメージなの?」

「節操のねえ、変態ロリコン野郎?」

 

「……」

「なんてな…… ちったぁ、見直したぜ」

 

「う、嬉しいよ……」

「うふふ。チームの結束高まったね。それじゃあ、帰るよ?」

 

「おう!」


 剣奈はペットボトルの水を取り出し、肩、頭に水をかけ、タオルで拭った。そして北東南西の方角に、それぞれ深くお辞儀をした。最後に野島鍾乳洞の方に向かって、深く頭を下げた。


 遠い昔、厳しい人生を生き、無残に、池に沈められた篠。彼女の魂が、安らかに過ごせるよう、新しい生では、幸せをつかめるように祈った。


 ヒュウ


 風後吹いた。剣奈の髪が揺れた。


「行くよ?みんな、僕に掴まって?」


 玲奈は左手で剣奈の服を掴み、右手でバイクのハンドルを握った。藤倉は右手を玲奈の腰に回し、左手でバイクのハンドルを握った。玲奈の耳が赤く染まった。

 

 白蛇はニヤニヤしながら、玲奈の首に巻きついていた。岩屋の犬は、剣奈のリュックに入れられた。リュックがパンパンに膨らんでいた。


 剣奈は来国光を両手でもって、天高く掲げた。剣奈の口から、高く朗々とした祝詞が紡がれ始めた。


(さきわ)ひ給ひし事を

嬉辱奉うれしみかたじけなみまつりりて

ここに来国光を清き真心以ちて

置足(おきた)らはし

(まつ)(さま)

安らけく聞こしめし給へと

恐み恐み白す


 ヒュウ……


 風が吹いた。剣奈たちの姿が薄くなり、やがて幽世から消えた。清冽(せいれつ)な空気だけが、その場に残っていた。


 現世に剣奈たちが現れた。それを見た人は誰もいなかった。


「さて、帰るか」

「うん!」


 玲奈と藤倉が、バイクの向きを調整した。岩屋の犬を入れたリュックは、藤倉が背負った。


「窮屈だけどごめんね」

ワン!

 

「ただちゃ、ワンちゃんお願い」

「了解」


 玲奈がバイクに跨り、剣奈がタンデムシートに座ってタンデムベルトをカチャリと繋いだ。白蛇は玲奈の胸に潜り込んだ。

 

 白蛇、すっかり玲奈が気に入ったようである。


「しゅっぱーつ!」

「「おう!」」

 

 ブォン、ドドドッ……

 ブォン、トトトト……


 玲奈のビラーゴと、藤倉のVストロームのエンジンが始動した。


 ドドドドドド ヴォォォー

 トトトト ヴィーーン


 ビラーゴとVストロームが走り出した。昼過ぎの淡路の空は、青く澄み渡っていた。


 風は剣奈たちを優しく包んでいた。

 


 第九章  完

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