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【16200PV感謝】剣に見込まれヒーロー(♀)に 乙女の舞で地脈を正します 剣巫女・剣奈 冒険の旅  作者: 夏風
第九章 千剣破の奮闘 そして篠の道

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175 炭火ステーキカレー堪能 いざ探検!

「玲奈姉、お顔赤いよ?熱いの?」

「えっ、いや、そ、その、あちいな」


 玲奈が慌てて腕で額を拭った。コンロの上ではカレーがくつくつと煮込まれていた。鈍感剣奈には玲奈のほのかな恋心、ツンデレは難しかったようである。


「うわぁ!おいしそう!」


 剣奈がすんすんとカレーの匂いを嗅いで嬉しそうに叫んだ。――そう、剣奈の感情最上位は食欲なのだ!この食欲魔人がっ!


 藤倉は焚き火の上に飯盒をセットし、その横でステーキを焼いていた。肉の焼ける美味しそうな匂いと香ばしいカレーの匂いがした。これまた鈍感藤倉は玲奈の変化にまるで気が付かない。玲奈一人がドキドキと顔を赤くしていた。


 広場に食欲をそそるカレーの匂い、そして炭火焼きステーキの香ばしい香りが広がった。剣奈が美味しそうな匂いを胸いっぱいに吸い込んで目を輝かせた。剣奈の心はうきうきと弾み、笑顔満面になっていた。

  

「玲奈姉、もう食べていい?いい匂いしてるよ!」

「もうちょい待て。味見するからよ」

 

 玲奈はおたまでカレーをすくい、ひと口味わった。

 

「……うめぇ!」

「あー!ボクも食べるぅ!」


 剣奈が嬉しそうに言った。藤倉は蒸らした飯盒の蓋を開けて、ほわっと沸き立つ湯気を嗅いだ。

 

「うん。うまそう。こっちも炊けた。ほら、つぐよ」


 藤倉が紙の深皿にたっぷりとご飯をついだ。そして焼きあがった香ばしいステーキ肉をおいた。剣奈の目がくぎ付けだった。藤倉が玲奈に皿を渡した。玲奈が赤くなりながらそれを受け取った。


「ほらよ」

「うわぁ!」

 

 玲奈が炭火焼きステーキごはんの脇にたっぷりとカレーを盛りつけた。剣奈はステーキカレーをみて心をときめかせた。両腕で拳を握り、ヨダレさえたらさんばかりだった。

 そして剣奈、玲奈、藤倉の前にステーキカレーが並べられた。


「ほら、食うぞ!」

「はーい。いっただきまーすっ!」


 剣奈がスプーンで大盛りにカレーをすくい上げ、フーフーと息を吹きかけ、ぱくりとかぶりついた。


「おいひいっ!」


 剣奈が叫んだ。玲奈と藤倉は微笑みながらそれを見ていた。


「牛城さん、料理うまいですね」

「テメェもな」

 

 玲奈が耳を真っ赤にしながら、照れくさそうに笑った。


「お肉もさいっ高!」


 剣奈が口いっぱいにステーキをほおばった。ステーキは食べやすく藤倉がナイフでカットしていた。藤倉が笑った。

 

「炭火で焼いたステーキってホント美味しいよね」

 

 ヒュウ ザザァ

 アハハハ

 

 風がカレーとステーキ肉の香りを運んだ。海が静かな波音を届けた。三人の笑い声が丘に響いた。焚き火の炎がゆらゆらと揺れ続けていた。

 やがて、三人の楽しい食卓はやがて終息の時が近づいた。剣奈がカレーを何杯もお代わりしたことは言うまでもない。


 あたりはいつの間にかうす暗くなっていた。


「さてと。剣奈!宝探しだ!」

「ん!じゃあ行くよ?」


 剣奈が立ち上がった。玲奈と藤倉は食事の後片付けを進めていた。剣奈が二人の様子を見て言った。


「あ、お片付けが終わるまで待つよ。てかボクも手伝うよ」

「いいよ、アタイらがやっとくからよ。テメエはさっさと行ってこい」

 

「え?」

「ん?オメェ、一人でいくんだろ?」

「えええっ?ボク一人で?」


 剣奈が心細げに言った。剣奈が丘から遠くを見た。太陽が海に沈みはじめているのが見えた。


「宝探しだろ?早く行けよ?」

「み、みんなで行った方が楽しいよ?」

「ははぁ。オメェ、男のくせに怖いのか」

 

「え?あ、ううん、怖くない!ボク、男の子だから平気。一人で行けるもん」

「そうかよ。じゃあ洞窟のお宝を探してきてくれ」

 

「え……で、でもぉ」

「ち、しゃあねぇな。洞窟の入り口までついて行ってやるぜ」

「う、うん……」

 

「藤倉、ちょっと離れるぞ」

「了解、片付けはまかせて」


 藤倉が率先して後片付けをする様子を見て玲奈が微笑んだ。そして剣奈の手を握り、すたすたと坂道を下っていった。剣奈は玲奈の手をぎゅっと握り返していた。明らかに怖がっていた……


「じ、じゃあ、ボク、行ってくるから…… 玲奈姉はそこで待っててね」

「おう」


 剣奈が暗く裂けた鍾乳洞の入り口の前に立った。


 (闇に裂ける亀裂みたいだ。こ、怖いなぁ……)


 剣奈が玲奈を振り返った。玲奈は腕組みをして坂道の下で仁王立ちしていた。玲奈があごをしゃくった。ゴクリ。剣奈が生唾を飲み、ギュッと目をつぶった。そして意を決したようにしゃがみ込み、亀裂に入り込んだ。


ピチャン


「ひっ!」

 ゴツン


 洞窟に足を踏み入れたばかりのところで水滴の落下する音が聞こえた。剣奈は思わず腰を浮かし、天井に頭をぶつけた。


「痛ぁ」


 剣奈は涙目になりながら、再びしゃがみ、前に進んだ。


 ピチャン


 再び水滴の落下音がした。剣奈は音に怯えて肩をびくつかせた。


「あああああぁ!玲奈姉っ!ダメェ。も、もうダメェ」

「はっ。ビビリめ。あんな恐ろしい黒犬をバッタバッタやっつけるのにそんな水音が怖いのかよ」


 玲奈は怯える剣奈をみてニヤニヤしていた。剣奈の顔は恐怖に青ざめていた。両手で肩を抱いてブルブル震えていた。

 

「だって、だって」


 剣奈は涙目で入口の玲奈に訴えた。


 違うのだ。怖いのだ。黒犬ならやっつけられるのだ。来国光でひと斬りすれば簡単に浄化して消滅させることができるのだ。

 

 それに邪気との闘いは基本昼間である。太陽のもとである。ちゃんと黒犬は見えているのである。

 

 しかし……


 鍾乳洞は真っ暗である。まったく見えないのである。怖いにきまっている。


玲奈(れな)姉っー。出ちゃダメ?」


「はっ、「ボク、男の子だから平気、怖くないもん」って誰のセリフだったけ?」


 玲奈は打ち合わせの時の会話で、剣奈が強がって言ったセリフを繰り返し、先に進むように促した。


(ボク…… なんであんなこと言っちゃったんだろ)


 剣奈は脊髄反射的に強がって言ってしまった自分のセリフを後悔していた……

 

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