表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【16400PV感謝】剣に見込まれヒーロー(♀)に 乙女の舞で地脈を正します 剣巫女・剣奈 冒険の旅  作者: 夏風
第八章 鳴門海峡の封印

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

170/196

163 玉藻 悪の女幹部から味方魔法少女に(フォト絵)

「うああああああ」


 九尾が叫び声をあげた。悲痛な声だった。


「おのれええええぃ!」


 バリン

 パァァァァァァ!


 光が満ちた。黒九尾の黒き闇が、光の奔流に呑まれ四散した。そして……、金色に輝く巨大な狐が、九尾の金狐が現れた。

 しかし金狐は見る見る間に小さくなり、小狐ほどのサイズとなった。そして……、落下し始めた。


「あ!堕ちる!ん♡」

 タッ

 パシッ


 剣奈は力を失い落下する金狐を、その小さな体を空中でキャッチした。そして。


「ん♡」

 タッ


 両足で空中を蹴った。剣奈の身体がどんどん海岸に近づいていった。


 ズザザザザザー


 剣奈は両足で速度を落としつつ、海岸に着地した。その胸に幼体化した小さな金狐を抱えて。


「おい!そいつを下ろせ!とどめを刺す!」


 玲奈が金狐に銃口を向けた。


 剣奈は静かに首を横に振った。


「玲奈姉、お願い。この子……、邪気に無理やり憑依されてただけみたいなんだ。闘ってたボクにはわかる。この子、ボクと、ホントは闘いたくなかったんだ」


 剣奈は優しく金狐を撫でた。金狐は力を使い果たしてぐったりしていた。


「いや!ダメだ!またいつ操られて敵対するかわかんね」

「大丈夫!そしたらまたボクが倒す!」


 剣奈が必死に玲奈に訴えた。しかし玲奈は納得していなかった。

 

「お人好しもいい加減にしやがれ。テメェはそいつに殺されかけた、いや、殺されたんだぞ!」 

「でも、この子の意思じゃなかった。そしてこの子はいま、魔王の呪縛を解いた。アニメでもよくあるじゃん?敵の女幹部が、すごく苦悩してて。その子は魔法少女の強敵で事あるごとに立ちふさがってきたけど、魔王の呪縛から解かれて味方の魔法少女になるんだ。この子もそうだよっ」

「はっ!現実とアニメをごっちゃにすんじゃねえ」


 キュウウウ


 その時、金狐が鳴いた。甘えるような、か細い鳴き声だった。


「うふふ。かわいいよ?この子、ここに残していったら、また邪気にとりつかれちゃうかもしれないもん。ボクたちの世界に連れていきたいな」


 キュウウウ


「ついてくる?」


 キュウウウ


「うふふ。じゃあ君はきゅうちゃん。きゅうちゃって呼ぶね?」


 ブワッ


 その時、剣奈の腕から金狐が消えた。そして……、目の前に女性が立っていた。たおやかな美しい女性だった。


◆玉藻前

挿絵(By みてみん)


「ごきげんよう」

「えっ?えっ?きゅうちゃ?」

「そうね。今あなたが私をそう名付けたわ。私はあなたから名をもらった……」

 

「えええええ?人だったの?」

「そう……、人として生きてきた期間は長いわ……。昔、この地に暮らしてたこともあった……」


 女性は懐かしいような、泣きそうな目をして遠くを見ていた。


「それは……、異世界で?」

「いいえ。あなたと同じ世界で生きてきたわ」

「そうなんだ」

 

「その時、私は藻女(みずくめ)と呼ばれていた……。育ててくれた両親からそう名付けられた」

「みずくめ?」

「ええ。海藻のことね。私は船に乗っていた……。でも嵐で難破して……、海に投げ出された。渦にのまれて……、死ぬかと思ったわ」

 

「そうなんだ……」

「それでね。妖力をほとんど使い果たしたの……。そしてこの地に流れ着いた……」

「大変だったね……」

 

「そうね。私は浜辺に打ち寄せられて……、気を失っていたわ。藻だらけになっていたらしいの」

「ええええ?」

「うふふ。それで藻女って……。おかしいわよね」


 剣奈はどきりとした。藻だらけになった子犬。もし剣奈が拾ったら……、「もちゃん」とか……、言いそうだったからである……


「そ、そうだね。その人は……、嫌な人だったの?」

「いいえ?とても優しい人たちだったわ……。とても……」


 女は泣きそうな、懐かしいような、それでいて、とても愛おしそうな顔をしていた。


「じゃあ、ミクちゃんとかのほうがいい?」

「いいえ。きゅうちゃんでいいわ。私はいろんな呼び方で呼ばれてきたから……、別に何と呼ばれても……」

 

「そうなんだ。なんて呼ばれてきたの?」

「華陽、妲己、ジウウェイフー、藻女、玉藻の前……、たくさん……」

 

『なんじゃと?ではおぬしは』

「あら?刀さん?そうね。たぶんあなたが想像する通りよ?そして千年、この海底で封じられてきた……。殺生珠に閉じ込められて……」

「ん?どういうこと?」


『大怪異、九尾の狐じゃ』

「あー、知ってる!忍者のお腹の中に封じられてる狐さんでしょ?」


 ――いや剣奈。それはそうなのだが……。それはとある大人気コミックス、ナル……ゲフンゲフン。

 はっ!そう言えばここは鳴門海峡!そうなのか!?


「いいの?きゅうちゃんで?」

「ええ。そう呼んで?愛称は「きゅうちゃん」。名は玉藻。自分では「私」、そうするわ」

「わかった!きまりだねっ!」


「ったく。何でも拾うやつだな。まあ……、アタイもその一つか」

「あら?あなた……」

「玉藻が……、玲奈を見た。その魂を……。大怪異の玉藻には見えた。彼女の……」

 

「はっ!やめろやめろ。アタイはタダの女だよ。ちょっと変なもんが見えちまうだけの……」

「そうなのね……。わかったわ……」


 玉藻は今見たものを見なかったことにした。そして心の中にそっと押し込めた……


『剣奈よ。邪気を封印しようかの?』

「うん!」

『ではまいろう』


 剣奈は山に向かって歩き始めた。右手に玲奈、左手に玉藻。両手をつなぎながら。


 やがて剣奈は諭鶴羽山の山頂に着いた。鳴門海峡が見渡せた。海は深い青だった。

 剣奈は上着を脱いだ。そしてリュックを探した。けれど……、リュックは見当たらなかった。


「あれ?ボクのリュックは?」

「コイツのブレスに焼かれて消し炭になったんじゃねえの?」

「そか……、じゃあ仕方ないね……」

 

「あら?ごめんなさい。何をされたいの?私にできることはなにかあるかしら?」

「えっと……、禊をしたくて……。水があればなぁって」

 

「あら?お安い御用ですわ」


 玉藻は右腕を天高く上げた。途端に黒雲が現れた。


 ポツリ、ポツリ……

 ドシャア!


 いきなり大粒の雨が降り出した。

 

 カラッ


「これでよかったかしら?」

「あははははは。きゅうちゃ、おかしいの!」

「え?」

「きゅうちゃ!やりすぎだよ!びしょびしょだよぉ!でも……気持ちいい」


「うふふふふ」

「あはははは」


 からりと晴れた青空のもと、虹が光った。笑い合う剣奈と玉藻である。苦笑しつつ二人を見るは……玲奈。 


 そよ風が吹いた。虹はやさしく三人を見守っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ