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じょじたん~商社マン、異世界で姫になる~  作者: K島あるふ
第五章 戦争の季節

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487/493

487後方部隊

 昨晩のモニター越しリモート会議では、デニス正将も意気揚々と言っていた。

「あとはもう勝ちしかないのでエルシィ様はエルシィ様の仕事に専念していただいて結構です」と。

 その言葉を信じ、エルシィは朝から戦況を確認せず執務に没頭していたのだ。


 まぁ、四五〇に増やしたセルテ勢が二五〇しかいないトラピア軍と正面から会敵すれば負けは無いだろう。

 そうエルシィも納得していたから、というのもある。


 ところが朝の執務がひと段落して「どれ、今どうなったかな?」などと、スポーツ試合の中継情報でも見るようなノリで覗いてみれば……コレだ。


 ずいぶんとセルテ領内に食い込んで布陣したトラピア軍。

 それを追ったせいか隊列が伸び切ったセルテ軍。

 そして両軍がぶつかったはいいが、先鋒隊のみでの接敵になったせいで逆に劣勢となるセルテ軍。


「いやいや、ダメでしょ。これダメじゃない?」

 エルシィは慌てて近くにいる者たちに振り返る。

「良くない、気がするな」

 軍の運用など詳しくないアベルも真剣な顔でモニターを覗き込み、そう返事した。

 そんな二人の言葉を聞きつけ、キャリナやライネリオも集まってきてモニターを覗き込む。

「ダメそうですね」

「うん、ダメっぽい」

 誰もが軍事に明るくはないが、どう見てもセルテ軍が劣勢であることは読み取れた。


 時間と共にセルテ軍の後続はどんどん合流しつつあるとはいえ、合流する前に先鋒隊から削られていてはいつまで経っても優勢にはならないじゃないか。

 そんな感想が皆の頭に浮かんだ。


 エルシィは急ぎデニス正将にどうしたいか、どうすべきか、という問いをかけようと、新たな直通モニターを開く。

 が、そこに映ったのはすでにトラピア軍の数隊に囲まれつつあるデニスとその護衛隊の姿だった。

 これは声をかける暇はなさそうだ。


 しゃーない。

 エルシィは手にしていた元帥杖を改めて握りなおし、緊張で乾いていた唇をペロリと舐める。

 気持ちを切り替え、自分で考え、自分で実行するモードに気持ちを切り替えたのだ。

 本音で言えば現場の言葉はよくよく汲みたいところだが、こうなっては是非もない。


 その為にも、とエルシィはまた更に虚空モニターを一枚出す。

 これは長く伸びたセルテ軍の比較的後方の隊を見るための物だ。


「あら、後方は先鋒に比べるとまとまっていますね?」

 キャリナが最初に口にした感想。それが皆の思いを代弁していた。

 完全に縦隊が渋滞してのたくった蛇のようになっていると想像していたが、後方の部隊は思ったより群衆になっていた。


 いや、これは状況を察した後方の誰かが早急に後方部隊をまとめたのだろう。

 列のままに先鋒に合流すればそれは意図せずとも「少数ずつ逐次投入」という殲滅待ったなしの状況になるが、多少先鋒を犠牲にしてもまとまって合流すればまた一気に数の上で逆転できるわけだ。


「後方の指揮官は誰ですか……ってホーテン卿!?

 何でそんなところに……」

 隊を拡大して指揮を執っている人物を確認し、エルシィは少し驚いた。

 後方で隊がまとまれるよう指示を飛ばしていたのはエルシィ配下において騎士の長であるホーテン卿だったからだ。


 なぜ驚いたか、と言えば、戦場では面白がって前線へ行きそうなホーテンが後方にいたからだ。


「おお、姫様。おはようございます。

 今少々忙しいのでお茶などは後程に」

 開かれた虚空モニターから漏れ聞こえたエルシィの声を拾い、ホーテン卿はくるりと首だけこちらに向けてそう言った。

 状況ほどに慌てた様子のない。


 上空で、さらに言えば全体像を見る為に距離も取って開いた虚空モニターだったゆえ、エルシィはさすがにギョッとした。

 ギョッとしたがすぐ気を取り直し、食い入るように身を乗り出した。


「ホーテン卿、先鋒のデニスさんがピンチです。

 すぐに後方隊を前に送ります」

 つまりエルシィは元帥杖の権能を使ってホーテンたちを無理やり間に合わせるつもりなのだ。

 ホーテンもすぐにそれを察してにんまりと笑った。

「それは助かりますなぁ。大口叩いたデニスも、さぞや姫様に感謝することでしょう」

 その言葉には「忠誠心低いあやつでも、この恩はさすがに裏切れまい」というホーテンの少々意地悪い思惑が乗せられていた。


 エルシィもその辺りは汲んだが、今はそんなことを気にしていられる状況でもない。

 言って見れば一刻を争う事態なのだ。

 ところで一刻とはおよそ二時間を表す言葉なので、そう言ってしまうと実際には大して急いでいないような気もしてくる。


 などと余計なことが頭をに浮かんだが、エルシィはプルプルと首を振ってそれを打ち払い、エルシィはホーテンたちが映っているモニターを少し広げ、元帥杖で隊の各員をクリックしていく

 そして送るべき人員、およそ一〇〇ほどの後方部隊がすべて「選択状態」に変わったところで、エルシィは元帥杖を振るった。

「とんでけー!」

 途端、後方部隊のことごとくは、光の粒となって画面から消え、すぐ隣に広げられていた別の場所を映すモニターへと現れた。

続きは来週の火曜に

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― 新着の感想 ―
危ういところをエルシィが見つけてくれてデニス正将も助かりましたね。 ここまでの失態をして、助けてもらってれば、如何に忠誠心が低くとも、簡単には裏切れないですねw
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