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じょじたん~商社マン、異世界で姫になる~  作者: K島あるふ
第五章 戦争の季節

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483/493

483アカネコ

 その日はセルテ勢もトラピア勢も、各々の目指す作戦に向けての準備に終始した。

 セルテ勢は、まだ自国の都が陥落したことも知らないトラピア軍を屈服させる為に軍を再編成する。

 トラピア勢は降伏後を見据えて()()()咲かせ見せる為の進撃準備だ。


 そんな中でも実質セルテ領の国主であるエルシィは、国政に関する様々なお仕事を止めるわけにはいかない。

 その日も執務の合間を縫って市井の有力者と会食に臨んでいた。

 会食と言っても食事が主ではない。

 会って話し、様々な施策に対する折衝や調整するのが目的である。


 そして昼食会場を三回ほど梯子して、お腹がくちく、どころかパンパンになって執務室に帰ってきたところでその報告は入って来た。

 報告主はトラピア軍を離脱したトラピア国騎士長サイを見張るねこ耳忍者たちだ。


「ヒメハギさん、何か動きがありましたか?」

「動きがありましたにゃ!」

「領都とは反対方向に移動を始めたにゃ」

「反対? ……というと、ヤブマオさん?」

「目的地までは判らんにゃ」


 エルシィからの質問に答えられずしょんぼりするねこ耳忍者だが、これは仕方ないとエルシィも頷いた。


 サイ氏が率いる兵数は、彼の派閥である騎士を含むおよそ一〇〇名である。

 しかも派閥の結束もある為、他者が紛れ込んで情報収集をすることはとても難しい。

 アントール忍衆(しのびしゅう)には変装の術に長けた者もいる……というかぶっちゃけ覚醒スキルで本物そっくりに化ける者もいるのだが、残念ながら皆が皆その術を使えるわけではないのだ。


 そんなわけで彼ら二名のねこ耳たちも少し離れてサイ氏とその集団の動向を眺めているのが現状である。


 さて、満ちたお腹をさすりながら、エルシィは考えをめぐらし、今、彼らと話しているのとは別の虚空モニターに地図を出す。

 この地図は友軍地以外は白地図状態ではあるのだが、それでも「どの方向に何があるか」くらいは大まかに解る。


「トラピア領都とは逆……ということは東進ですね。

 これはオスト男爵国かギリア男爵国へ亡命でもする気でしょうか?」

「亡命、というよりはオスト国に援軍要請を行うつもりなのかもしれませんね」

 隣からひょいと顔をのぞかせそう言うのは、宰相ライネリオだ。

 執務室と言えばこの男、というくらいにはエルシィより長い時間ここにいる。

 なぜなら、国政に関する執務をエルシィと分担している上に、エルシィが留守の時は代理も務めるからだ。


 ともかく、そんなライネリオの言葉に「ふむぅ」とエルシィは唸りながら難しい顔になった。

 今出た、オスト男爵国に懸念事項があるからだ。


 オスト男爵国は今エルシィたちのセルテ領を方々から攻めている四国同盟の一角を担う国である。

 そのくせ、未だにオスト軍が国境を越えたという話は聞かない。


 そしてここからが特に懸念事項なのだが、エルシィが各国の様子を探らせるために送り込んだねこ耳忍者が、この国からは現状排斥されているのだ。


「アカネコどもが邪魔するにゃ!」

「敵か味方か、アカネコ軍団登場、の巻きにゃ!」

 オスト男爵国の名を聞き、虚空モニターに映っている二人のねこ耳がいくぶん憤慨した様子でそう言いたてる。

 いや、セリフの内容から「面白がってないか?」と思わんでもないが、表情を見る限り不機嫌そうではあるのだ。


 アカネコ軍団。

 その名はあくまでエルシィたちが与えた仮称であり、さらに言えば別に毛並みが赤いネコの集団というワケではない。

 それはオスト男爵国に侵入していたアントール忍衆(しのびしゅう)のねこ耳たちをことごとく退けた赤いマフラーのねこ耳忍者集団であった。

 いったい彼らが何者なのか、その詳細はアントール忍衆(しのびしゅう)でもまだわからないという。


「つまり、サイ氏がオスト男爵国に入ったら、もうその動向は追えないということですねぇ」

「そうなりますね。こうなると、ますますオストに何が起こっているのか気になりますね」

 エルシィの言葉にうなずくライネリオだが、彼がそう言うのにも訳がある。

 そう、おそらくオスト男爵国では何かが起こっていると予想されているのだ。


 というのも、実はこのアカネコ軍団によりアントール忍衆(しのびしゅう)が排斥されたのは、四国同盟が締結され、各国の軍が各国の領都を離れた後くらいからなのだ。


 それまでは普通にオスト領内を我が物顔で探っていた我らがねこ耳忍者たちだったが、電撃的にやって来たアカネコ軍団に不意を突かれ、瞬く間に追い出されてしまったのだ。

 以降、どうあっても妨害されて国境を越えることができないという。


「まぁ、そうですね。そんなオスト国にサイ氏が入ってくれるなら、むしろひと波起きて何か探るチャンスができるかもしれません」

「なるほど。それは期待したいところですね?

 ではヒメハギさん、ヤブマオさん、サイさんたちが確実にオスト男爵国へ行くのかどうか、そして入れるのかどうか、その隙にオストへ潜入できるのか、などを引き続き監視してください」

「任せるにゃ」

「やったるにゃ!」

 二人のやる気に満ちた返事を聞き、エルシィは満足して通信を終えた。

続きは来週火曜に

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― 新着の感想 ―
オスト男爵国内で一体何が起きているんでしょうね? アカネコ軍団の正体も分かっていませんし、サイ騎士長を手駒とし使う存在がいると厄介なことになりそうですね。
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