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じょじたん~商社マン、異世界で姫になる~  作者: K島あるふ
第五章 戦争の季節

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481/493

481朝食会で打ち合わせを

 さて、エルシィが幼女男爵と女児提督からトラピア子爵国領都占領の報を聞いたその翌日である。


「それでデニスよ、どうするのだ?」

 朝。虚空モニター越しに集まっているエルシィ旗下の将たちと朝食会という名の軽い打ち合わせ会を行っているところでホーテン卿が話を振った。


 その穂先にいるのは当のトラピア軍と絶賛対峙中であるデニス将軍である。

「……私の好きにしていいのですか?」

 問われたデニス将軍は意外なことを訊かれた、という風で手にしていた黒パンを皿に置いた。


「おぬしは対トラピア軍の責任者であろう。

 何か意見があるのではないか?」

 続けてホーテン卿が問えば、デニス将軍は「ふむ」と少し考えてからモニター向こうの主君エルシィを見た。


「私の意見を述べさせていただければ」

「どうぞどうぞ」

 エルシィはモフモフと()んでいた目玉焼きを挟んだ丸パンを飲み込み、そう先を促す。

 デニス将軍は「では」と前置きして言う。


「トラピア子爵国が実質陥落したとはいえ、まだ矛を収めたわけではない軍がそこにいます。

 今こそ打って出てトラピア軍を叩くのが良いと考えます」

 冷静そうに言い放つデニスだが、その言葉はヤる気に満ちている。

「おお、やるか。腕が鳴るわい」

 ホーテン卿はその言葉に嬉しそうに頷いた。


 おおよそ軍務につく他の者たちもこの意見に賛成のようで、あちこちで頷く姿が見えた。

 そこでワザと水を差すように言葉を挟む者がいた。

「デニス隊は元々我ら本隊が合流するまでの防衛任務だろう。

 攻めに転じるつもりか?」

 今回の戦争において全軍の責任者であるスプレンド将軍だ。


 その本隊は現在、デニス隊が布陣している砦より北方にある、バルカ男爵国との国境砦にいる。

 こちらは攻め込んできたくせにセルテ軍本隊の姿を見るや否や、脱兎のごとく自国に引き返したバルカ国軍のさらなる反応待ち、と言ったところで動きはない。


 デニス正将はそんなスプレンド将軍を冷めた目で見て、それから反論を口にした。

「その将軍率いる本体はいつ動けるのですか?」

「む……」

 先にも述べた通り、バルカ国軍を待ち構えている以上は簡単に動くわけにもいかないゆえ、スプレンド卿も言葉に詰まった。


「トラピア軍が帰る場所を失ったなら、それを喧伝しつつ追い立てるのが良い。

 しかもそのトラピア軍は指揮官であった騎士府長サイが一〇〇の兵と共に離脱しているというではないですか。

 なら今攻めずいつ攻めるのか」

 ついエルシィは「いまでしょう!」と言いそうになって急いで口に手を当てた。


「なるほど……」

 代わりにそう頷きの言葉を発し、エルシィは再び残りのパンをちぎって口に入れた。

 そしてそのパンをかみ、飲み込むまでの間に考え、その出た結論を口にする。

「ではこうしましょう。

 本来デニス正将の率いる全軍を今の防衛隊に合流させ、その数で攻めてはいかがですか?

 サイ騎士長の離脱で減ったとはいえまだトラピア軍は二五〇います。

 今、砦にいるのは二〇〇なので数で負けますよね?」


 本来、セルテ領軍は全人員で一五〇〇いるわけだが、その内訳は将軍であるスプレンド、そして正将デニス、正将サイードで五〇〇ずつを指揮する形となっている。

 ただ今は防衛足止めに必要と思われる最低人員として対トラピア砦に二〇〇を派遣した形になっているわけだ。


 ここでデニス隊を元の定数に戻せば対峙中のトラピア軍を上回り、野戦を仕掛けるに安心できる数字となる。

 まぁこれはあくまで算数的なモノでしかないのだが。


「まだバルカ軍に動きがみられませんから本隊から分けるのは反対しません。

 すでにケガ人など後送した者もいますから五〇〇とはいきませんが、それでもデニス隊は少なく見積もっても四五〇くらいにはなるでしょう」


 スプレンド将軍のそうした消極的じみた賛成をもって、この意見は採択された。

 そして、この朝食会後に対バルカ砦ではデニス隊を分離して送る準備をし、さらにその後にエルシィがゲートを開き移動させるということとなった。


 こうして細かい決め事や質疑応答などを交わし、皆はやっと落ち着いて残りの食事を平らげにかかることができる。

「あの……よろしいでしょうか」

 その途中。

 デニス正将やホーテン卿と同じ虚空モニターにいたトラピア国からの出奔殿下であるフォテオスがおずおずとエルシィに発言を求めた。


「はい、どうぞ?

 この朝食会は自由な発言を推奨する場です。

 何か存念があるならどんどん言っちゃってください」

 エルシィはにこりと笑って発言を促した。


「では、お言葉に甘えまして……」

 と、フォテオスは改まって姿勢を正す。

「エルシィ様には命を救っていただいた御恩があり、それを返す前から更なるお願いをする恥知らずな行いをお許しください」

「はい?」

 あまりに謙った物言いにエルシィは面食らった。

 いったいどんな難題を持ってくる気なのか。


「サイ騎士長がいない今、トラピア軍の責任者は故トラピア子爵が四男であるハンノです。

 ですがこの者は本来武人ではありません。

 出来れば首級(みしるし)を取るのではなく、生け捕りにしていただければと」

「あー、フォテオスさんの弟さんですね」

「……そうです」


 思ったほど重い提案出なかったのでエルシィは軽く「おっけー」と言いそうになったが、現場責任者の意見も聞いておかないと、と思いそのまま無言でデニス正将の方を向いた。

 正将はため息を吐いてから小さく頷いた。

「いいのではないでしょうか。

 どちらにしろ誰かに戦争責任は取らせる必要があります。

 で、あれば故子爵の御曹司なら申し分ありません」


 そう答えつつ、デニスは言外に「お前もだぞ」という風にフォテオスを見た。

 フォテオスは苦笑い交じりで、こちらも言外に「私は出奔した身ですから」というようにに肩をすくめた。

年末年始おやすみをいただき、次の更新は1/6になります

よろしくお願いしますノシ

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― 新着の感想 ―
首都陥落して兵数でも負けてるとなると降伏呼びかけたら普通に通りそうな気もしますが一戦して徹底的に潰したほうが後々楽って判断ですかね?
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