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じょじたん~商社マン、異世界で姫になる~  作者: K島あるふ
第五章 戦争の季節

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480全部保留でよろ

 周辺四国の連合に攻められ防衛線を敷いていると思ったら、いつの間にかそのうちの一国であるトラピア子爵国が味方の手勢によって占領されていたでござる、の(まっき)


「エルシィ様には御恩ばかりいただき積み重なっておるからの!

 ここいらで一つくらいは返しておかねばと、得意分野で奮起してみたのじゃ」

「……侵略業務は得意分野じゃないでしょう」

「……まぁなんじゃ、船を襲うのも城を襲うのも、さほど変わらんかったのう?」


 やらかし本人その一であるヴィーク国元首であるレイティル幼女男爵がモニター向こうでカカカと笑うが、対してエルシィは頭痛を覚えた顔で眉間を揉んだ。


 そもそもエルシィが四国連合の侵略に対し防衛に徹しているのは、うっかり領土が広がらないようにという思惑があるからだ。

 スプレンド将軍を始めとした将星たちやホーテン卿率いる騎士たちに任せて攻め込めば、この戦争事態はそれこそあっと言う間に収束されていた可能性も高い。

 だがそれだとまた領土が広がり、エルシィのお仕事も比例的飛躍的に増えるのだ。


 すでにハイラス領、セルテ領を国盗りしてしまったことで表に出さない後悔があったエルシィとしては、今回の戦争こそは何としても現状維持で収めたかったのだ。

 一応、姫様一党(エル・クリーク)の内、最右翼のタカ派二巨頭であるスプレンド卿やホーテン卿辺りにはご理解いただけていたようだったが。


「というワケでじゃな。

 このとらぴあ子爵国はエルシィ様に献上するのじゃ。

 あとは好きに焼くなり煮るなり……」

「すとーっぷ! じゃすたもーめんと」

「じゃす?」

 さてどうしたモノか。

 そんなことを考えているうちに得意満面のレイティルは流れる川の様に話を進めていた。

 献上? この期に及んで子爵位も継承するの? わたくしが?

 いやいやいや。


 エルシィは天井を見上げて「ふぅ」と息をつき、落ち着いた気持ちで眼前の執務机を見た。

 積み重なる数々の書類。

 報告書、決裁書、提案書、嘆願書、親書。

 これでも各々司府に割り振って任せているのだが、いかんせん減る気配を見せない。

 他にも視察や会食などやらなきゃいけないことは山ほどある。


 アカン。これはアカン。

 エルシィはひとまずすべてを未来の自分に投げることに決めた。


「保留で」

「ん? なんじゃって?」

「ひとまずまだ他の国とも戦争は継続中ですから。

 トラピア国の扱いについては保留ということで、そのままレイティルとバレッタで穏便に治めておいてください」

「お、おう。任せておくのじゃ?」

「わかったわ! アタシに任せなさい!」

 言葉の後に無言で「お願いしますホントに頼んます」と付け加える勢いでそうまくしたてたところで、気圧されたレイティルといつも通り返事の良いバレッタが了解をしてくれた。

 それを良いことにエルシィは「ではあと頼みます」と通信を終えて虚空モニターを閉じた。


 執務室には気の毒そうにエルシィを見つめる目と、「さすが我が主君」と感心する目とに分かれたという。


 それはそうとして、この事実をまさにトラピア国軍と対峙しているデニス正将たちにどう伝えよう。

 ひいては当のトラピア軍にどう伝えよう。

 頭の痛いことはまだまだ続くのだった。



「というわけで、トラピア子爵国の領都はレイティル男爵が押さえました」

 一人でいろいろ考えるのもむーりぃ、となって来たので、エルシィは事実を端的にそのままデニス正将たちに伝えることにした。

 後は現場に丸投げである。


 聞いたデニス正将は目を点にして唖然とし、ホーテン卿と故トラピア子爵の長子であるフォテオス殿下はもう笑いが止まらないという様子で腰を折ってお腹を抱えた。


「出奔する羽目になった故国がまさかこんなに早く転がり落ちるとは。

 いえ、エルシィ様の旗下に加わるというなら、あの俗物(サイ騎士長)にいいようにされるよりはよっぽど良いでしょう」

 笑いが収まったフォテオスは眼帯に押さえられていない方の目尻の涙を上品にハンカチで拭いながらそう言った。


「一応聞きますが、トラピア子爵の位に就く気はありませんか?」

「いえ、もう私は結構です」

 エルシィはジトっとした目で彼を見て、それからそう訊ねるが、その返答は実に丁寧で端的でありながら、強い拒絶であった。。


「姫様、子爵候補と言うならあそこにもいますぞ?

 話を持ち掛けてみてはいかがですかな?」

 もう面白がってるだけ、という態で言うのはホーテン卿だ。

 彼の指さす先は砦から出た向こうの原っぱに仮陣を敷くトラピア国軍だ。


 つまり、そこにいるのはフォテオスの弟であり、故トラピア子爵の四男、ハンノである。

 現状、レイティル幼女男爵がやらかさなければ、最もトラピア子爵の位に近かった者だ。


「まぁそれが一番穏便ですよね」

 エルシィは一応の落としどころを見つけて少しだけホッとした。

「ですが……」

 と、そこに水を差すのはデニス正将である。


「対トラピア戦の着地点についてはそれでいいとしても、我らの領土を侵した贖罪はしてもらわねばなりません。

 友軍がとった国をなにもせずハイ返します、では舐められます。

 どうしますか?

 一度殲滅の憂き目を見せてやりましょうか?」

 いつになく好戦的なデニス正将だが、その顔は不穏な笑いを浮かべているのでこれは本気なのか冗談なのか。


 ともかくエルシィは「殲滅は却下です」と笑顔で返した。

続きは金曜日に( ˘ω˘ )

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― 新着の感想 ―
まさかの独断専行!? しかも良かれと思っ…… 確かに領土が増えることはいいことではあるかもしれませんが、 比例してお仕事量が激増する訳で、レイティル幼女男爵は実務をおつきに任せてるから 実感に乏しかっ…
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