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じょじたん~商社マン、異世界で姫になる~  作者: K島あるふ
第五章 戦争の季節

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479さすエル案件ではない

 トラピア子爵国領都は瞬く間にヴィーク男爵国に占領され、時を置かず領主城に「髑髏と交差し(クロス)2本の大腿骨(ボーン)」が翻った。

 領都民はもとより防衛に残された警士たちに被害がほぼないというのは、防衛警士隊を指揮する立場にあった警士府長代理ヴィッキー隊尉が早々に白旗を上げたという英断あればこそだろう。


「騎士長! サイ閣下!」

 その「髑髏と交差し(クロス)2本の大腿骨(ボーン)」を領と近くの丘の上からしばし呆然と眺めていたトラピア子爵国騎士府長サイは、副官役をしている若い士官の声で我に返った。

「はっ! ど、どうした?」

「どうしたではありません。これは不測の事態です。指示を!」


 不測の事態。それは確かにそうだ。

 そもそも彼らとしては、このまま何食わぬ顔で領都へ帰還し、領主城に入り込み、その上で疾く子爵の印璽を奪うという作戦だった。

 もし領主城に入り込めそうもない事情があれば、後続の歩兵たちを待ち、その兵力をもって奪取する。

 ここまでが想定の範囲であった。


 まさかその母国領都に帰還したら見慣れぬ他国の旗が翻っていようとは、誰一人として想像していなかったことである。

 で、あれば、指揮官に指示を仰ぐのも当然だ。


「むむむ……」

 しかし、想定外というのであればサイの想定でもこんなことは埒外だ。

 ここまで数分、頭内が真っ白になって呆然としてしまうのも仕方ない。

 だが、自分の後ろには十数の騎士と、さらには後続の歩兵たちがいる。

 なにも指示をしないわけにもいかない。


「ひとまず次の方針を落ち着いて決める為にもここを離れよう。

 ここにいては相手にいつ見つかるかもわからん」

 自分が見ているということは、相手からも見えるということだ。

 であれば、彼の懸念は若い士官にも容易に理解できた。

「承知しました。後続にも伝令を出しましょう。

 陣場は普段警士たちが訓練に使っている場所が良いかと」

「よし、それで行こう」

 そうして騎士長サイ率いる一団は、その領都を見渡せる丘から退避した。



 同夕方。セルテ領主城でいつも通りの国政に関する様々な雑務をこなしていたエルシィの元に、サイと愉快な派閥兵団に付いて回り情報収集を行っていたねこ耳忍者より「報告がある」との連絡を受けた。

 エルシィはさっそく執務の手を止め、ねこ耳忍者とのホットラインとなる虚空モニターの前に座った。


「ニガナさん、サイ騎士長が行動を始めたのですか?」

 エルシィは前置きもなく早速とそう訊ねた。

 そも、すでに朝、サイ氏の目的については探り終えていて、後は彼が実行し、上手くやるのか、そう言う部分を静観するつもりではあった。

 とはいえ、静観するにしても想定外のことをされて後手に回ってはいけない、という思いから情報だけは収集させていたのだ。


 つまりサイがトラピア領都でなんかしでかす、というのはすでに想定の範囲内なのである。

 いわばこれは定時連絡のようなものだろう。

 エルシィはそう考えていた。


「トラピア子爵国のお城が占領されたにゃ」

 ゆえに、当地の担当ねこ耳忍者であるニガナの言葉には特に動じることはなかった。

 なるほど、上手くやったか。くらいのモノである。


 ところが、次に続いた言葉で首をかしげる羽目になる。

「騎士長の人は配下の騎士を連れて領都に入ることを諦めて一時撤退したにゃ」

「ん?」


 そして最後を結ぶ言葉で目玉が飛び出すかというほど驚いた。

「領主城には「髑髏と交差し(クロス)2本の大腿骨(ボーン)」が翻っているにゃ!

 さすがエルシィ様にゃ。やることがえげつなくて最高にゃ!」

「ええええ!?」


 まったく想定外である。

 「髑髏と交差し(クロス)2本の大腿骨(ボーン)」と言えば半年ほど前エルシィに臣従を誓い配下となった、北西の果ての島国、ヴィーク国の男爵旗である。

 なぜそれが、言ってみればまったく反対側である南東の田舎国家に翻っているのか。


「ちょちょちょちょっと待ってください?」

 エルシィは画面に向かって両手をせわしなく振って報告をそこで止めさせ、急ぎもう一つ虚空モニターを開いて地図を出した。


 虚空モニターに映される地図はエルシィが知り得た大陸の大まかな輪郭。

 自国扱いとなった占領地と本貫地を青、そして確定的に敵国となった既知の国々を赤として表示されていた。

 その中で、つい先日見た時は明らかに赤色国(レッドチーム)であったトラピア子爵国が、いつの間に青く染められているではないか。


「ほう……まさか我々にも秘密で敵国の領都を突く作戦を展開していたとは。

 さすがエルシィ様。感服でございます」

 エルシィの後ろからともにモニターを覗き込んでいた宰相ライネリオが、とても楽しそうに、そして感心した風に何度も頷いた。


 さらにその横では近衛として就いていたアベルが半眼でその少年宰相を見据える。

「いや、これ絶対エルシィ知らなかっただろ」

 だがその言葉は残念ながらかの宰相閣下には届かなかったようで、ライネリオは終始楽しそうな顔のままだった。


 エルシィは混乱した頭の中で「髑髏と交差し(クロス)2本の大腿骨(ボーン)」の持ち主である幼女男爵と、一緒にいると思われる神孫の姉の方を思い浮かべる。

 ともかく本人たちに話を聞かなくては。

 そう思い、またもう一枚、虚空モニターを開いた。

 今度はねこ耳忍者と話すのに使っているのと同じ、直接家臣登録した者と会話できるホットラインモニターだ。

「もしもし、バレッタ? もしくはレイティル? 今どこにいますか?」


 答えたのはいつもニコニコ太陽のような笑顔を振りまくバレッタであった。

「あ、お姫ちゃん? アタシ今、トラピア城にいるわ!」


 なんだか某怪談系都市伝説を思い出すような返答に、エルシィは少しばかり頭痛を覚えた。

続きは来週の火曜に

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― 新着の感想 ―
幼女男爵と神孫の姉の方は完全な独断専行で一国を占領しちゃってたんですね?w 絶妙なタイミングでほぼ犠牲者も出さずに、占領したのは大手柄ですが、何の報連相もなく攻め込むのはさすがにちょっとまずいと思いま…
この子達なんでこんなとこに居るんです??ってなって読み返したら450話で何やら悪巧みしてましたねそういえば 勝手に軍動かしたのはお叱り案件ですけど戦果としては大手柄ですからどうしたものか…
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