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じょじたん~商社マン、異世界で姫になる~  作者: K島あるふ
第五章 戦争の季節

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455/493

455対トラピア国境砦にて

 トラピア子爵国からの侵攻に対する為、デニス正将は元トラピア太子であるフォテオスを伴って国境砦へと移動した。

 その砦の会議室にて。


「……なるほど、つまりトラピア国軍はあまりやる気がないと、そうおっしゃるのですね?」

「正確に言えば士気が高いのは騎士府長のサイと、その賛同者たちであって、それ以外はさほどではないと思われます」

 今回のアドバイザーであるフォテオスの言にデニスは頷きながら「さてどこまで信じていいのやら」と考え込む。


 フォテオス氏曰く、今回の四国同盟に対して前のめりに賛成だったのはサイ騎士長とフォテオスの弟殿下だったらしい。

 ただ忍衆の調べによればこの弟、つまり亡くなった子爵の次男殿下はすでに三男殿下との争いで亡くなっており、今回三五〇の兵を率いているのは先に名の出たサイ騎士長と、現太子となる四男殿下のハンノ氏だという。

 このハンノ氏はそもそもフォテオス氏と同様に、今回の反戦派であり四国同盟には反対の立場だったようだ。


「ふむ。一度当たってみて、様子を見たいところですね」

「であれば野戦だな。さっさと出陣を指示すればよい」

「ホーテン騎士長……いや、確かにそうですけど」

 と、そこに口を挟んできたのは、デニス正将率いる二〇〇の兵と共について来た騎士の長、鬼騎士との異名高いホーテン卿だ。


 彼は今回もスプレンド卿の軍の方についていこうとしたが、フォテオス氏の「是非に」という希望と、「お前は勝手なことするからこっちくんな」というスプレンド卿の物言いによって、対トラピア戦に参加することとなった。


「そう言えばホーテン騎士長」

「ホーテンで良いぞ。俺もデニスと呼ぶしな」

「そうですか。ではホーテン卿。

 つかぬことをお聞きしますが、シモンは連れてこなかったので?」


 シモンは旧セルテ侯爵国において将軍府の一員だったが、新体制においては騎士府にてホーテン卿に鍛え直されているところであった。

 先のデーン国戦でもホーテン卿と共にいたので今回も一緒に来ているものとばかり思っていた。

 が、どうにもその姿が見当たらない。

 いないならいないで別に構わないが、デニスにしてみれば元同僚でもあるので少し気にかけている面もあった。


「む、あやつか」

 ホーテン卿は問われ、少し厳しい顔で目を瞑った。

 瞑り、回想と共に彼の行方を語る。



 ホーテン卿たち騎士隊が、デーン国軍に対する包囲網の出口に布陣する少し前の会話だ。

「おいシモン。貴様なぜここにいる」

「なぜとは!? こんな(まつり)、参加せずにいられるかよ」

「そう言うことではない。

 貴様には巡回騎士の方を任せたであろうが」

「あー……」


 巡回騎士。それは引退前のあがり職でしかなかったセルテ騎士たちに課せられた新たな仕事である。

 すなわち、セルテ領内の地方を回り、各地区の警士たちを指導したり、直接治安維持に参加するなどを任務とする。


 ホーテン卿も騎士長としてその仕事に従事していたが、この度の会戦に際し、その仕事をこのシモン氏に任せてやってきていたのだ。


 その任せたはずのシモンがここにいるのがそもそもオカシイ。


 だが当のシモンは悪びれもせずいう。

「いや? いやいや? 偶々この辺りを巡回していたからな?

 ジジィの介護の為に来てやったのだ?」

「俺をジジィ呼ばわりするのは貴様くらいだぞ。

 まぁよい、来てしまったからには働いてもらうからな」

「へへ、そう来なくっちゃ」



 と、そう言う具合であった。

「なるほど。偶々あそこにいた、というのであれば、さすがに今回はこちらにいないのが道理ですね」

「なんだ? 必要なら姫様に頼んで連れてくるが」

「……いえ、結構です」

「そうか」

 デニスは笑って目を逸らした。

 そういう仕儀なので、デニス正将は二〇〇の兵を伴い、砦より出陣して展開することにした。

 トラピア国軍が進軍している街道がよく見える、地盤のしっかりした平原に、である。


 この平原はそこそこの規模の会戦にちょうど良い感じに踏み慣らされているが、当然自然にできた広場ではない。

 これは国境砦が名前の通り軍事施設だった歴史において、砦の兵たちが訓練するための場所として整備されたいわば人工のグラウンドである。


 規模としては、ゆうに二〇〇〇以上の兵が駆けまわるくらいはあるというから、かなり広い。


 ここから街道を見張り、トラピア兵が進軍してくるのが見えたら襲い掛かる。という寸法だ。


 もちろんこちらから丸見えということはあちらからも丸見えだろうから、奇襲ということにはならない。

 ならないが、騎兵歩兵が十全に駆け回る戦は出来ることだろう。


「どうれ、俺もあそこに行くとするかな」

 整然と砦から出立していく兵たちを見て、ホーテン卿も楽しそうな顔でそんなことを言う。

 彼からすればピクニックの様なモノなのかもしれない。


 ところがその気分には水が差される。

 水を注ぐのはフォテオス氏、その人であった。

「いえ、ホーテン卿はまず、ここから緒戦の様子を私と一緒に見ていただきたい」

「む、そうか。……まぁ真打は最後に登場するもんだし、よかろう」

 ホーテン卿は少しつまらなそうな顔で、渋々ながらそう返事をした。

続きは金曜に

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