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おじさんという生き物が異世界に転生し若返って無双するキモい話  作者: 埜上 純
第二章 冒険者編

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第76話 ミズトとニック

「…………え!?」

 ミズトは久しぶりに心臓の鼓動が早くなっていると自覚した。


「いいか、てめえ! この町で二組しかいねえC級パーティのメンバーで、正義感が強く皆に慕われ、この町の英雄と言っていいニックが、てめえのせいで腕を失って、冒険者を辞めるかもしれねえんだ!!」


「そんな……」


 ミズトは爽やか好青年のニックが苦手ではあったが、嫌いではなかった。

 とくに、一緒に孤児院へ行くようになってからは、彼がただ純粋でまっすぐなだけの人間であり、この町の人々にとって、そしてあの孤児院にとって、とても大事な人物であると分かってからは、少し応援しているぐらいだ。


 そんな彼が、自分のせいで冒険者を辞めるかもしれないと聞いて、さすがに心中穏やかではなかった。


「どうしてくれるんだ、てめえ! あいつがどんな思いで冒険者をやってんのか……!」

 ダンカンは少し涙ぐんでいるように見えた。


「申し訳ございません……」


「謝っても、許されねえって……言ってんだよ!」

 ダンカンは抑えきれずにミズトに殴りかかった。


 ミズトならレベル50台の格闘家が本気で殴ってきても簡単に避けられる。

 しかし、今は避ける気が起きなかった。ミズトは、このまま殴られるつもりで目をつむった。


「待って、ダンカン! そこまでだよ!」


 ミズトに当たる直前、ダンカンは声を聞いて拳を止めた。

「ニック……!?」


 いつの間にか集まっていた群衆を割って現れたのは、ニックだった。

 ダンカンが話していた通り、右腕を失っているようだ。


「いいんだ、ダンカン。拳を収めてくれ――――。やあ、ミズト君。久しぶり、ってほどでもないか。この前孤児院に行ったばかりだしね」


「ニックさん……その腕……」


「ああ、これね。ちょっとミスっちゃってさ、僕としたことが。ダンカンが何言ったか分からないけど、気にしないでね」


「何言ってんだ、ニック!」


「いいんだよ、ダンカン!」

 ニックは片方しかない手の平をダンカンに向けた。


「その腕……私のせいで……?」


「ん~、たしかにキミが僕らの近くを通った後、大量のモンスターを同時に相手する場面にはなったけど、対処できなかったのは自分たちのせいだ。ミズト君のせいではないよ。それに、いつも落ち着いていて感情を表に出さないキミが、それほど動揺してるんだ。わざとじゃないってことでしょ?」

 ニックは左手でミズトの肩に手を置いた。


 ミズトの記憶にあるニックは、いつも鎧を装備しているか、町中でも鎧の中に着込む鎖かたびらは装備していた。

 そして脇には必ず戦士として大事な剣を携えていた。


 ところが今は、その辺を歩く町民と同じような布の服を着ていて、剣は装備していない。

 右腕が通っていない垂れ下がった服の袖が、強い悲壮感をミズトに与えていた。


「もちろん、故意でこのようなことは……」


「ほら! だからキミが気に病むことはないよ。僕らは冒険者だ。事故でこうなることは覚悟の上だしね! さあ、ダンカン、帰ろうか」


「ああ、お前がそう言うなら……」

 ダンカンからは悔しさが滲み出ている。


 去っていくニック達を、ミズトは声を掛けることもできずに黙って見送った。

 何て言えばいいのか分からなかったのだ。


(そりゃあ冒険者なら、そういうこともあるだろうけど……)


【ニックさんは未来ある若者なのに、こんなことになって落ち込んでいることでしょう】


(…………)


【ニックさんの寄付で成り立っている孤児院も、これでは立ちいかなくなるでしょう】


(…………)


【それでもミズトさんはいつも通り『他人が何しようがどうなろうが知ったことではない』ということでよろしいでしょうか?】


(………………そんなわけないだろ)


【では、さすがにニックさんに同情し、罪悪感にさいなまれておられるということでよろしいでしょうか?】


(エデンさん、お前は何が言いたいんだ……。いいか、俺は別に善人ってわけじゃないが、悪人ってつもりもないんだぞ? ニックの言う通り冒険者が事故で腕を失うようなことは、この世界では当たり前のことで俺が気にするようなことじゃない。けどな、それが俺のせいなら、俺だって悪いことしたなって感じるんだよ!)


【つまりミズトさんも責任を感じられているのですね】


(まあ……そうなるな……)


【では、どうされるのでしょうか?】


(どうって…………!? くそ、なんかエデンさんのこと嫌いになりそうだ……。なあ、エデンさん、高品質の上級ポーションなら腕を再生できるようなこと言ってたよな?)


【はい、そのとおりです。なお、今のミズトさんなら材料さえ揃えば、五十%の確率で高品質の上級ポーションを調合可能です】


(上級ポーションの調合に必要な材料はなんだ?)


【『エーテルの雫』『生命の葉』『賢者の錬金釜』になります】


(『エーテルの雫』はストックが溜まってるし、『生命の葉』は『ギール地下遺跡』の地下二十階あたりでよく見かけたな……。『賢者の錬金釜』ってのは何だ?)


【それは素材ではなく、調合時に使用する魔法具になります。なお、魔法具は店舗やギルドで購入することができ、また、ギルドから入手方法を購入して自分で見つけることも可能です】


(なるほど。買えるような値段なら買えばいいが、高額な場合でも自分で探す手段があるってことか)

 ミズトは、自分の行動のケジメは自分でつけると決心していた。

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― 新着の感想 ―
そもそも多数のモンスターをトレインするような状況になるのがよく分からないです 主人公の移動速度的に遭遇してもすぐ引き離すことになるんじゃないです?
いやいや、押し付けて何が悪いんだって言わなきゃ、そう思ってたみたいだし
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