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第七話:王都地下迷宮④

「情報によると、この真下に横穴があるみたい。そこを入って少し進んだ先に、第二十階層へ降りる階段があるとのことよ」



 川の水深が深いところまで近づき水面から顔を覗かせているサキが、彼女の後ろで手を引かれている私に声をかける。


 周りではイズ達が水底を覗き込み、横穴の場所を探していた。



「<水中呼吸(アクアリング)>」



 サキが魔術を発動させると、私達の周囲を温かな光の輪が覆う。

 やがて光が収束すると、先ほどまで襲っていた息苦しさがなくなり、地上と同じように呼吸ができるようになっていた。



「水中でも呼吸ができるようになる補助魔術よ。効果時間は30分しかないから、できるだけ急いでいくわ。しっかりつかまってて」


「ちょっと待ちたまえ、まだ心の準備が────」



 サキがそう言うと、私は返事をする前に彼女に手を引かれ、水の中へと引きずり込まれる。

 唐突な潜水に驚いた私は、モゴモゴと烏面のくちばしを開かせながらも、彼女の腰にしがみつく。


 後ろではイズ達が一定の距離を保ちながら付いてきていた。



「すごいですねこの魔術! 水の中でも喋れます!」


「こんなものがなくとも、私の肺活量なら半日は余裕で水中にいられますけどね」



 そんな楽しげな声が後ろから聞こえ、サキが彼女達の方を振り向き声をかける。



「しっかりついて来てね。あんましゃべりすぎると魔術の効果時間が減っていくから、できるだけ静かに行きましょう」



 そう言って彼女は慣れた動きで、川の奥深くへと潜っていく。

 私も彼女に掴まりながら周囲を見渡し、横穴らしく洞窟を探していた。



「あれじゃないかね?」



 私が見ている先を、サキが目を細め注意深く観察する。

 水草で隠れているが、岩肌の隙間に人が一人通れそうな横穴があった。

 サキは私を見て一つ頷き、横穴の方に指を差しながらイズ達に声をかける。



「あそこが例の入り口で間違いないわ。私が先頭を行くから、後をついて来て」



 サキの言葉に頷いたイズ達が、彼女の少し後ろに続いて泳いでいく。

 私も彼女にしっかり掴まり、振り落とされないよう注意する。


 サキ達が一列になり、周りに気を配りながらゆっくりと横穴の中を泳いでいく。


 しばらく泳ぎ続けると、やがて奥の方に天井から差し込む光が見えてきた。



「……ぷはぁっ。ここが入り口ね。みんなちゃんといる?」



 水面から顔を覗かせたサキが、天井からつららのように伸びている鍾乳石を見渡しながら、私達に声をかける。



「はい! 問題ないです! 師匠がサキさんにくっついてデレデレしていること以外は!」



 後ろで水面から顔を覗かせているイズが、サキにしがみついている私の方を見て元気な声で答える。


 その言葉を聞いたサキが、サッと私を引き剥がし、顔を少し赤らめながら言う。



「……助けてあげたっていうのに、変なこと考えてるんじゃないわよ」

 

「いや、ゴボッ……私は別にそんなこと……ゴボボッ」


「師匠!?」



 溺れそうになっている私を慌ててイズが支え、陸地まで運んでいく。


 既に洞窟の上では、防水性の鞄からタオルを取り出し身体を拭いているアメラが立っていた。

 アメラはイズに助けられながら陸へと上がってきた私に気づき、鼻で笑いながら声をかけてくる。



「はっ。無様ですね悪魔(ごしゅじんさま)。そんな子供に助けられるなんて。恥を知りなさい、恥を」


「……子供に任せて、自分だけ呑気に身体を拭いている君にだけは言われたくはないがね、ゴホッ」



 咳き込んでいる私の背中を、イズが心配そうに撫でてくれる。

 そんなイズの優しさを肌身で感じながら、私は濡れ(からす)のようにビショビショになった黒のロングコートを魔術で乾かしていく。

 

 ついでにイズの髪も綺麗に乾かしてあげた後に、私はアメラの方を見て言う。



「君は自分で乾かしたまえ」


「……私がそのような細かな魔術をできないと知ってて言ってますよね」

 

 

 アメラの鋭い視線をさらりと流しながら、私は宝物庫からイズの衣服を取り出し、タオルと一緒に彼女へ手渡す。


 その様子を見ていたサキがこちらに近づき、羨ましげに口を開く。



「収納魔術が使えるなんて珍しい。便利そうで羨ましいわ。流石に私の服を預けるわけにはいかないけど……。あ、あと私の髪もその妙な魔術で乾かしてくれない?」



 そう言って身体を拭きながら背を向けるサキに近づき、私は魔術で彼女の髪を乾かしていく。

 

 ……君達、私のことをドライヤーか何かだと勘違いしていないか?

 まぁ私自身ドライヤーというものを知識としてしか知らないから、何とも言えないが……。

 


「はぁ……さっぱりした。ありがと。それじゃ、私達は着替えるから、また向こうに行っててくれる?」



 身も蓋もないサキの言葉を受け、私は小さく肩をすくめながら鍾乳洞の奥へと歩いていった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 鍾乳洞の奥には、下の階層へと続く階段が不自然な形で広がっていた。

 まるでいきなりこの場所と繋がったかのような違和感を覚える配置の仕方だ。


 この階層にくるまでに通ったものと同じ形式の階段なので、下の階層へ続くものであることには間違いないだろう。



「ふむ……。第二十階層か……」



 階段の先を魔眼で覗くと、確かに遺跡のようなものが広がっていた。

 所々の壁に蔦が覆い被さり、古めかしい雰囲気を感じさせる広大な遺跡だ。

 私が探った限りでは、特に危険な魔物などはいなさそうだが……。


 何故だろうか。この遺跡からは嫌な予感がする。

 昔どこかでこんな遺跡を見たことがあったような気がした。


 そう、確かあれはかつて神々がいたとされる────



「待たせたわね。そんなところで難しい顔をしてどうしたの?」


 

 考え事をしていると、いつの間にかサキ達が着替え終わって私の後ろで立っていた。


 ……ふむ。考えても仕方がない。

 行ってみれば何か思い出すこともあるかもしれない。

 

 訝しげに私の顔を見つめる彼女達に背を向け、私は肩をすくめながら答える。



「いや、何でもないよ。では、行くとしようか」






 そう言って私達は、新しく発見された未知のエリア───もう一つの第二十階層へと足を踏み入れていった。


お読みいただきありがとうございます。

一家に一台欲しい強欲の悪魔────


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