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Prologue:異世界の旅人

 私はこの世界が嫌いだ。


 能力(スキル)というものが存在し、その強さによって人生の序列が決まる。

 能力(スキル)を持たない人がどれだけ努力したところで、強力な能力(スキル)を持った人間には勝てない。


 私がこの世界に召喚されてからどれだけの月日が経っただろうか。

 旅をする中で多くの能力(スキル)持ちに出会ったが、私は誰一人として好きにはなれなかった。

 きっとこれから行く王都でも、誰も好きになることはできないだろう。


 旅の途中出会った同郷の人から聞いた話では、異世界から召喚された人間には、その際に何かしらの能力(スキル)が付与されるそうだ。

 この世界には能力(スキル)を持たない人だって多くいる中、それは優遇された特典だと言えるだろう。



 でも、私には能力(スキル)が与えられなかった。


 何の力も持たない無能力者だった。

 この世界で私は、誰からも必要とされなかった。

 


 日本にいた頃の私は、勤勉だったと思う。

 周りにいた誰よりも努力したし、結果誰よりも優秀だった。

 常に私は優秀であろうと努力し続けてきた。

 それは厳しい家庭環境のせいだったかもしれないし、天才だった妹に嫉妬していたからかもしれない。

 

 でも、それでも努力をすれば結果はついてきた。

 努力さえ続ければ一番になれる自信があった。

 それだけが、自分のことを好きになれる唯一の長所だった。




 そう。

 この世界に、来るまでは。

 



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 王都シュテルヴェルト。


 この世界で最も歴史の古いとされる城塞都市だ。

 また紛争地帯と国境を交えた、人類の防衛線とも言えるシュテルブルク王国の首都としても名高い。

 外敵の侵入を決して許さないとでも主張するかのような堅固な城壁が、都市の周りに高くそびえ立っている。

 そして都市の中央では、城壁に勝るとも劣らない高さの巨大な城が遠目からでも確認できた。


 600年にも渡る魔族との戦争で人類を守り続けてきたことが、決して嘘ではないと分かる堅強な都市である。

 

 そんな都市内にある城下町では、人々の喧騒で活気に溢れており、多くの行商達が道に露店を開いている。

 道行く人々が露店に立ち寄っては、商人と賑やかに談笑して何かを買っていく。

 通りを走り回る子供が親に叱られている、微笑ましい姿も見えた。

 実に平和な街である。

 これも長年魔族の侵略を許さなかった王国の歴史が、人々の支えとなっているからだろう。

 



 そんな平和な城下町では、現在仮面をつけた怪しげな男が衛兵に職務質問を受けている最中だった。



「では、職業はなし……と」


「勝手に無職と決めつけるのはやめたまえ。私は旅の行商でね。この街で新たに店を開こうと訪ねてきたのだよ」



 そう言って私はイズが背負っている鞄の中からいくつかポーションを取り出して衛兵に見せる。

 受け取った衛兵は訝しげな目でそれを見つめた後、納得したように私に返してくる。



「うむ……。確かに回復用のポーションだ。ここまで上質なのは珍しいな。迷宮産か?」


「まぁそんなところだ。とある地下迷宮の戦利品でね。では、もう行っていいかね? 私の店に立ち寄ることがあったら是非買っていってくれたまえ」


「ああ、引き止めて悪かったな。お嬢ちゃんも、パパからはぐれないようにな」



 そう言って私はそそくさとその場から立ち去ると、後ろからついて来たイズがニヤニヤした顔で声をかける。



「師匠、聞きましたか? パパですって! パパ! 私達って周りからそういう目で見られてるんですかね? 私もパパって呼んだ方がいいですか?」



 私は隣から嬉々とした表情で聞いてくるイズの頭を杖でコツンと叩き、顔を顰めながら言う。



「私は独り身だ。それに弟子設定はどこいったんだ」


「設定じゃないです! 私は弟子で娘で恋人の、可愛いらしい小悪魔です! ね、パパ」


「パパと言うのだけは本気でやめなさい」



 というか属性盛りすぎだ。

 それだけ盛られたら食いしん坊のブブ君でさえ胸焼けしてしまうだろう。

 あと何度も言うが私は独り身だ。


 えー、と言いながら後ろでぼやいているイズを無視して私はツカツカと通りを歩き出す。


 イズが慌てて駆け寄ってくると、ふと疑問に思った様子で私に声をかける。



「そういえば師匠。師匠は何で頑なに仮面を外さないんですか? 滅茶苦茶怪しまれてますけど……」



 というかどうなってるんですその仮面? と不思議そうな顔でイズが私の顔を覗いてくる。


 その言葉に露店を眺めながら歩いていた私は、彼女の方を振り向いて肩をすくめ、おどけた様子で答える。



「この仮面が私のアイデンティティだからだよ。仮面のない私など、ただのダンディなナイスガイじゃないか」


「いやダンディなナイスガイかは知りませんけど……。でもまた職務質問されちゃいますよ?」



 イズの言葉も最もだ。

 だが私もアイデンティティたるこの仮面を外すわけにはいかない。

 幻術で人の顔と錯覚させるのもアウトだ。

 そもそも私がこの仮面を隠したくない。

 だってこんなにもかっこいいんだもん。


 仮面を外すくらいなら人の道を外して、王都から怪しむ人々を消し去ってしまった方がいい。



「何か物騒なこと考えてません?」


「……仮面は呪われて外せなくなったとでもしよう。となると、やはり行商人は無理があるな」



 私の言葉に唇に指を当てて考えこむように唸るイズ。

 私は考えこむイズを横目で見ながら、教え子の答えを待つ教師のように彼女の言葉を静かに待つ。


 やがてパッと顔を上げたイズが、名案が浮かんだとばかりに声を上げる。



「この街には確かセシルさん達もいらっしゃいますよね? だったら同じ冒険者になるっていうのはどうでしょう!」


 

 イズの言葉を聞いた私は、くつくつと怪しげに笑い烏面を歪ませて答える。



「その通りだとも。既にアメラ君に、冒険者組合の場所を調べさせている。彼女が戻り次第、向かうとしよう」






 悪魔と小さな半悪魔の楽しげな笑い声が、王都の街中の喧騒に溶け込まれていった。

お読みいただきありがとうございます。

第二章 開始となります。


『デーモンロード 〜強欲の悪魔、異世界へ征く〜』について少しでも


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