0.6.2.0 ポトフちゃんと雨
・0.6.1.2ポトフちゃんと焼き肉、及び丸パンログに、タマネギで涙が出る下りとその反応を追加
・料理名を一部変更(トンカツ→ブタカツ 牛丼→ウシ丼)
今日はお休み。だけど、生憎の雨模様。というか、ユービキアスに来てから初めての雨だね。
「おはよう、ポトフ。」
「あ、おはようございます。」
ポツポツとまばらだった小雨が、激しい本降りになってきた頃、うさちゃんがログインしてきました。
「今日、雨すごいですよ。」
「ああ、天候の調整するって話が出てたから、それだな。今日1日かなり荒れると思うぞ。」
今は雨オンリーだけど、そのうち雷やら雪やらも降るかも、とのこと。
そんなに天気が荒れるなら、予定通り今日は家の中でのんびりすごしましょ。
「もちさん達は大丈夫ですかね。」
「雨が苦手なら、雨宿りができる場所にいるだろうから、大丈夫だと思うぞ。」
そう心配しながら1階へ降りると……もちさんがぷぴぷぴ鼻を鳴らしながら床に寝っ転がっている。ああ、雨宿りができる場所ね……
ちなみに、ぐうちゃんはうさちゃんの実家にある洞窟でじっとしてるようです。私の農園みたいに、うさちゃんは鉱山を所有しているのだ。
ちゃぶ台を端に寄せて、絨毯へ寝っ転がり、ふわふわの海に揺蕩う。はあ〜きんもちいい……
うさちゃんはスノーエンジェルを作るみたいに、手足をわさわさ動かしている。ふふふ、私もそれやった。
ゆるゆるとだらけきった雰囲気の中、「そうだ、」とのっそりうさちゃんが体を起こす。それにあわせて、私も起き上がって座る。
「ポトフにプレゼントがあるんだ。」
いそいそとインベントリから取り出したのは、くすんだピンクの革っぽい素材を、金具で継ぎ合わせた防具のセット。……この革……ブタモモだよね?
今使っている木の防具、初心者用だもんね。流石に30レベル超えてるし、物足りないにも程があるところだったので助かります。
「ありがとうございます。助かります。」
「あとは、これだな。他のスタッフ達がポトフにって、色々と素材をくれたから、それで作ったんだ。」
「それはそれは……お礼を伝えておいてください。」
ありがたいね〜。続いて取り出したのは、ネックレス、腕輪、指輪……黒を基調としたアクセサリー類。金のラインが燦然と輝いている。
「こっちはまだ未完成でな、この宝石の中から、つけたい能力がついたものを選んでくれ。」
そう言って取り出したのは、仕切りのついたケースに詰められた、ビーズのように小さな宝石達。
トパーズは幸運、ルビーは筋力……と、それぞれ違った効果があるようだ。
それなら、私は魔法を使うから魔力と……あ、素早さ。パーティメンバーと揃えたほうが戦いやすいんだったかな。となると……うさちゃんの装備事情はどうなのかな?
うーん、ここらでパーティの方向性を話し合いますか。
「うさちゃんがタンク兼アタッカーなら、私は後衛でヒーラーとかやったほうがいいですかね。」
「そうだな……いや、ぴよちゃんが回復できるし、ぼんちゃんも回復出来るから、体力の管理はそこまで気を使わなくてもいいかもしれない。」
ぼんちゃん達ケセランパサランと同じくらいレアだという、フェニックスのぴよちゃん。1日1回までの上限があるが、味方を蘇生できるし、かなり強力な回復スキルを持っているそう。なつき度が上がれば、そこそこの頻度で使ってくれるみたい。それならギルドで吟味して決めよっと。
で、アクセサリーの話に戻ります。指輪に宝石をつけてもらいましょう。
「よし、これとこれだな…………ほら出来た。」
ピンセットを使い、指輪の内側に宝石が埋め込まれる。
うさちゃんの手のひらに乗せられた完成品の指輪を見て、ちょっとしたイタズラ心が湧いてきた。
「うさちゃんの好きな指にはめてくれませんか。」
手を幽霊のように体の前に掲げ、そう告げると、じっと真剣な眼差しで、穴が開きそうなほどに見つめられる。さあ、どうする……?
おもむろに、私の左手を壊れ物を扱うようにすくいとり、薬指に指輪をそうっとすべらせる。は、はわわ……左手の薬指……
「ど、どうしてこの指に?」
「おじいちゃん達も、父さん達も、左手の薬指にはめてるんだ……駄目だったか?」
「だめじゃないです。」
だめじゃないです……そう伝えると、満足気に微笑むうさちゃんが眩しい……
目を細めていると、うさちゃんはもう1つ指輪を取り出した。それをおずおずと私の方へ差し出し……
「お揃いで作ってあるんだが、俺の指にもつけてくれるか?」
「ハイ……」
ハイ……私の指の、2倍の太さはあろう指に指輪をはめる。チラッとうさちゃんの顔を見やると……でろっと蕩けそう。
そして、握ったままの手を引かれ、すっぽり腕の中へ攫われる。う~ん、おさまりがいい。
お揃いといえば……
他のアクセサリーを作ってもらう前に、私の作ったやつも渡しましょうか。
「私からもうさちゃんにプレゼントがあるんです。」
取り出したるは、白いミサンガ。光に透かすと、薄っすら緑が交じって見える。端っこをちょっと工夫して白いポンポンにしてみたよ。
「ポトフが……俺に……!」
うさちゃんに渡すと、感極まってぎゅうぎゅうに抱きしめてきた。くお〜縮む〜。
「……ポトフを傍に感じられていいな。」
腕に結んであげると、慈しむように指先で優しくミサンガを撫でる。
私の腕にも結んでもらい……無事お揃いにできました。
…………
………
……
アクセサリーの作成も終わって、再びごろごろ。
コロコロと変わる空模様を眺めながら、なんでもない言葉を交わし、時折顔を見合せて子供のようにクスクス笑い合う。ああ、幸せだ……




