0.6.1.2 ポトフちゃんと焼き肉
休憩を終えて、ゲーム内へ戻ってきました。
早速、うさちゃんのお仕事を確認しましょうか。まずは家のドア。片開きの1枚の扉だったものが、対になった両開きの扉になっている。
「もちさんが通るならこっちの方が入りやすいと思って、両開きに変えてみた。それから、軽く触っただけで自動で開くようになったぞ。ほら、ちゅうちゃん。」
うさちゃんに名前を呼ばれたちゅうちゃんは「ちゅ!」と元気にお返事をして、てててっと扉へ駆けていく。そして、ちっちゃいお手手を扉に押し当てると……ギィッと軋む音を立てて開いた!
「ちゅ〜!」
「わあ、ありがとうちゅうちゃん。これならちっちゃい子達も自由に出入りができていいですね。」
「だろ?あ、一般プレイヤーは触れても開かないから安心してくれ。この家の出入りを許可されてるやつだけに反応するから。」
セキュリティもちゃんとしてるね。
家に入ると、窓にも変化が。ウシカボチャ(大)が通れそうなくらい大きくなってる。こちらも軽く触れただけでで開くようにしてあるらしい。
そういった説明を聞いていると、勝手に窓が開いた!何事?
「ぐるぅ?」
「ぐうちゃん!」
開いた窓からひょっこりと顔を差し入れて来たのはぐうちゃん!なるほど君が開けたのか。
「流石にぐうちゃんの大きさじゃ家に入れるのはキツいからな。ちょっとでもぐうちゃんが寂しくないように、こうやって触れ合えるようにしたんだ。」
苦笑いでぐうちゃんの鼻先を優しく叩くうさちゃん。うんうん。いつでも遊びに来ていいからね。
そして、椅子。角を丸く削った四角い箱。すごくシンプルだな、と思ってたら、これで高さを測って、ちょこさんに作成をお願いするらしいです。
「それから、これ。」
椅子の高さを確かめ終えて、うさちゃんが机に取り出したのは取っ手のついた味噌こしに、細かい目のザル、焼き網……ふむ。これらの共通点と言えば……
「金網が作れるようになったんですね。」
「ああ。織り機を改造して、金属製の糸を編めるようにしたんだ。」
いいタイミングで持ってきてくれました。この網でお肉を焼きましょう!
ということで、焼き肉祭りじゃ〜!それぞれの部位から食べやすい大きさに切り取って焼いていきます。
かまどに焼き網をセットしてどんどんお肉を並べていきますよ〜。
ジュウジュウと焼ける音、滴り落ちる脂、芳ばしく焼ける匂い……はあ〜よだれが止まらない!
まずは前も食べたブタから。
脂の甘みと柔らかい赤身のバランスが絶妙なロース。まさに王道。ザ・豚肉って感じ。
とにかく柔らかく、しっとりした食感のヒレ。脂身がほとんどないのでくどすぎないのもいいね。もう1切れ食べちゃお……む、ちょっとパサついてる。火を通しすぎちゃったか。
同じく赤身の多いモモはちょっと弾力が強い。これは薄切りにしたほうが良さそう。
「これも豚……ブタモモか。」
「そうです。うさちゃんはどれが好きですか?」
「ん……そうだな、どれも美味いが……前食べたカリカリに焼いたやつが特に好きだな。」
私も好き!
続きまして、トリイチゴ。
脂ののった、ぷりっぷりのモモ。淡白でさっぱりとしたムネ。そして……
「うわ……これはちょっと……クセが強いな。」
レバ〜。独特な風味が苦手な人多いよね。お口直しに、パリパリに焼いたトリ皮をどうぞ。
「ん!美味いな。これ結構好きだ。」
私も好き!(20分ぶり2度目)
さあさあお次はウシ肉ですよ。
程よくサシの入った柔らかいカルビ。
きめ細かい霜降りのロース。これはちょっと胸焼けしそうなくらいこってりしてるな……
そして……ヒレ。
「はあ〜……柔らかい……」
「うお……他の部位と全然違うな……」
赤身の肉とは思えない、とろけるような柔らかさ。噛む度に濃厚な肉の旨みが口に広がる、贅沢な逸品です。高い肉って……すごいんだなあ……
さて、それぞれ素材への味付けが終わりました。
とりあえず、これに合う調味料を作ろうかな。
ニンニク、リンゴそして……タマネギ!国際通りの方で見つけたんだけど、原産国どこだろう。まあ、いつか分かるか。
それぞれ一欠片と1個ずつすりおろします。
「うお、あの匂いがすごいやつを使うんだな。」
「はい。これがまたクセになるんですよ〜。」
やっぱり匂い気になるかな。ちょっと減らしてもいいかもね。
ニンニク、リンゴとすりおろして、次はタマネギ。
「う……」
目にしみる……涙がでてきちゃった。
「!?どうした!?悲しいことでもあったか!?な、なんだ?目が痛い……?」
「だ、大丈夫です、こういう食べ物なんです。」
慌ててすっ飛んできたうさちゃんの大きな手で顔を拭われ、よしよしとあやされ、抱え上げられキッチンから遠ざけられる。ああ〜癒やされる……いや、こんなことしてる場合じゃない。ひとまず下がっててもらって……
すりおろしたものに、砂糖3さじと醤油200ミリリットルを加えて混ぜ、火にかけます。
ふつふつとしてきたら火を弱めてさらに煮詰めます。本当はお酒とかみりんがあると、もっと美味しいんだろうけど……今日のところはひとまずこれで行きましょ。
さて、お味は……醤油によってまとめられた、フルーティーなリンゴの風味に、加熱されたタマネギの甘み。そして鼻に抜けるニンニクの香り!これで完成です『焼き肉のタレ』!
早速お肉につけて食べましょう。
「はい、『焼肉のタレ』です。こうして、ちょんちょんっとちょっとだけつけてから食べてください。」
「ん、分かった。」
カルビを一切れ……くぅーっ!美味い!肉の旨味と濃厚なタレのタッグは最強なんだ……!
「な、なんだこれ……ニンニク……甘味……砂糖、いや、リンゴ?醤油のしょっぱさと絶妙にマッチして……駄目だ、難しすぎる、コレを表現する語彙が俺には無い!とにかく美味い!」
複雑な味でオーバーフローしつつも、フォークがすすむうさちゃん。しっかりと味わいながら、他の部位のお肉にも手を伸ばします。
さて、私は一足先にワンランク上に行っちゃいますか。白米を召喚!
お肉にタレを付け、そのまま白米へバウンドさせる。余分なタレを吸わせてから、お肉を口内へ。すかさずタレのついたお米も口へ運ぶ!
「ほふっ……美味……」
滴る肉汁、絡み合うタレ……その2つをそっと支える白米……互いが互いを引き立て合う最高のトリオです。
「ポトフ……俺にもご飯をくれないか……?」
焼き肉ご飯を堪能する私を、手を止めて物欲しそうな目で見つめるうさちゃん。ふふふ、もちろんご用意してますよ。
「ん、美味いな……あっ!このタレで焼きおにぎり作っても美味いんじゃないか?」
「冴えてますね、うさちゃん。」
この一瞬でその発想が出てくるなんて、天才かな?後で作っておきましょうね。
さて、お肉の味付けはこんなものかな。ここからはもっと手を加えた料理を作りますよ〜。




