0.5.0.5 ポトフちゃんのおむすび
いよいよお米を炊きますよ。鍋の中のお米は、しっかり水を吸って白くなってるね。
鍋に蓋をしてかまどへ。気持ち弱めの火にかけます。
ふつふつと沸騰して吹きこぼれ始めたら、薪を減らしてさらに火を弱めて、タイマーを10分セット。
その間に、もろみから『醤油』を生成したり、テーブルと椅子を用意したり、着々と食事の準備を進める。
タイマーが鳴ったら鍋の前に戻る。そのまま火にかけていると、パチパチという音が聞こえ始めるので、一気に火を強める!そして10数えたら火を消す!そして蓋をしたまま10分待つよ。
「そろそろ出来ますよ。ちょこさんを呼んでもらってもいいですか?」
「うむ、わかった。」
いよいよ試食しますよってことで、本日のゲストちょこさんを呼んでもらいます。
「来たぞー。」
「はーい、どうぞー。」
早ーい。一分もたってないよ。呼ばれてすぐ来ました。
店内にいるちょこさんを裏へお招きする。
「メインはもうちょっと待ってくださいね。」
「おう。」
きょろきょろと興味深そうにキッチンを見回すちょこさん。そういえば家具店の運営してるんだったね。うさちゃんが作ったやつが気になるのかな。
でもそれ以上に興味を持ったのは、カウンターの上にある食材達のようですね。
「これは?今日作ったやつか?食べてもいいか?」
「いいですよ。でも「ぶほっ!!!!」ああ……」
“味が濃いので箸の先につけて味見してね”って言おうとしたら、お椀に入れてあった醤油をそのまま飲んでる!そんな麦茶じゃないんだから。お口直しに水の入ったコップを渡す。
「すいません、注意が遅れましたね。それは調味料なんです。そんながぶ飲みするようなもんじゃないんです。」
「そ、そうか……」
なんとも言えない顔をしたちょこさんは、水を飲みながら『もろきゅう』をかじるゴインキョさんのもとへ。作り方をきいて一緒にぽりぽりしだした。
「美味いなこれ。」
「味噌をつけても美味いぞ。」
あそこだけ居酒屋の一角みたいだぁ……
さて、そろそろ10分経って蒸らし終えました!蓋を開けます!
「わぁ……!」
湯気とともに立ち昇る食欲をそそる香り……つやつやと一粒一粒が眩く輝いている!あまりの美しさにだらしなく頬が緩むのを止められないが、ボーッとしちゃいれない。炊きたてのご飯を木のヘラでさっくり混ぜほぐす。
そしてお椀に盛って、『ご飯』いただきます!
「はぁ……」
ほかほかの炊きたてご飯。ひと口食べると、ふっくらとした粒が口内で解け、咀嚼する度に甘みが広がる。幸せの味だ……
美味しくて、懐かしくて。ちょっとだけ、鼻の奥がツンとした。
「んん、ケーラン焼きやバナナとはまた違った柔らかさと弾力じゃな。」
「ほう……不思議だ、噛むほどに甘みを感じるな。砂糖は使ってないんだろ?」
「使ってませんね。」
おっ、お米の甘みが分かるとはいい舌してますね。
それじゃあここにネギ味噌を乗っけて1口。ああ〜!最高!しょっぱい味噌とネギの甘み、キュッと詰まった旨味。ほんのちょっとしかつけていないのに、二口、三口と箸が進む。
私の真似をして、ネギ味噌を乗せて食べていた2人は……あれっ!?既にお椀がからっぽ!
「むっ!ご飯がなくなってしもうた……」
「ポトフ、悪いがまだご飯はあるか?」
「ありますけど、他の料理に使おうかと思ってまして。」
「……今から作るのか?」
「はい。すぐできますよ。」
しばし待たれよ……と伝えると、足りなかったら使え、と乾燥した稲穂を取り出し渡してくるちょこさん。私が取ってきた稲穂の倍はある……沢山つくりましょうね。
ちらちらとこちらを見ながら、キュウリに味噌をつけてポリポリする二人を横目に、次のお料理です。
まずはお米を炊く。自動作成機能でね!
材料は、米とお鍋。それから火と水。後者の2つは、かまどと水がめのあるキッチンに入ればOK。
お鍋に米を入れて、作成ボタンをポチッ!これでほっかほかのご飯が炊けるなんてまさに神!
ふんわりほぐしたら、ぱっぱっと手に塩を軽く振ってご飯を手に取る。火無効さまさまだね。“温かい”けど“熱く”はない。
左手に乗せたご飯の上から、右手を使って握る。カクッと指の付け根から90度に曲げて、優しく優しく形を整える。あんまり押さえつけないようにね。せっかく炊きたてのご飯なんだし、口の中でほろっと崩れて欲しいからね。
ころんころんと回して、三角形の『塩むすび』完成です!んん、しょっぱさでお米の甘みが引き立つ……
「はい、どうぞ。」
「おお、これまたシンプルじゃのう……ん!美味い!」
「美味いな。ちょっと小さいのが残念だが。」
2口で消えるおむすび。私の手が小さいのもあるけど、あなた達がデカイんですよ……
それじゃあ最後にもう2つほど。今度は塩をつけないでちょっと固めに握ります。
そして、かまどにセットしたフライパンの上にぽんぽんぽんと並べて焼く。ひっくり返してみて、焼き目がつくかつかないか、ぐらいまで焼けたらいよいよ味付け。
1つには味噌を薄く塗りつけて、もう1つには醤油を……ハケが無いので、手で掴んでサッと醤油につけてサッとフライパンへ戻します。
しばらくしたらひっくり返して、同じように味噌と醤油をつける。
焼き目がついたら『焼きおにぎり(味噌)』の完成!醤油の方は、もう一周サッサっとつけて焼いて……『焼きおにぎり(醤油)』完成!いただきます!
「んま〜!」
「なんともいい香りじゃのう。」
「外はカリカリなのに中は弾力があって……美味い!」
こんがりと焼けた、醤油と味噌の香りが食欲をそそる焼きおにぎり。
カリッと焼けた表面と、もっちり柔らかな中身。深く染み込んだ塩気とうまみがたまらない……!
今日の料理はここまで!ごちそうさまでした。いやー、すごく満足度の高い1日だったなあ。
「ポトフ、この塩にぎりたちは販売しないのか?」
「んー……山林の国の支店に並べてもいいですけど……」
「けど……?」
「NPCの屋台で売りに出すのもいいかなって。材料も少ないし、簡単にできるし。」
「おお!そうだな!」
早速話し合い始めるちょこさん。
私たちは、改めて今日作った物を確認して、お店に並べよう。
「えーっと、まず、お米は精米したものを売ります。」
「うむ。ヌカを落としたやつじゃな。」
「はい。それから、味噌と醤油はたんぽぽ農園で売ります。」
「うむうむ。」
「ネギ味噌もちょっとだけ置きましょ。」
「そうじゃな。」
お米は1Gを1つとして数えよう。味噌と醤油は0.5Gで、ネギ味噌は……ちょっと減らして0.25Gで販売数は1つ。自炊したほうがたくさん作れて安上がり!ってことにしたいね。
「ポトフ、今日はありがとう。とてもいいものを食わせてもらった。」
「いえいえ。気に入って頂けたみたいで嬉しいです。」
「お礼として何か渡したいところなんだが……ああ、俺は家具を作るのが得意だからな。欲しい家具があったら作ってやるからなんでも言ってくれ。」
戻ってきたちょこさんからお礼の言葉をもらう。
家具……あっ!せっかくだから作ってもらおうかな。
「ちょっと低いテーブルが欲しいです。えー、5、60センチくらいの高さの、丸くて広めのテーブル。うさちゃんが座った時に使いやすい机が欲しいです。」
「ああ〜……だったら結構広く作ったほうがいいな。まかせておけ。ポトフの椅子はいいのか?」
「椅子は……うーん。机が出来てからお願いするかもしれません。」
実際使ってみないと分からないからね。私の高さはどうとでもなるし。後回し。
「他に欲しい物はないか?」
「えーっと……カーペットか絨毯が欲しいです。床に敷くやつ。」
「敷物か……草原の国に織物が上手い奴がいるからそいつに話しておこう。」
「ありがとうございます。」
これでうさちゃんを冷たい床に座らせずにすむよ!
今日のお仕事はそろそろ終わり。樹海の国へ帰ります。
それでは、本日もお疲れ様でした!




