0.5.0.3 ポトフちゃんとお米
山道を駆け下り、たどり着いたのは桜に囲まれた街。一見和風な雰囲気だが、なんか違和感。
一つ気づいたのは、建物にある丸い窓。迷路のようなオシャレな透かしが入っている。ああいうのって中国なイメージがあるな。
はは~ん?さては洋ゲーでよくあるなんちゃって日本みたいな感じなんだな。そういうの嫌いじゃないよ。
街中を歩く人々は獣人と植物人が半々ってとこかな。特に植物人は、樹海の国と比べて明るい色合いの人が多い気がする。胸元に蓮の花が咲いている人、桜の枝が角のように生えている人、頭にお皿が乗った人……ん?河童?ああいうのもいるんだ.……
「こっちだ。」
ちょこさんに案内されて向かった先は、彼が取り仕切る家具屋さん。の、裏手にある作業場。
様々な色の丸太や板材に……作業台の上にあるのは鞣されたブタモモの革?おお……何に使うんだろ。
うちにはないような本格的な道具も置いてある。
「ひとまず10日で試してみるか……よっ、と。ここに置いてくれ。」
「わかりました。」
棚をいじっていたちょこさんに呼ばれると、置いてあった板材をどかしてスペースを確保してくれた。それじゃあ失礼します。
パサッと稲を置くとみるみるうちに水分が抜けて、葉っぱが黄色っぽくなってきた。あっ、藁!これもアイテム化しといてもらおう。麦の藁はあるかな?違いがあるなら別物として数えた方がいいかも。
「もっと時間を進めるか?」
「これくらいで大丈夫だと思います。試してみましょう。」
乾燥した稲を棚から取り出し、作業台をお借りして脱穀するよ。
インベントリからお椀と、今日貰った葉っぱを取り出します。
まず作業台に葉っぱを敷いて、その上に穂先が来るように稲を置く。一掴みでも出来ればあとは自動作成出来るから、とりあえず2、3本ね。
そして、穂先の部分にお椀をかぽっと被せて、抑えながら稲をゆっくり引き抜く。おお、ぱちぱち音がする。
お椀をとると……籾が外れてる!成功だね。
お次は籾すり。すり鉢を取り出してそこへ移し……柔らかいボール?ないからすりこぎでいいか。力を込めすぎなきゃ大丈夫でしょ。
ほどほどに力を入れつつ摺っているとパキパキ殻の割れる音がする。だいたい剥けてきたら、ザル……は無いので、ふるいに入れて細かいクズを落とし、息を吹きかけて籾殻を飛ばす。後は目視で確認して、摘んで綺麗にする。
ざらざらと玄米を触っていると、ぽぽ達が寄ってきた。
あっ、ええ〜!なになに!?手伝ってくれるの!?綿毛たちが寄り集まって殻を取り除いて……スクショスクショスクショ!もうカメラに写るとかいいです。我が子達を見ろ!!!
「どうだ?」
「いいですね。乾燥期間はこのぐらいでよさそうです。」
特にお米が砕けたりもしていないし、丁度いい乾燥加減だね。さて最後の仕上げ。精米しますよ。
狭い入れ物がいいかな、って事でガラスのグラスに玄米を入れ、ギリギリ入るすりこぎでトントンついていきます。
「ポトフ、作業台使ってもいいか?」
「あっ、すいません。どうぞどうぞ。」
黙々とやっているとちょこさんから声がかけられる。占領しちゃってた、すいません。
あんまりこの作業場に長居するのは悪いよね、別のところでやろうかな?そうだ、この街にもたんぽぽ農園の支店があるはず!そこへ行こう。
ということで、ちょこさんに場所を聞いて一旦お別れ。料理が出来たら呼んでくれとのこと。また後でね〜。
グラス片手にとんとんつきつつ、やってきましたたんぽぽ農園。看板は同じだけど外観は瓦の屋根に引き戸でアジアンな感じ。からりと扉を開けた先、内装は森の街とおんなじだね。
いらっしゃいませと声をかけてきたこの街のリオンちゃんは、おかっぱ頭でまん丸おかめ顔の可愛こちゃん。そうだ、せっかくだから名前を変えておこう。『蒲公英』の“公”からとって“キミ”ちゃんだ!
そんなキミちゃんのいるレジカウンターの、後ろの壁に扉をつけ、奥に簡易的なキッチンを作るよ。
かまどとカウンターそれから水瓶。それからちっちゃい魔法陣。ひとまずこれでよし。
ついてついて計1時間ぐらい?外から見ても糠が落ちてるのがわかるようになってきた。そろそろいいでしょう!ふるいにかけて糠を落として、素材の準備はこれで完了!レシピをメモメモ。
おっと、このままだと片手に乗るくらいしかないので、量産!お椀1杯分くらい作っておこう。
さて下準備しましょう。まず用意するのは、水を張ったボウル。そこへ、米を入れたふるいを沈めてジャカジャカとぐ。何度か水を変えて、濁らなくなってきたらお鍋へ移す。
で、浸水させるんだけど……えーっと、入れる水は米の1.3倍くらいの重さ……ああ、そういえば、はかりとか計量カップってないよね。今回は第一関節とか手首で深さをはかっちゃお。
お菓子作るなら、無いと困るよね。一応重量表記はあるけど、0.01G……現実換算すると、10グラムくらい?までしか見れないんだよね。いちいちインベントリに出し入れするのも計算するのもめんどくさいし……
「はかりと計量カップってありますかね?重さとか、液体の量をはかるやつ。」
「ふむ…………おお、ポーションの調合に使っとるのがあるそうじゃ。73の店で売っておるらしいぞ。」
あるんだ!助かる〜。それじゃあ浸水させている間に買いに行っちゃいましょう!
ついでに街を見て回って、農園に並べるものも決めようかな。




