0.5.0.2 ポトフちゃんと熊
街の外へやってまいりました。一度休憩をはさみまして、もちさんを呼び出すよ。
そして、ゴインキョさんちの騎乗モンスターとご対面!
「『エンド』!」
ゴインキョさんが名前を呼ぶと、世界樹の方から飛んでくる黒い影。
土煙を巻き上げながら地へ降り立ったのは、もちさんよりも、なんならぐうちゃんより一回りも二回りも大きなドラゴン。
「エンシェントドラゴンのエンドじゃ。」
4足歩行で翼の生えた、ザ・ドラゴンな造形で、体表は木の幹のようなゴツゴツとした鱗で覆われており、至る所に苔が生えている。
動作はどことなくゆったりのんびりしていて、もちさんに嗅がれても、頭の上にトッキーが登っても大人しくしてる。なんというか......おじいちゃんドラゴンって感じ。
「どこに居たんですかこんなの......」
「世界樹のところじゃな。ああ、こやつを捕まえに行く道中でトッキーを捕まえたんじゃよ。」「ヂッ!」
「ああ〜あのドングリの日の。よろしくね、エンド。」
「……(フスー)」
近づいて挨拶すると、頭を寄せてきて……は、鼻息で返事された。キョトンとした瞳が何とも可愛らしい。
挨拶も済ませたし、もちさんに乗り、ゴインキョさんwithエンドに先導してもらって、いざ!山林の国へ出発!
…………
………
……
樹海の国から北東方向、山林の国。
その山間部に、黄金に染め上げられた棚田が覗く。周りには桜が咲いており、なんともチグハグな風景だが、不思議と違和感はない。
山肌一面に広がる稲穂の海にうっとり見とれていると、すぐ近くに野営地があるようなのでそちらへ着陸する。
眼の前には田んぼと桜と青い空!絶景スポットだね。マップにメモしとかなきゃ。
さて、収穫しますかってところで、あぜ道から……熊?いや、人だ。こちらへ向かう人影が。
「おう、来たかゴインキョ。」
のっしのっしとやってきたのは、熊の毛皮(の様に見えるけど多分違うんだろうな)を頭からかぶったムキムキマッチョマン。山賊のお頭……?
しかも下半身が熊。ケンタウロス、ならぬ熊タウル?
「よくきたなポトフ。俺は『ちょこ』だ。よろしくな。」
「ちょこ、さん。」
「ああ、おっちょこちょいのちょこだ。」
「なるほど、よろしくお願いします。」
益荒男って感じの人なのにおっちょこちょいなのか......人は見かけによらないね。
「わざわざこんなとこまで来るってことは、米食べるんだろ?好きなだけ持ってけ。」
「はい!ありがとうございます!」
たわわに実った稲穂!ありがたく頂戴していきます!
精米すればそうとうカサが減るはずだから想像の倍くらいあったほうがいいかな。二人の会話をBGMに一束二束ザクザク刈っていく。
「まさかポトフがこんな物まで食べたがるとはな。」
「んん?どういうことじゃ?」
「NPCが動物のエサにしてるっぽいんだよな。これ。」
で、でた〜!異世界転生あるある『米は家畜の餌』!世界観ギャップをこんなところで再認識するとは……
こんなもんかと刈り終え、インベントリにしまって立ち上がると、いつの間にか片手に稲を持ったちょこさんから声がかけられる。
「食べないのか?」
「?このままは食べませんよ。もっと加工してから食べるんです。」
「どんな?」
どんな……えーっと、まず、1、2週間乾燥させて、先っぽについてる籾を取り外して、その籾から殻を外して玄米にして、そこからまた糠を落として……で、下準備完了!かな?
「……すごく時間がかかるんだな?」
「そうですね。だから、市場に出すのは糠を落とした白米にする予定です。」
「……今すぐは食べられないんだよな……?」
「そうですね。」
そうか、と呟きキュッと眉間に皺を寄せて俯いてしまったちょこさん。すっごく残念そう……
「ちょこはな、わしの次にリンゴを食べた人間なんじゃよ。」
「へぇ!そうなんですか。」
「そこからすっかり食べることにハマっておるようじゃ。」
なんとまあ。虜になった人がここにも一人。だからそんなに悲しそうなんですね。なんとかしてあげたいけど……
「一番時間がかかるのは乾燥だと思うんで、そこがなんとかなれば……」
「!それならいい方法がある!木材や薬草を乾燥させる場所があるからそこへ入れれば1発だ!」
そんなおあつらえ向きの場所が!そういえばうさちゃんがお皿焼く時も似たようなことやってたね。乾燥させるやつ。
「街へ行こう!俺の後ろに乗れ!」
そう言って熊部分の背に鞍を装備しだすちょこさん。
「えっ、せ、セクハラ云々は大丈夫なんですか?」
「おう、多少緩和されたからな。肘先、膝下は触れられるし、俺みたいなタイプの種族の背中に乗るくらいなら問題ない。おっと、ポトフにはもちさんがいたな。ゴインキョの所のやつは走りは苦手だったろ?俺の後ろに乗れ!」
「おお、すまんのう。」
……ゴインキョさんが騎乗。オッサンとジイサンですごい絵面だ……おっちょこちょいっていうか、せっかちだなちょこさん。
と、言うわけで。ちょこさんに連れられてこの山の麓にあるという街へ向かいます。初めての異国の街……楽しみだ。




