0.4.7.5 ポトフちゃんと空飛ぶうさぎ
とりあえず、餌付けをしてみよう。近くで見るとほんとに大きいね。うさちゃんも余裕で乗れちゃうんじゃない?
インベントリに入れてきた果物やら野菜やらを取り出して地面にそっとおいてみる。けど、特に反応はない。
今度は手に持って顔に近づけてみる......顔何処だ?毛に埋もれてる......翼の向き的にこっちが頭っぽいんだけどな。あっ、埋まってる!うさぎ特有の縦に割れた口元がある!
そこへリンゴを近づけてみると......反応があった!
「む゛〜……?」
!!鳴いた!ぶーぶーと鼻を鳴らすような鳴き声。可愛い......!
のっそりと毛玉の一部が持ち上がり、鼻先を寄せてきた。おお……嗅いでる嗅いでる。でもリンゴはお気に召さない様子。フイッとそっぽを向いちゃった。
けど、足元に広げられた果物たちに気づいたみたい。おっ、耳がちょっと立ってる。
フンフンと鼻で吟味して、選ばれたのは......モーチの実!?歯を立てて器用に皮を剥き、チーズをぱくり。がりごりと齧り、硬い種をものともせず穴を開け、中に舌を伸ばしてミルクも飲みだした。
食べ終えるとまたもコテンと横に。でも心なしかヘタっていた毛が元気になってきた気がする。
まだ寝ないで〜とポッケから黒晶石を取り出して魔力を込めて与える。口元まで持っていくと、ぱかっと口を開いてくれたので食べてもらう。
「流石に一回じゃ無理でしたね。」
「みたいだな。」
1個目はテイム失敗。じゃあ2個目を……と思ったけど、白いのは口をつぐんだまま。クールタイムがあるんだって。
「この距離ならデスポーンしないだろうから、少し休憩するか。」
「そうですね。」
幸いにも、目と鼻の先に野営地があるので白いのを眺めながらそこで休憩。
そのあとは、モーチの実を与え、石を与え……失敗しては、白いのが視界に入るくらいのつかず離れずの距離で、捕獲のクールタイムの間に敵を狩る。の繰り返し。
途中からはモーチの実はなくなっちゃったので捕獲率は上げられなくなっちゃったけど……
【テイムに成功しました。名前をつけて下さい。】
〈スクヴェィダー(聖)〉
[ここに名前を入力]
[決定]
「やっ、たあああああ!!!!」
「捕まえたのか!?」
3時間くらいかかってついにゲット!
名前……名前……どうしよう。白くてふわふわ……うさぎといえばお月さま……月?いや違うな。そんなキャワイイ感じじゃないな。
ああ、この子モーチの実が好きなんだよね、じゃあ、
「この子は“もち”さんです!」
「ああ、モーチの実からとったのか。」
半分正解です。餅とのダブルミーニング的な。
名付け終えたので、ステータスの方を確認っと。
────────
【もち〈スクヴェイダー(聖)〉】レベル:1 なつき度:1
”空を飛ぶ白いうさぎ。雪の国と氷の国の国境にある山に生息している。樹海の国で見かけたと言う話もあるが、真偽は定かではない。“
体力:12/12 魔力:1/1 スタミナ:18/18
攻撃力:0 防御力:3
筋力 :0 生命力:6
知力 :0 精神力:6
器用さ:0 素早さ:10
運 :10
特性
《聖なる兎》
環境ダメージ、状態異常、デバフ無効
《ふわふわの守り》
自身の受けるダメージが半分になる
《神の加護》
プレイヤーの獲得経験値+1(待機中でも発動する。)
スキル
〈完全防御Lv.1〉
味方へのあらゆるダメージを一度だけ防ぐ。10分に1度発動可能。
〈大地への祈りLv.1〉
味方の体力、魔力、スタミナを全回復し、状態異常、デバフを解除する。10分に1度発動可能。
〈粛清〉
敵のバフ効果を解除する。
──────────
は〜超耐久型だ。徹底的に守りに徹するタイプ……ぽぽ達と同じサポート型のスキル......私が闘わなきゃ......
10分のクールタイムがある2つのスキル、どっちも強力だね。1回でもダメージを防げるって、なんか面白い使い方ができそうだ。
神の加護......経験値が増えるのはありがたいんだけど、特性ってその種族の特徴、みたいなのが多かったから、これだけなんかちょっと異質に見える。あ、神ってあれか、水中の木の力。なんか関係があるのかもね。
能力はこんなところかな。ただ、もちさんにはぽぽ達のステータスとちょっと違うところがある。
名前、種族欄の横に靴のマークと羽のマークがついている。これは騎乗出来る子についていて、何が得意かを表しているとのこと。靴は走り、羽は飛行。
ぐうちゃんには靴マークはないけど赤い水滴のマークがついているらしい。マグマを泳げるんだって。
さて最後に。もちさんは4体目なので、ぽぽ達と交代させて“連れ歩く”か、“自由行動”させて必要な時だけ呼び出すか、“家で待機”させるか、の3つの選択肢が用意されている。
基本的には連れ歩くか自由行動の2択なんだけど、家を持っている人には3つ目の選択肢がでてくる、例の放し飼いができるやつだ。
家で可愛がることができる以外は、概ね自由行動と変わらない。とりあえず“家で待機”に設定しておこう。
さてさて、今日の目的を達成出来たし、そろそろ帰りますか!って事で初の1人と1匹で飛行。
操作は簡単。私の考えたように動いてくれるらしい。物は試しで早速やってみよう!
「もちさん!いこう!」
「む゛ー!」
グッとしゃがみこんで......羽を広げながら勢いよくジャンプ!そのまま雲の上まで飛ぶよ!
「大丈夫か!ポトフ!」
「はい......っ!とと、大丈夫でーす!」
雲の上まで来て、羽ばたきが落ち着いた頃、ぐうちゃんに乗って隣を飛ぶうさちゃんに話しかけられる。返事をしようとすると、ガクッと揺れた。危ない危ない、ちょっと集中したほうがいいね、これ。空中でのおしゃべりはもっと慣れてからだね。
............
.........
......
無事、農園に帰ってまいりました!もちさんもお疲れ様!
「もちさん、ここで好きに過ごしていいからね。」
「む゛。」
「あ、そうだ。もちさんが自由に食べられるように、専用のモーチの木を植えようか。」
「む゛〜!」
ふふふ、喜んでるね。
「ポトフ、俺ももちさんに触ってもいいか?」
「いいですよ〜。ん?あれ?うさちゃん触ったらマズいんじゃないですっけ?」
「ああ......だから俺はこれから自分にかけていた枷を解く。」
「えっ?」
もちさんを抱きしめてもふもふしていると、真剣な顔をしたうさちゃんが唐突にそんな事を言い始めた。い、今?今日はもう解散かな〜ってとこで?
「装備を着てもちさんにダイブする。」
あ、枷って装備無しの縛りプレイのことね。
それを破って装備着るってことか。
「でも......自傷ダメージ入るんですよね......?」
「そうだ。俺が受けるのはステータスや装備に関わらず、1秒につき体力最大値の1パーセント......つまり100秒で死ぬ。だから、1分......1分だ。1分経ったら起こしてくれ。」
「わ、わかりました。」
もちさんに横向きに寝そべってもらい準備完了。
そしてうさちゃんは(おそらく)装備画面を開き……深呼吸をして……目にも止まらぬ速さで装備!からのもちさんへダイブ!!!!
「ああ……しあわせ……」
柔らかなお腹に顔を埋め、恍惚とした声でそう呟くうさちゃん。コイツなんなん?って感じの視線を私に向けてくるもちさん。ふわふわなものが好きなので……としか……
...............55、56、もういいよね......?
「うさちゃん!時間ですよ!起きて!」
「も、もうちょっとだけ......」
もぞもぞともちさんにしがみついてしまった。くぅっ、かくなる上は......
「今起きないともう抱っこさせてあげませんからね!」
「それはダメだ。」
スっと立ち上がりもちさんから素早く離れ、装備を脱ぎ捨て、私をぎゅっと抱き込む。
よ、よかった釣れた......それでもいいって言われたら立ち直れないところだった......
「やっぱ溶岩の肌、調整した方がいいんじゃないですか......?」
「そう、だな......俺も、薄々そうした方がいいんじゃないかって、最近思い始めてた所だ......」
そんなこんなで。一緒にゲーム内で夕飯を食べて、体力を回復してから今日は解散です。またね〜!




