0.4.6.4 ポトフちゃんの『たんぽぽ農園』
「よし、入るぞ。」
「はい!」
お店にとうとう着きました!扉を開けると「いらっしゃいませ〜。」と、カウンター内のリオンちゃんから声がかけられる。
扉から真っ直ぐ正面にカウンター。壁には棚……
「うさちゃんの鍛冶屋と配置が似てますね?」
「ああ、それは俺の店の配置がデフォルトの配置に設定されてるからだな。」
なるほど、あれが基本のお店なわけね。
「とりあえず、ポトフの店の名前はどうする? 」
おっと、それはもう決まってますよ。
「『たんぽぽ農園』です!」
「『たんぽぽ農園』だな…………よし、設定できたぞ。」
ふふふ……私のお店……!
それじゃあ、お店についてレクチャーして貰いましょう。
まず、自分の所有するお店に入ると、家のアイコン、ハウジングモードにするやつだね、その隣にショップと書かれたお店っぽいアイコンが追加されるので、それを選択。
すると、2つのウィンドウが出てきた。
左側のウィンドウには、作物の名前がズラっと並んでいる。農園で育ててるやつかな。
右側は空白だ。
「左側の在庫リストから選択して販売する個数を決めたら、右側の出品リストに表示されるんだ。ああ、5個にしておいてくれ。公式からの販売はそれで統一してあるんだ。」
「分かりました。1人5個までってことですよね?」
「ああ、それであってるぞ。そして、出品リストから値段を決めて、決定を押すとプレイヤーが買えるようになる。」
「なるほど〜。」
とりあえずやってみよう!ウシカボチャがあるので、在庫からそれを選択。個数は5っと。
出品リストに移ったので値段……値段かあ。
「初手でウシカボチャの値段決めって、難しくないか……?」
「うーん……そうですね……そういえば、この世界の物価ってどんなもんなんですか?」
五十音で並んでるから目に入っちゃったんだよね。
確か……宿屋が10石、包丁と砥石もそれぞれ10石で、オムレツが5石。安い……と思う。
敵のレベルとドロップする石の数は同じみたいだから、この街の周辺にいるのを4体倒すだけで今あげたもの全部賄えるよね。ああ、でも仲間のレベル上げにも大量に使うし、お祈りとかにもつかうのかもね。
「そうだな……まだみんな探り探りだから、明確な基準はないんだが……武器、防具それと、ポーションなんかの補正値がついてるやつは、元の値段にその補正値を足してるから比較的高めで、ツール系はかなり安くて手軽に初心者でも買えるようになってる。素材系は重さで決めてたりするぞ。希少性によってまた変わってくるけどな。」
「オムレツが5石で売られてたのは……?」
「ん?ああ、露天のやつか。たしか、元々あった食べ物と置き換えるときに、暫定的に露天に並んでる他の売り物と、同じくらいの安い値段にしたんだったか。あー……俺らには食べ物のレアリティみたいなのがイマイチ分からないからポトフに決めてもらえるとありがたいんだが。」
「それくらいなら大丈夫です。やりますよ。」
なるほどなるほど。重さで決める、か。それはいいかも。参考までに、石材は1G(現実で言うところの1キログラム)で1石らしい。
じゃあとりあえず……基準となる〈粗〉の値段を300石に設定しておこう。後でまた調整しようね。ここから品質ごとに倍率がかかるみたい。
次は、オムレツに使ってるケーラン。オムレツが5石ならそれ以下の値段だよね。1個1石?高いかな……しかも5個しか買えないんだよね……?
「購入出来る個数は日付が変わるとリセットされるぞ。」
あ、そうなのか。じゃあそこの心配はいらないね。
「これって、6個を1セットにして売れますかね?」
「ああ、出来るぞ。在庫リストから選択する時に、2回連続で同じアイテムを選んでみてくれ。」
「はい。……1、2っと、あ、名前の横に×2ってついてますね。」
「あとは、今増やしたみたいに在庫から選ぶか、その数字の所を選択して数字を調整することもできるぞ。」
ほうほう。×2の所をポチッと。すると、数字の上下に三角のマークが出てきた。上の三角をトントン押すと、増える増える。×6にして、ケーランを出品。お値段は5石で1個オマケだよ……よし。設定完了!この調子で他のも設定しよう。
…………
………
……
「よし!これで大体のものは設定出来ました!」
「お疲れ様ポトフ。」
肉、卵、牛乳はほぼ全国的に販売するとして、とりあえずこの街の、というかこの国にある支店では樹海の国にありそうなものを一通り並べることにした。
ラズベリーとかイチゴとかのベリー類とか、キノコ類とかね。ハーブ類はポーションの方に使われてるものもあるらしいので、今は割愛。
なんか、山林の国とかいう、ちょっとウチの国と植生がかぶってそうな国があるらしいので、どうにか棲み分けをしたいんだよね。雪の国と隣接してるらしいのでリンゴとかはその辺りに置きたいな〜。
「本店から全国の支店の商品管理もできるからまた今度見てみるといい。」
「わかりました!」
ここからは、個人で売る方法を聞いておく。
露天で売る場合は、今さっきやった方法と同じ。値段の交渉や在庫の確認は口頭でどうぞ。街中で場所を確保して売ってね。未実装だけど、商人ギルドみたいなのに入る必要があるとかないとか……
もう一つ、お店を仲介して売る方法。店員さんに話しかけると、アイテムの購入、売却のほかに、出品する、の選択肢がでるので、出品するをえらんで、店員さんへの手間賃を払う。これで一定期間、いくらでも出品できるようになるよ。延長も可。
あとは、手持ちのアイテムから売りたいものを選ぶだけ。値段は決まってるからね。こっちの方法だとギルドに入らなくてもおっけー。
プレイヤーとの交流が苦手……だけど自分の作ったものを他のプレイヤーに売りたい……そんな人はこっちを使おう。
このお店に仲介してもらう方法、カルマ値が高ければ、手間賃が少なくなったりする……予定らしい。低いとそもそも選択肢が出なくなる……予定。
私は冒険もしたいと思ってるので、基本的に売るのはこの仲介システムを使う予定。
そんなこんなで本日の就業時間も終わりに近づいてまいりました。
「とりあえず、このウシカボチャを飾って今日は終わりですかね。」
「ああ、そうするか。」
店の模様替えまではできませんでした。でも、なんとなくお野菜は入口付近、そこから真っ直ぐ正面方向に進むとお肉って、イメージがあるので、ちょっとレジを左にずらして、空いたスペースにウシカボチャを設置!これを見たお客さんがたんぽぽ農園に興味を持って、本店にも来てくれたらいいな。
ああ〜体が軽くなった!うえ〜ん、うさちゃんの腕から降りなきゃ……
「うさちゃん……」
「ポトフ……」
降ろしてくれ、の意でじっとうさちゃん見つめると、私を抱えたまま見つめ返してくれる。気持ちが伝わらないのがこんなに嬉しいとは……
そうやって見つめ合っていると、ふいに目がそらされる。なにやら連絡があったみたい。
途中から、きゅっと眉間にシワが寄って険しい顔に。と思ったら、お次は悲しげな表情。何があったんです……?
最終的にはホッとしたような表情になったから、解決したのかな?
「ポトフ。」
「はい。」
「明日、モンスターの捕獲に行く前に、服屋に行かないか?」
「服屋?」
なんでも、明日この街に服飾班の人が来るらしいので、よかったら来ない?と声をかけられた、とのこと。いいですね!行きたい!
「よし、決まりだな。明日は着替えてから捕獲に向かおう。」
「はい!」
それでは本日もお疲れ様でした。
……あの悲しそうな顔、なんだったんだろうね?




