0.4.3.0 ポトフちゃんへの届け物
おはようございます。今日も張り切って参りましょう。
「ポトフー!こっちじゃこっち!」
「?はーい!」
ログインして家を出ると、農園入り口にいるゴインキョさんから手招きされる。はいはいどうしました?
「何かありましたか?」
「うむ。もうすぐじゃな。あっちを見ておれ。」
あっち、とゴインキョさんは空を指さす。あっちの方角にはたしか、火山の国があったはず......?
しばらく空に視線を巡らせていると......黒い点?鳥?いや、どちらも違う!何かが高速でこっちに向かって来ている!
「ゴッ、ゴインキョさん!なんですかあれ!」
「おお、来たな。あれが『ドッッッッッッ!!!!』
動揺する私に対し落ち着いたゴインキョさん。あれが何なのか説明してもらう前に、とんでもない轟音と土煙をあげながら黒い塊が私達の目の前に着地した。あっ!ぽぽ達大丈夫!?風圧でどっか飛んでっちゃってない!?……よかった、頭の上にいるね。
土煙か晴れると黒い塊……大きなドラゴンが伏せをしてこちらを見つめていた。その背から、ベリーショートに見える黒髪に黒い肌で、身長が高くガタイのいい女性が、とび降りて私達に歩み寄ってきた
「ヨォ、ゴインキョ!こっちではハジメマシテだな!」
「う、うむ。」
「コッチのちっこいのがポトフだよな!アタシは『ローラ・ローラン・ローランド』!気軽にローラ様とでも呼んでくれ!」
「は、はい!」
アマゾネス!って雰囲気の、厳つい見た目とは裏腹にニコニコ快活で気持ちのいい人だ。この見た目でこの名前……種族はゴリラの獣人とかですか?
ドラゴンはローラ様が指示を出すと帰っていったよ。いつでも出したり引っ込めたりできるってそういう事ね。
「今日はポトフご所望の品を持ってきてやったぞ!」
そう言うとローラ様は、小さい、と言っても1キロくらいありそうな麻袋を取り出し、その口を開けると……
「お砂糖ですね!」
「オウ!味見してみな!」
白くきらめく小さな結晶!ローラ様に言われるまま、指先で一つまみ……いただきます!
「甘〜い!」
「「甘〜い!」」
3人で砂糖をペロッ!舌に触れて溶け出す果物とは違ったダイレクトに伝わってくる甘み!これぞ私の求めていたものです!
「これが砂糖……これが甘み……」
「甘みがこれほど濃いとは……ポトフが欲しがるわけじゃな……」
目を瞑り糖分に浸っているお二人。理解って頂けたみたいですね。
「ポトフ、コレを実装するにあたって1つやらなきゃなんねぇコトがある。」
「はい!」
砂糖の余韻から戻ってきたローラ様から告げられる。そういえばゴインキョさんも『手を加える必要がある』とかなんとか言ってたっけ。
「この見た目塩とカブってるから、色を付けるなりなんなりして見分けがつくようにして欲しいんだ。」
「あ、そっか。だから砂糖が消えたんでしたね。」
「ソ。オマエの使いやすいようにしてくれてイイからな。」
「わかりました。」
食べ物の加工はお任せください!
さて、農園の入り口で立ち話もなんなんで、家へご案内します。他にも色々持ってきてくださったみたいなのでそこで見せてもらいますよ〜。
…………
……
…
「ざっとこんなモンかな。実装されてないやつも店主と交渉していくつか買ってきたぞ。」
「あっ、お代は……」
「あー、いいっていいってオマエがうまいモン作ってくれりゃじゅーぶんお釣りがくるわ。73もそう言ってたろ?」
「わかりました……へへっ。お言葉に甘えます。」
いやぁ、甘やかされちゃってます。皆さんが大好物って言えるようなもの、いつか作りますからね……!
机の上いっぱいに並べられたスパイスとハーブそれから……果物?多分熱帯とかに実ってるやつなんだろうけど馴染みがなさすぎて見た目じゃわからない。
そうだな〜砂糖があるし、お菓子に使えそうなものをピックアップ!
「んっ、いい匂い。」
「いい匂いだけど、これって木の皮じゃないのか?......おっ、ちょっと、ピリッとくるな。」
「これも食べられるんじゃな。甘ーい匂いがするのう。」
まず1つ目。カンナで削った木のような......というか木。これ、シナモンですね。ほんのちょっと舌にピリッとくる。本命は匂いですよ匂い。甘さの中に鼻孔が開くようなスパイシーさが混じっている。アップルパイ、シナモンロール......いつかつくれるといいな。さてお次は〜。
「ああ〜甘い匂い......」
「いい匂いだ......」
「ふむ......少し苦いか......?」
黒くて細長ーいさやに入ったバニラビーンズ!なんか君味薄いね......?ほんのり苦いくらい?でも匂いは最高......これサヤもいい匂いするんだ。煮出して使うんだっけ?これはバニラアイスをつくるのが楽しみだ......
さて、お次は、
「2つとも大きさが違うだけで似てるな。」
「加工すると別物なんですけどね。」
目の前にあるのは黒い豆。カカオ豆とコーヒー豆だ。どちらも焙煎済みで皮もむいてあるようでそのまま食べられそう。じゃ、カカオ豆から。
「う゛う゛〜ん゛苦い。」
「ン゛ッ゛ッ゛ッ゛!」
「............。」
おお......苦......苦い......でも奥底には確かにチョコレートがいる......!これは期待できますよ......!
ゴインキョさんは、悶絶する私たちの反応を見てソッとカカオ豆を皿へ。賢明な判断ですね。
「ゴインキョ?」
「すまん......」
「大丈夫ですよ。加工すればゴインキョさんでも美味しく食べられると思うんでそれまで待っててください。」
「ありがとう......」
そもそも味付けなんて私だけすればいいんだから他の人まで食べる必要はないんだよなぁ。付き合ってくれるのは、まあ嬉しいっちゃ嬉しいけど。
さ、コーヒー豆の方もポリッといきましょう。
「んぐぅ......」
「こ、これも苦いんだな......?」
「ポトフ、無理して味見せんでもいいんじゃぞ?それ1つなくても問題はないじゃろ?」
「あります......これが美味しいと思える人だっているはずです......」
「そ、そうか......」
にっが〜......酸味?わからん......コク......わからん......プロなら分かるのかな......。でもコーヒー感はある。
なんだか心配されてるけど、無理してる訳じゃないんだよね。食べることに飢えてるだけで。
............
.........
......
「ポトフ、ちょっとした頼みがあるんだが。」
「はい、なんでしょ?」
「バナナを使った料理って作れるか?」
「バナナ料理……」
「あー、あくまでアタシの個人的なオネガイだからな、聞き流してくれ。」
味見はそれくらいにしておいて、一通り何があるのか確認し終えると、ローラ様にたずねられた。バナナ料理か……今日は牛乳の実(仮)と、それを使った料理を考えてたけど……いいね!それ採用!牛乳とバナナを使った料理にしよう!
「いいですね!バナナ料理!」
「い、いいのか!?」
「はい!今日つくる作物と、砂糖で作っちゃいましょう!」
「おお、おお!楽しみにしてるぞ!」
「お、わぁー!」
感極まった様子のローラ様に高い高いされぐるぐるーっ!とされる。私はアカチャンだった……?
私をあやし終えたローラ様は、この後ななさんのとこに素材を届けに行くらしい。それでまたこっちに戻ってくるんだと。なので一旦お別れです。また後でね〜。




