0.4.2.3 ポトフちゃんの三種のケーラン料理
それじゃあ1つ目は……生ケーランを味見しておこうか。
「それを食べるのか……?」
「一応、ブタ……モモとは違って生でも食べられるようにしてあるので。……ゴインキョさんも食べます?」
「……うむ。少し気になるな。」
流石に抵抗あるかなと思って、一人で味見しようかなと思ってたんだけど……ゴインキョさんがそばに置いてあったお椀をそっと差し出してくれたので、その勇気を讃えて半分こしましょう……今度スプーンも作らなきゃな。
まずは白身をちゅるん。うーん無味。で、ほんのり生臭い?感じ。卵って独特の匂いするよね。そしてこの食感よ。独特のどぅるどぅるした食感やっぱ苦手かも……
「…………」
「どうですか?」
「その……食べ物に対する例えではないんじゃが……見た目も食感も、は、鼻水と言うか……」
「まぁ、言わんとしてることはわかりますよ。」
ゴインキョさんは目をつぶって険しい顔をしている。苦手な人はそういうよね〜。チョットワカル......お口なおしに黄身を食べましょ。
「んんーっ!濃厚!」
口に入れたとたん、ねっとりとした食感が舌に絡みつく。濃厚でクリーミーで......ああーっ、卵かけご飯にして食べたい......お米どっかにあるかな......
「な、なんじゃこれは......ウッ、こ、これは本当に食べ物か?」
「食べ物ですね。このままだと人を選ぶのは確かですけど。」
ゴインキョさん生卵ダメな人かな。口元に手を当ててさらに険しい表情。このゲームって吐けるのかな……
次は調理済みのもの、目玉焼きから食べよう。半分に切って......ん〜ちょっと蓋を開けるのが遅かったかな。周りが結構黄色いや。でも中央はツヤツヤなオレンジでいい感じ。
片方は味付け用にそのまま。もう片方には胡椒をふろうかな。ゴインキョさんには色々味を試してもらおう。
「うん。美味し。」
「これがさっきの液体か?食感が全く違う……こっちはまだ食べられるのう。」
白身は端っこがほんのり茶色く焼けていて、プルッとした食感。黄身はよりいっそうねっとりとしている。胡椒をかけた方は……美味し~!少しピリッとした感触とスパイシーな香りが、ケーランの本来の味を引き立てている。塩もちょっとかけちゃお。
「はーなるほど。味がつくとまた変わるのう。」
「目玉焼きっていろんな食べ方があるんですよね。だからこそ黄身の焼き加減だったり、味付けに何をかけるかで争いが起こったりするんですけど。」
「争いが起こるのはまずいとおもうんじゃが……」
「大丈夫ですよ。命をかけるわけじゃないですし。」
ちなみに私は、じゅくじゅくの半熟に焼いて粗挽きの黒胡椒をかけて目玉焼き丼にする派。
お次はオムレツ。包丁をいれると、形が崩れない程度に固まり、それでいて半熟のドロっとした断面が覗く。それぞれのお皿に取り分けていただきます。
「とろとろだ~。」
「白身と黄身を混ぜ合わせただけで見た目も食感も別物じゃな。」
ふわふわとろとろの優しい舌触り。塩コショウだけでも十分美味しいな……オムレツといえばケチャップ。今度作り方を調べておこう。いや、いっそのことケチャップそのものが実るようにするか?作るのに手間がかかる……醤油とかコンソメとかもそうしようかな。
最後は卵焼き……ケーラン焼き。
「う~ん、これだよこれ。」
「おお、調理方法を変えだだけなのにこれまた別のものになったのう。わしはこれが好きじゃ。」
ぎゅっと身の詰まったケーラン焼き。なのにしっとり柔らかく口の中でホロッと解ける。あー甘い卵焼き食べたいな……そういえばななさんが出してくれた素材の中に砂糖ってなかったなぁ……後で聞いてみよ。
色々食べてみたが総じて言えるのは『どれも物足りない』と言うこと。使わなかった、この場にないモノというと、やはり『油』だろうか。バターや菜種油……植物性の油ならもしかしたらあるのかも知れないけど、わざわざ絞り出すのも大変だし、これも作物にしてもいいかな。
「お主がシイタケの串焼きを作ったときに言っておった、『味付けが100種類ある』の意味がわかったわい。一つの材料でまったく別の料理になるんじゃからのう。」
「そうですね。今日作ったのは材料が一つだけですけど、他の素材と組み合わせればもっともっといろんな料理ができますよ!」
「ふぉっふぉっ。それは楽しみじゃ。」
味見が終わったのでぽぽ達とおやつを食べて、本番の撮影に入りますよ。
「とりあえず材料を並べて、これだけアップで取りますか。」
「うむ。」
カメラを近づけて、お椀に入れたケーラン2つが画面の中央に来るように調整。2、3秒したら、後はさっきみたいに料理していくよ。完成して皿に移したら、またカメラを近づける。美味しそうに撮れてるかな?
「お、今調味料を入れるのか?」
「はい。オムレツとかケーラン焼きは、焼く前の混ぜるタイミングで味をつけちゃいます。」
塩、胡椒を入れてラン液を混ぜる。慣れないうちは指先でほんのちょっとでいいよ。濃すぎるよりマシ。
3つとも無事完成しましたー。料理レベルも上がったよ。
「む、最初から味がついているのはなかなかいいのう。」
「後からかけるより味が馴染みますよね。」
分量も丁度いい感じ!レシピに残すのはこれでおっけーだね。今日のお仕事はとりあえずこれでおしまい。解散......の前にお砂糖のことを聞いとこ。
「ゴインキョさん、この調味料ななさんから頂いたんですけど、他にも欲しいものがあって......『砂糖』ってありますかね?塩みたいな見た目で甘い味がするんですけど」
「ふむ、『サトウ』か。..................」
あるかな......どうかな......あるとしたらサトウキビから作られてたりする?それともテンサイ?気候はたしか、沖縄と北海道で真逆だよね。
「黒砂糖は違うか?」
「全然違いますね。」
「ふむ…………」
黒砂糖あるんだ……料理を甘くするってだけならそれでもいいかもしれないけど、煮詰めるとカラメルじゃなくて黒蜜になっちゃうよね。
……カラメル?はっ、プリン!卵と牛乳でできるよね。明日は牛乳つくろう。
「ポトフ。」
「はい!」
「結論としては、『以前はあったが、今は無い』とのことじゃ。」
「えっ、消えたってことですか?」
なんでも、以前はポーションの素材として実装されていたが、ぱっと見塩に似ていて紛らわしい、という理由で消えた……というか、実装前の果物達のようにゲーム内に存在してはいるものの、使用も合成もできないアイテムになっているらしい。
そうやって使えなくなったアイテム、他にもあるんだろうなぁ……
塩が生き残ったのは、塩がとれる“海の国”の特産物が少なかったから、ちょっとでも売れるものを増やそうってことなんだとか。
「まあ、少し手を加える必要はあるが、実装しなおすのは問題ないようじゃぞ。」
「それはありがたいです!」
「それとな、密林の国のスタッフが、73に素材を届けるついでに、砂糖や料理に使えそうなものをこっちにも届けてくれるそうじゃがどうする?」
「わ、いいんですか?でもよその国からって遠いんじゃないですか?」
「大丈夫じゃ。その者は空を飛べるモンスターを仲間にしておるから、それに乗ってここまであっという間にくるじゃろ。」
おお!騎乗できるモンスター!それはチョット見てみたいかも……砂糖よりも気になっちゃう。
「じゃあ、お願いしてもいいですか?」
「うむ。しかと伝えておこう。」
それじゃあ本日はこれにて解散!お疲れ様でした。




