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0.4.1.6 ポトフちゃんのリベンジ

「うさちゃんは仲間いないんですか?あ……触れる子がいなかったり?」

「俺が触っても大丈夫なモンスターは何種類か実装してあるが……レアモンスターばかりだし、ことごとく失敗してるんだ……そんなデバフスキルは取ってないんだけどな……」


あっ、なんか心の傷に触れちゃったみたい。しょぼしょぼし始めたので話題を変えよう。


「そういえば、デバフスキルって言うと……何でその〔溶岩の肌〕?の種族にしたんですか?」


うさちゃんはなんというか……割と人との距離が近いタイプだ。装備を着る前は一歩引いた感じだったけど、今なんて丸太に座った私のすぐ横の地面に座っている。でっかいわんちゃんかな?

それなのに、なぜ触れるものすべて傷つけるスタイルに?


うさちゃんに聞いたところ、アバターを作ることになった際、それぞれの国に一人ずつスタッフを配置することが決まっていたので、世界樹の精とか、砂漠の国のピラミッドのヌシとか、北の方にある雪山の化身とか、その国を象徴するようなキャラクターがいいんじゃないかってアイデアが出たんだとか。


そこで、火山の国を担当することになったうさちゃんは、火山っぽいキャラクターの候補をいくつか出し、最終的にオリジナルの溶岩をモチーフにしたキャラに決めたそう。


うさちゃんは生産職とって武器とか防具を作りながらソロでのんびりやろうと思ってたみたいで、ある程度一人でも戦えるようなスキルを取って……後はデバフ。


そういえば溶岩なら火属性は効かないよな、でもそれだけだとバフになるから溶岩っぽいデメリットをいくつかつけて、と今のような形になったんだそう。


「......今まで何の問題もなくこの世界ですごせてたから気にしてなかったけど......ポトフ、」


1度言葉を切ったうさちゃんが私に向き直る。


「お前に会った時に痛感したよ。綿毛(お前)に触れられないことがこんなにも辛いものなのか、って。」


私のふわふわ帽子をガン見しながらそう続け、そっとぽぽ達を私の頭の上に乗せると腕を組んで満足そうに頷いている。うんうんじゃないよ。


「でも、今はこうやって触れるでしょ?」

「ああ〜......」


そっとうさちゃんの手を取り頭へ誘導する。あったか〜い温泉に浸かったみたいな声出てますよ。


──────────


さて、休憩を終える前にぽぽ達のレベルを上げようと思う。今の私は小金持ちだからいっぱい上げられるよ……魔力が少ないからいっぱいは無理か。


ぽぽ達のステータス欄からもあげられるらしいけど......それじゃ味気ないよね。もっと必要経験値が大きくなってから使おう。

てことでザラザラっと黒晶石を取り出し魔力を込める。いっぱいお食べ〜。


【 ぽぽ がレベルアップ!】

【 ぼん がレベルアップ!】

【 てん がレベルアップ!】


よしよしいい感じ。かじってはあっちへ、かじってはこっちへ。あぁ〜癒やされる〜。


「……うさちゃんもあげてみます?」

「……ん!?ああ、いや俺の魔晶石はあげられないぞ?テイムした人間の魔晶石しか与えられないんだ。」

「うーん、私の魔晶石をうさちゃんがあげるってのも無理ですか?」

「……どうなんだろうな。」


試してみましょ。うさちゃんの手に残りの石とぽぽ達をざらっと流し込む。どうだ……?


「ふぅー…………………」

「……食べてますね。必要経験値も減ってます。」


実験は成功です!博士!うさちゃんは空いている片手で目元を覆って天を仰いでいる。わかるよその気持ち。


──────────


癒やしを満喫したところで再びフィールドへ。


「あっ!うさちゃん、今の私ならあいつにも勝てるかもしれません。」

「ああ。無茶はするな。何かあったらすぐ助けに入るからな。」


因縁の中型モンスター!ケロン!ぽぽ達がついてるから今なら勝てる!

先制して〈火矢〉を放つとこちらを向き、グッと腰を落とし……飛びかかってきた!


(見える!)


まだ速いけど避けられない程じゃない!飛びかかりの合間を縫って〈火矢〉を連発し、着実にダメージを与えていく。すると、てんちゃんが目の前に飛び出してきた!


「危ない!っ!」

「ポトフ!」


とっさにてんちゃんを胸元に抱きよせ、ケロンの攻撃から庇う。いっ、たくな〜い……吹き飛ばされて転んじゃったけど、最低保証値の1しか食らってない……うさちゃんさまさまだね。ケロン?うさちゃんが殻の人のもとへ送ったよ……


「大丈夫か!?ポトフ!」

「いやぁ思わず庇っちゃいました。そういえばこの子達に攻撃って効かないんでしたね。でも、てんちゃん危ないから飛び出しちゃだめだよ。」


手の中のてんちゃんがしょんぼりしおれていると、他の子が寄ってきて、ぎゅむぎゅむ慰めているみたい。


「てんちゃんはスキルを使おうとしたんだろうな。」

「えっ!そうなのてんちゃん?」


顔なんてないけど私にはわかる。てんちゃんは肯定してるみたい。


「てんちゃん、ぽぽちゃんもぼんちゃんもスキルを使うときは目の前に飛び出してきちゃだめだよ。」


肯定。


「スキルを使いたいときは、出来れば安全なところから……戦闘中だと難しいか。私の頭の上とか、ポケットとかそういうとこからお願いできる?」


肯定。3匹はふよふよ浮いて頭の上へ。よかった〜分かってくたみたい。


「うさちゃん、どうなってます?」

「……帽子と同化してるな。……ポトフ。」

「はい。」

「お前たちのことは俺が守るからな……」


うさちゃんが何やら覚悟を決めたような顔をしてらっしゃる......でもね、


「十分守って貰ってますよ。うさちゃんがくれた装備がなかったら私、また死ぬ所でした。」

「......ふっ。そうか。」


あ、笑ってくれたね。これからも頼りにしてますよ!


──────────


この後も引き続きレベル上げに勤しみ、とうとうレベルは25へ!

梢の町へ到着する頃にはもう日が落ちかけていた。


「今日はよく頑張ったな。」

「はい!うさちゃんも付き添っていただいてありがとうございました!」


時間も時間なので、町の入口近くにある乗り合い馬車を利用し、森の街へUターン。ぽぽ達を愛でつつ、雑談しながら帰るよ。

あ、梢の町はなかなか賑わってました。森の街と枝の村のちょうど間ぐらい?


「来週からは私以外のクリエイターさんも来るんですよね?」

「ああ。服飾デザイナーとか建築デザイナーとか......そっちはプロもいるな。他には魔法や武器を考えたり、NPCのスーツアクターみたいなことをやってくれる人も来るな。」

「へー......分野が違いすぎて会う機会無さそうですね......」

「いろんな町を順にまわって貰う予定だから案外あっさり会えるかもな。」


そんな話をしながら帰って参りました。いやーすっかり夜です。農園まで送って貰い本日は解散!


うさちゃんまたね〜。


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