0.7.2.1 ポトフちゃんとサツマイモ
さて、石の街、たんぽぽ支店へたどり着きました。冷温庫や燻製器など、設備を拡充して本日の料理を始めましょう。
1つ目のメイン食材は『サツマイモ』
まずは一番簡単なやつから作りますよ。
イモを一つ手に取り、水で湿らせてラッ葉でピッチリ包んで、窯へ。1時間くらい焼いたら、完成!『焼き芋』です!
「おっ、これだけか?随分と簡単じゃのう。」
「はい。焼きバナナみたいに、素材を焼いただけで美味しくなるんですよ。」
1つ手に取り折ってみると、湯気と共に甘い顔が立ち上る。薄黄色の断面に、1口かぶり付くと、ホックホクな芋が口の中でほろっと崩れ、優しい甘みが広がる。
「ん?俺のはなんか色が違うな。」
うさちゃんの割った芋は、艶っぽくしっとりとした黄色い断面が覗いている。
「あっ!それは食感も味も結構違うやつです。片方頂けますか?」
「ああ、味付けを頼む。」
片割れを受け取り、早速一口……甘ーい!濃厚な甘みが、ねっとりとした食感とともに舌にまとわりつく。
どちらも美味しい!けど、火を通す前だと違いがさっぱりわからないので、ちょっとだけ手を加えよう。ホクホク系はピンクに寄せて、ねっとり系はオレンジ寄りだ。
「おお、これはもはや別物じゃな。」
「美味いな。この中間くらいのやつが好きだ。」
よかった〜。中々の好感触ですね。
それでは、2人に焼き芋を摘んでもらっている間に、この焼き芋を使った料理を作りましょう。
まずは、もう一度焼き芋を作り、アツアツなうちに皮を剥いて、ボウルに入れて潰していきます。
そこに、バターを入れて混ぜる。バターを溶かすために、熱いうちに手早くやりましょう。
更にミルクと砂糖、ケーランの黄身を入れて、味見をしつつ練り練り。理想的な、もったりとした硬めのペースト状になりました。
次に、出来たペースト生地をオムレツのような形に整え、天板に敷いたラッ葉の上へ並べる。仕上げに、溶いた黄身をスプーンの背で塗り塗り……
最後に、窯に入れて、焼き色が着くまで焼いたら完成!『スイートポテト』です!いただきます!
天板に並んだ、ミニサイズのかわいいサツマイモ。
甘い香りに誘われて、1つ手に取り頬張ると、しっとり滑らかな食感と、サツマイモの濃厚で、かと言ってくどくない、自然な甘さが口に広がる。砂糖はほんの少ししか入れていないのに、これほどの甘味……恐ろしい子!
「ほう、更に濃厚さが増したのう。」
「ん、美味いな。」
ハマってるね〜。ひょいひょい摘んで口へ放り込んでます。まるでスナック菓子のように……普通の手のひらサイズなんだけどなあ。
2人が料理をつまんでいる間に、次の料理に移ろうかな。
揚げるか干すか何がいいかな?と、レシピを検索していると……
「うおっ。」
「なんじゃこれは?」
何やら騒がしいですね。どうしたどうしたと2人の元へ向かうと……
「これはサツマイモなのか……?」
うさちゃんの手元には、目にも鮮やかな紫色の焼き芋が!
「あっ、ムラサキイモですね。サツマイモの仲間ですよ。」
「毒……とかじゃないのか?」
「毒々しい色ですけど、これが普通なんですよ。」
「腐っとるわけでもないんじゃな?」
「はい、ちょうど食べ頃です。」
う〜ん、と半信半疑な2人の視線を受けながら、1口味付け。
うん。黄色いものよりもさっぱりとした甘味で美味しいね。おっと、皮の色は青紫に変えておこう。
「……なるほど、サツマイモっぽい味じゃな。」
「普通に美味いな。」
恐る恐る一口かじったお二人は、想像よりも食べられる味で安心したのか、拍子抜けした顔で食べ進め始めた。普通の食材って事を理解して貰えたみたい。よかった〜。
じゃあ次はこのムラサキイモを使っちゃおう。
さっきのスイートポテトと同じ様に潰し、バターとミルク、砂糖を加えて混ぜ、ペースト状にする。これで『ムラサキイモのペースト』が出来ました。
ジャムみたいに使っても美味しいこれを使って、もう1つ。
用意する材料はパン生地。一次発酵を終えたものがあるといいね。
これを丸パンと同じように分割し、綿棒で伸ばして広げる。
そこへ、ペーストを乗せて包み込み、中身がはみ出ないよう気をつけながら、もう一度綿棒で楕円形になるように伸ばす。
10センチ、いや15センチもあればいいかな。それくらいに広げたら、包丁で切れ目を入れます。長辺の方向に、すーっすーっと2、3本。
切り終えたら、生地の上下を掴んで、ねじる。こうすることで、白いパン生地に、切れ目から見えるムラサキイモの紫からなる、斜めのストライプ模様が出来上がるのだ。うーん、美しいね……
そして、ロープのようになったこの生地を、固結びにするように丸く成形して、いつも通りの二次発酵。
最後に窯で焼いたら、完成!『ムラサキイモのねじりパン』です!いただきます!
まずこの見た目!切れ目から覗く、ムラサキイモの差し色がとってもオシャレ!あっ、これが映えってヤツか……!?
1口かじってみると、ふかっと柔らかいパンに包まれた、滑らかな舌触りのペーストがタッグを組んで侵入してくる。飽きのこない上品で自然な甘さで、毎日おやつに食べたいくらい美味しい。
「ほお、なかなか洒落ておるのう。」
「見た目もいいし、美味いし、最高だな。」
すごいよね〜。こういう作り方をを思いつく人。切ってねじったらいい感じになるんしゃね?なんて、私じゃ考えつかないよ。
さて、そろそろほかの食材でもなにか作ってみようかな?
ん〜……甘いもの繋がりでミカン!君に決めた!




