0.7.1.1 ポトフちゃんとウオクサ
一度休憩を挟みまして、再びギルドのロビーへ戻って参りました。
全員にジャガイモとレシピを配って、かくかくしかじかと調理場に来るまでのあらすじを伝え、準備完了。さて、誰から行きます?
「では、私から参りましょう。」
我こそは、と名乗り出たのは花菱さん。早速、調理室へ入りましょう!
………
……
…
扉を開けて中に入ると、たんぽぽ族のNPCが、花菱さんに明るく話しかける。
『こんにちは!あなたも料理をしに来たんですか?』
「ええ。ジャガイモを沢山貰ったんです。」
『いいですね〜!ジャガイモ!あっ、道具の場所分かりますか?ここににしまってあるんですよ。』
ニコニコと扉の前にいた花菱さんを調理台の前へ誘導し、下の収納から調理器具を取り出して台の上へ並べる。
「まあ、ありがとうございます。」
『いえいえ。包丁と、まな板と……今日は何を作るんですか?』
「ええっと、『ジャガイモとチーズのガレット』を作ろうと思って。」
『わあ!いいですね!お料理のやり方は分かりますか?』
「恥ずかしながら、未経験でして……」
『それなら、私がお教えしますよ!ささ、ジャガイモをこちらへ!』
花菱さんはジャガイモをインベントリから取り出し、差し出されたボウルへ入れる。
少女も、自身の手持ちからジャガイモを取り出し、まな板の上へ置いた。
『こうやって、グラグラしないような向きで置いて下さい。』
「こう、ですか?」
『そんな感じです。次は包丁を利き手に持って……』
──────────
一方ポトフの方はというと。
皆さんが料理を作っている様子を見やりつつ、いつも通り作物の作成をやろうと思います。
湖の国の特産品が欲しいとのことだったので、魚介類……魚介植物?を作ろうかな。
湖ってことは、淡水だよね。淡水魚って白身魚が多いイメージ。とりあえず調べてみよう。『湖 食べられるもの』『淡水 魚』っと。
………
……
…
ワカサギ!そうだね。湖と言えばワカサギだ。
サケは……海で成長して、川に来るんだよね?つまり、漁場は海か河口近辺?
うーん、湖の国って、上空から見た感じ海は遠いんだよね。だから、後回しでいっかな。また海が実装される時にでも作ろう。
イワナ、アユ……これは山林の国の川の上流とかに置きたいかな。ついでに作っておこう。
ウナギ……は、また別枠だな。まあ、捕れるのは川だし、一応作っておこう。
さて、いろいろと調べて見たところで、どんな形にするか考えよう。うーん、海の魚にも流用できるような形がいいよね。
全体像は……水底から水面に向かってながい茎を生やし、脊椎骨のような骨組みをつけ、そこに肉付けをして、流線型な魚の実をつける。こんな感じでいこうかな。
まずは長い茎。幹のようなものなので、食材ではなく素材カテゴリに入れておこう。頑丈なロープとかにできると思う。
生え方の確認はまた今度、ゴインキョさんでもうさちゃんでも、誰かしらスタッフさんがついてるときに水中を見に行こう。
次は実。まずは骨。中骨とそこから左右に伸びるトゲトゲで、小骨は無し!この、ひと目見ただけで魚の骨だ、って分かる形状は残して置きたいんだよね。
ワカサギサイズの、骨ごと食べられるような小さいものは、火を通すと脆くなるようにしておこう。口の中刺されるの嫌だからね。
シダの葉のようなこの骨を挟み込むような形で肉付けして、皮、鱗をつける。剥がれやすく、取れやすくしておこう。
これでできあがり!えー、これは……『ウオクサ』です。細かく名付けると、『ワカサギソウ』。この調子で他のウオクサも作るよ。『マスクサ』と『バスクサ』と……『ニジマスソウ』ってなんかレアリティ高そうだな。
おっと、白子と卵のこと忘れるところだった。卵は種って事にして、白子は……白子でいいか。中心部に詰めておこう。これも身の部分と同じで、中骨を挟み込むように表と裏に。どちらが入ってるか、あるいは、身しか詰まっていないかはランダムにしておく。食べてからのお楽しみ〜。
後は……問題児のウナギ。
といってもまあ、骨を外しやすくしておくぐらいで、見た目も中身もウナギ。頭の方を根っこにして、ゆらゆらと水底から立ち上る海藻のような感じにします。名前は『ウナギソウ』。
湖の国の特産品はこんなもんかな。
(……フ……ポトフ……聞こえますか……今あなただけに直接呼びかけています……)
一通り作り終えてホッとしていると、どこからともなくささやき声が聞こえた。スタッフさんだと思うけど……えっ、誰?
(……名前を……白子という名称を変えるのです……)
あっ、はい。ああ、調べたら精巣って普通に出てくるもんね……アウトだったか……じゃあ『シロワタ』に変えておきます。
そういえばワタの部分作ってないな……苦いやつも多いしな〜ワタを使う料理が出てきたらまた考えよう。
──────────
さて、この作成中にも、合間合間にチュートリアルの改善点を話し合ったりしておりまして。
今は3人目の闇夜さんがピザの味見をするところです。
『んむっ、美味しい〜!貴方も食べてみて!』
「あ、ハイ、えーっと……」
おっと、どうやら困ってらっしゃる様子。少女が食べるところを見たあと、あからさまにまごついて、私の方に視線を向けました。
はいはい、ヘルプですね。どうしました?
「あの食べ方だと、口元見えちゃうんで、その……」
あっ、のびたチーズを下からお迎えするスタイル……
闇夜さんは、食べる時に上下にわかれた嘴マスクの下の部分を外しているのだが……確かにあの食べ方だと、顔を傾けなきゃいけないから、口元が見えちゃいますね。
「ガレットと同じような食べ方で大丈夫ですよ。こうやって……ん、美味し!」
少女が作ったものを1つ手に取り、お手本を見せる。う〜ん、やっぱり焼き立ては美味い!
「……美味!」
闇夜さんも、私に習いピザを口に運ぶと、今日イチの声が出ました!よかった〜、お口にあったみたいです。




