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0.7.0.2 ポトフちゃんと湖の国

・間違えて一つ飛ばしてお話を上げてました。コメントでのご指摘ありがとうございました。

 お次は料理人用のチュートリアルを作りますよ。

 さっきより凝ったものということで、まず用意するのは丸パンと同じ材料。序盤の作業も同じだよ。

 混ぜて捏ねて、生地を4等分にして丸め、ラッ葉に包んで休ませます。



 その間にトッピングの素材になるものを作るよ。用意するのはトマトだけ。

 ヘタを取って、適当な大きさにざっくり切って、鍋に入れて火にかける。潰しながらグツグツ煮ていくよ。これまた結構時間かかるんだよね。何とかして短縮できるといいんだけど。すぐに発酵させる箱とか、あっという間に煮詰められる鍋とか。乾燥棚みたいなのがあるなら、出来ないかな?


「ふむ。出来ると思うぞ。作ってもらうか?」

「いいんですか?」

「うむ。そういう魔道具を作ってるおる者がおるからのう、頼んでみるぞ。」

「お願いします。」


 で、作ってもらえることになりました。「ひとまず作ってみるが、細かいところは直接会って話し合いたい。」との事なので、午後からは、湖の国にいらっしゃるというスタッフさんの元へ向かいたいと思います。


「他にも欲しい魔道具はないか?」

「ん〜……そもそも、今ある魔道具ってどんなものがあるんですか?」

「使い切りのスクロールや、魔力を消費しないが回数制限のある魔法の杖なんかがあるぞ。それから、乾燥棚もそうじゃし、そこにある水が無限に出てくる水瓶もそうじゃ。それから、草原の街なんかで見かける街灯も魔道具じゃな。」

「街灯……つまり、電化製品みたいなものも含めて考えてもいいですか?」

「うむ。構わんぞ。」



 つまり……家電!だったら冷蔵庫が欲しい!温度を調節して冷凍庫にも転用出来るようにして……いや、温度と湿度を調整出来る箱にしてもらえば、発酵器としても使える?よし、それでお願いしよう。


 それから、ミキサー。というか、ミンチにするやつ、ミンサーだっけ?ああいうのが欲しい。出力をいじって、粗みじんからスムージーまで、対応できるやつが欲しいなあ。


 あと……そうだ、燻製器が欲しい。クレープや、パンを盛り付けてる時に、何度も思ったんだよね。『ハムとチーズを挟んで……ハムないんだった。』『上に切り込みを入れてソーセージを挟む!……ソーセージないや。』って。

 作りは冷蔵庫みたいな感じで、棚板を網にして貰おう。


 そうやって要望を伝えつつ、トマトを煮込み、だいたい30分程経ちました。ドロドロになっていい感じ。

 あとは、火から上げて粗熱を取るため放置。


 パン生地の方はもういいかな?インベントリへ入れて、これ以上発酵しないようにしておこう。


 それじゃ、そろそろお昼なので一旦休憩してきまーす。


 ………

 ……

 …


 ただいまユービキアス。


 トマトの粗熱がとれたので、こちらも一旦インベントリへしまいます。料理の続きは移動してから。


 ってことで、湖の国へGO!


 …………

 ………

 ……


 樹海の国から東方向、すぐ隣にあるのが、ユービキアスで最も栄えている、と言われている『湖の国』

 湖の上にある都市国家で、魔法で浮いているらしく、国の面積こそ小さいものの、その優れた技術力は他の国の追随を許さないそうだ。


 上空から見える街は白塗りの家屋が立ち並び、そこかしこに水路が流れていて、水の都、ヴェネツィアを思い起こさせる。

 都市の中央には、美しい白亜の城、いや、聖堂かな?サグラダ・ファミリアのような、荘厳で巨大な建造物がそびえ立っている。


 その中央区の外壁周辺には開けた場所があり、騎乗モンスターが発着出来るようになっているので、そちらへ着陸。


 東側の門を抜けて街へ入ると、馬車同士がすれ違えるほど広い道が真っ直ぐ聖堂まで続いている。

 行き交う人々はとにかく多種多様。人間、エルフ、植物人……水路を泳ぐあの人はもしかしたら人魚かも。


 真っ白な街を彩る、鮮やかな屋台を目で追いながら商人ギルドへ向かいます。あっ、農園みっけ。


「ポトフ〜ゴインキョ〜。」


 聖堂近くまで来ると、どこからともなく名前を呼ばれる。


 小鳥のさえずりのような可愛らしい声の方へ目をやると、ビスクドールのような少女がこちらに向かって手を振っている。

 そのまましゃなりしゃなりと歩み寄ってきたのは、宝石のような青い瞳に、煌びやかな縦ロールの髪を持つ、水色を基調としたミモレ丈のロリータファッションに身を包んだ、美しい少女。


「初めまして〜私、メリーと申しますの〜。気軽にメリーちゃんとお呼びくださいまし〜。」


 この、トロリと目尻を下げて微笑む彼女こそ、魔道具を作ってくるスタッフさんである。


 迎えに来てくれたメリーちゃんについて行き、商人ギルド内のキッチンへ向かうと、森の街には無かった大きな箱が2つ置いてある。どちらもガラス扉で中が覗けるようになっていて、白い箱は普通の棚板、黒い箱には網が棚板として設置してある。


「こちらがポトフご所望の品ですわ〜。白い方は『冷温庫』黒い方は『燻製器』ですの〜。」


 上限は100度、下はマイナス100度。

 100ってことは沸騰させられるのか。煮詰めたりするのは様子を見ながらやりたいから、あんまり使わないかな?

 冷やす方は、瞬間冷凍とか出来そうだね。


 コップに入れた水で早速実践!中に入れて、ガラス扉にそっと触れると、数字が浮かんでくるので、スイスイっと操作する。


 40度で10分……ぬるーい。

 5度で2時間……冷んやり!

 マイナス10度で5時間……凍ってるー!


「いかがかしら〜?」

「いいですね!完璧です!」


 特に問題なし!冷温庫はこれでよし。


 お次は燻製器。まずは燻すための木材。インベントリのこやしになっていた端材を使います。なんの木かはわからないけど、鼻を寄せると、ほんのり甘い香りがする……気がする。

 それから燻製にする食材。お試しってことで、ゆでケーラン。燻製卵ってあったよね?


 味付けは醤油。お椀にラッ葉を敷いて、ゆでケーランを入れ、醤油をかけてピタピタになるように包んで、低温にした冷温庫で24時間放置。いやー、作ってもらって本当に良かった!一瞬で『味付きケーラン』の完成です!


 醤油に染められたプリプリの味玉。一口かぶりつくと、その身に染みた醤油の旨みがジワっと舌に広がる。黄身にもほんのりと味がついて美味しい!


「本来なら1日も漬け込まねばならんかったのか……うむ。手間をかけただけあって美味いのう。」

「あ〜うめェ〜。」


 ?……!?な、なんか今、すっごく低い男性の声がメリーちゃんから聞こえたんですが!?えっ!?

 私の困惑を他所に、何事もなかったかのように「美味しいですわね〜。」と味玉を小さい口で啄みながらゴインキョさんと歓談している。

 びっくりした……幻聴?いや、そういうプレイスタイルの人か……?


 え、えーと、それじゃ気を取り直して、実践してみよう。

 端材を火で炙って焦げ焦げにして、燻製器の一番下のちっちゃいかまどに設置。煙はちゃんと出てるね。ヨシ!

 それから、上の網にしっかりと水気を拭き取って乾燥させた味ケーランを置いて、扉を閉め、タイマーを1時間にセット。燻製開始!

 タイマーをスタートさせると、もわもわっと燻製器内に立ち込め……出来上がりました。早い!


 取り出した卵は更に色味が濃くなってる。成功かな?とりあえず一口。

 ほーう。醤油の香りに、スモーキーな香りが加わり、いっそう深みが増してるね。クセの強くない香りだしこれはいいかも。


「ふむ……」

「煙の匂いが移ってますわね……これは……成功でいいのかしら……?」


 首を傾げながら微妙な感じで食べ進めるお二人の。なんだかピンと来てない感じですね。

 スモークの味はまだこの世界の人たちには早かったか……

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