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【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、学園で無自覚に無双する〜  作者: 茨木野
第7章

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93.勇者、弟のために剣を作る



 翌日。

 俺は【素材】を集めて、いったん自宅に戻ってくる。


「あーにーうーえー!」


 俺の部屋のベッドで寝転んでいた、義弟のミカエルが、俺に近づき抱きついてくる。


「もー! どこいってたです? さみしかったです!」


 すりすり、と頬ずりするミカエルの頭を、俺はなでる。


「ちょっと必要なものを色んなとこから集めてきてさ」


「ひつようなものー? なにのです?」


「ガイアスに作ってあげる剣の素材だよ」


 ミカエルは、ぶくーっと頬を膨らませる。


「ずるいです! がいあすばっか大事です!」


「そんなことないよ。お前も大事だって」


「ならいいです♡」


 そのときだった。


「兄さん、帰ったの? 朝早くから出かけたけど…………」


 俺の部屋に、弟ガイアスが入ってくる。


「おう、ただいま」


 ガイアスが俺に近づいてきて、ミカエルをベリッと引き剥がす。


「おまえは! どうしていっつも兄さんにくっつくんだよ!」


 ぐにぐにと義弟の頬を引っ張る。


「がいあす嫉妬は醜いです。自分もあにうえに抱きつきたいなら、ペタペタすればいいです?」


「そ、そんなこと1ミリたりとも思ってないよ! ばかっ!」


 ぺんっ、とガイアスが義弟の頭をたたく。


「良いところに来た。ちょっと付き合ってくれないか?」


「いいけど……どこいくの?」


 俺はガイアスの肩に手を乗せる。


「ちょっとデート」

「で、ででででデート!?」


 顔を真っ赤にして、動揺しまくる。


「ミカ、おとなしく留守番してるんだぞ」


「わかったです。ぼくは空気が読める弟です。あにうえとのランデブーを楽しむが良いです、がいあす」


 義弟に手を振って、俺たちは【とある場所】へと転移する。


「寒っ……! なにこれ……夏なのに……吹雪いてる?」


 ガイアスが体をさする。

 俺は亜空間から冬用のマントを取り出し、弟にかける。


「ありがとう兄さん。……ここどこ?」

「ここは【ドワーフの里】だ」

「ドワーフ? ……あの、手先が器用で有名な?」


 目の前に広がるのは、氷雪に包まれた、深い山間の里だ。


 鋼鉄の外壁に包まれており、里の奥からカーン! カーン! と金属が打ち付け合う音がする。


「すごいよ兄さん……ドワーフの隠れ里は決して見つからないって有名なんだ。どうしてこんなとこ知ってるんだよ」


「前世のときにちょっとな」


 俺は弟を連れて、外壁に近づく。


『そこのお前! 止まれぇ!』


 外壁の上に取り付けられた、拡声器から、怒鳴り声がする。


『人間の立ち入りを許可しておらぬ! 早々に立ち去れ! でなければ蜂の巣にしてやるぞ!』


 外壁のあちこちに、機関銃が取り付けられている。


 無数の銃口が俺たちに向けられていた。


「怪しいものじゃない。俺は【ガンドール】のじいさんに会いに行きたんだ」


「ガンドール?」


『なにぃ!? どうして【最長老】の名前を知っている! この2000年一歩も里の外に出たことがないというのに!?』


 あいつ根っからの引きこもりだからなぁ。


『怪しいヤツだ! 撃ち殺せぇ!』


 銃口から、激しい火花が散る。


 ドガガガガガガガガガガガッ!


 豪雨のごとき弾丸が、俺に向かって発射される。


 一斉掃射を直撃しても、俺はケロッとしていた。


『む、無傷だとぉおおおお!?』


『ばかな!? この銃弾には貫通力を高めるルーンが刻まれているはず!』


『神竜すらも撃ち殺す銃弾を受けて、なぜ無事なのだ!?』


 ドワーフたちの動揺が声から伝わってくる。


「兄さん、なんで防御なり弾くなりしなかったの?」

「敵意がないってことを示さないと駄目だろ? 反撃したら余計な争いを産むだけだ」


 ややあって。


 固く閉ざされていた外壁の出入り口が……開いた。


 出てきたのは、年老いたドワーフだ。

 その周囲には、護衛らしき、武装したドワーフたちがいる。


 老いたドワーフの、ガンドールが俺に近づいてくる。


「長老! いけません!」

「こいつは銃弾の雨を喰らっても平然としていた化け物ですよ!?」


 気にせず彼はやってきて、ニッと笑う。


「久しいな、親友!」


 バシッ! と俺たちは握手する。


「気難しいで有名な最長老さまが! あんなにも親しげに接するなんて!」


「すげえ! いったい、なんなんだあの黒髪の少年は!?」


 俺たちは再会のハグをする。


「よく俺だって気づいたな、ガンドール?」


「ハッ! このわしを誰と心得る。数多の武器を作り出した最高の鍛冶職人じゃぞ? ものの真価を見抜く目には自信があるわい!」


 ガンドールは深々とうなずく。


「その隠しきれぬ圧倒的な強者のオーラを出す人間なんぞ、勇者ユージーンを置いて、他におるまいよ」


 こんな感じで、あっさりと目的の人物に合うことができた。


 ややあって。


 俺たちはガンドールの屋敷へと案内された。

 

 応接室にて。


「それでユージーン。わしに何用じゃ?」


「武器を作りたい。作業場を貸して欲しいんだ」


「武器? おぬしには聖剣があるであろう?」

「俺のじゃないよ。弟のだ」


 ソファに座るガイアスの、頭をなでる。

 バシッ、と弟が手を払う。


「なんとユージーン。おぬし弟がいたのか?」


「違う違う。転生先の弟。今俺はユリウス=フォン=カーライルっていうんだ」


 じっ……とガンドールがガイアスを見やる。


「なるほど……ユージーンに劣らぬ、素晴らしい剣士だな。双剣使いじゃな?」


「ど、どうも……えっと、なんでわかるの?」


 ガイアスがおどおどしながら言う。


「おまえ何びびってるの?」

「ガンドールって言えば伝説の武器職人じゃないか! 緊張して当然だろ!?」


 そんなものだろうか?


「わしは目が良いからな。筋肉の付き方や手の【たこ】などでわかるんじゃよ。して、こやつの双剣、作るとなると、素材はどうする?」


「もう素材は取ってきたよ」


 俺は亜空間に収納していたアイテムを、ドサッ! と目の前に出す。


「なんと! 【世界樹の枝】に【灼竜帝の火玉】! 【永久凍土の氷】! どれも入手困難な素材ばかりではないか!?」


 ガンドールが目をむいて叫ぶ。


「他にも最高の剣の素材がそろっておる! おぬし、どれほどの時間をかけて集めてきたのじゃ?」


「え、昼飯前にちょろっと」


 愕然とした表情で、ガンドールも、ガイアスも俺を見やる。


「いや……久しぶりじゃが、うむ。思い出したよ。おぬしがどれほど規格外な存在かをな。さすがは勇者じゃな!」


 それはさておき。


 俺たちは作業場へとやってきた。

 剣を作るための道具が全部そろっている。

「そんじゃちょっと時間くれな、パパッと作るからな」


「え、ガンドールさんが作ってくれるんじゃないの?」


 ガンドールは苦笑していう。


「ユリウスは、わしなんかよりもよっぽど腕の立つ職人じゃよ」


「ええ!? で、伝説の武器職人である……ガンドールさんよりもすごいんですか!?」


「おうとも。もとはヤツはわしの弟子じゃったのだが、すぐに追い抜いてしまってな」


 ガイアスは目を丸くして、ため息をつく。

「兄さんって……本当に何でもできるんだね。逆に何ができないの?」


「なんだろうな? わからん。……ま、いいや。すぐ作るからさ。ちょっと待ってな。ガンドール、作業着借りるぞ」


「おうよ。ここにあるものは全部好きに使うがよい」


 ふたりが作業場から出て行く。


 俺は集めた素材を使って、弟のことを思いながら、剣を作る。


 かーん! 

 かーん! 

 かーん! 


 ややあって。


「できたぞー」

「早くない!?」


 応接室へと戻ると、ガイアスが驚いた表情で言う。


「よく知らないけど、武器って長い時間かけて作るものなんじゃないの? まだ作業場入って5分も経ってないよ?」


「え、空間魔法で、作業場の1分を10日に変えただけだぞ?」


「もうなんでもありか!」


「うむ、さすがじゃユリウスよ。どれ、作った双剣、さっそく見せてはくれぬか?」


 わくわくした表情で、ガンドールが俺に近づいてくる。


 鞘に入った2本の剣を、俺は渡す。


「こ、これは!? なんと……! なんと見事な剣じゃあああああああああ!」


 刀身を見てないというのに、ガンドールがその場で腰を抜かす。


「おぬし……この2000年まったく剣を打ってないというのに、前世のときよりも腕が上達してるとは!」


「まあ、弟のために愛情を込めて作ったからな」


「ば、ばかっ! 人前で変なこと言うなよ! もうっ!」


 ガンドールは恐る恐る、剣をガイアスに手渡す。


「ガイアスよ。この剣は……とてつもない一品じゃ。断言しよう。この世に並ぶもののない双剣じゃ」


「そんなに……すごいの?」


「名付けるならば……そう、【無双剣】じゃろう!」


「無双剣……」


 ガイアスが、ゆっくりと、剣を引き抜く。

 紅玉の剣と、蒼玉の剣。

 

「綺麗……」

「その身に秘めた莫大な力、感じ取れるじゃろう?」


 赤い刀身は、常に炎が写っている。まるで燃え続けているようだ。


 青い刀身は、常に冷気を纏っている。


「兄さん……こんなに素晴らしい剣、ボクのために作ってくれて……ありがとう!」


 剣を胸に抱いたガイアスが、笑顔で言う。


「おう、どういたしましてだ」

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― 新着の感想 ―
[一言] >「兄さんって……本当に何でもできるんだね。逆に何ができないの?」 空気を読めない(*゜▽゜)ノ
[良い点] 聞き分け良すぎるミカエルかわいい! [気になる点] >「兄さんって……本当に何でもできるんだね。逆に何ができないの?」 空気を読むことじゃないかな? [一言] ガイアスにすごい武器が!…
2020/08/01 18:33 退会済み
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