92.勇者、弟と人外レベルの模擬戦する
同好会仲間と、花火をしてから、1週間が経過した。
8月も中旬に入った、ある朝のこと。
俺とガイアスは、海の上に立っていた。
「そんじゃ模擬戦するぞ。5分間で一撃入れられればおまえの勝ち。いいな?」
ガイアスはうなずき、創生魔法で、双剣を作り出す。
「いくよ、兄さん!」
弟の体から、莫大な魔力と闘気が噴き出す。
それらが渾然一体となって、ガイアスを超強化する。
これは禁術。
身体強化奥義のひとつだ。
「せやぁああああああああ!」
ガイアスはまず手始めに、光を超える速度で突っ込んでくる。
海の上を当然のように走り、激しい水柱をあげながらの刺突。
ずばぁあああああああああん!
俺は突きをぎりぎりで見切り、半身をよじってそれを回避する。
ガイアスは攻撃が当たらないと思った瞬間、俺の目の前から消える。
「転移か。やるなぁ」
上空にとどまっているガイアスが、眼下の俺めがけて手を伸ばす。
「【煉獄業火球】!」
極大魔法を無詠唱で放つ。
超巨大な火の球が俺めがけて高速で飛翔。
俺は剣を振り上げ、切り飛ばそうとする。
「あまい! 【時間停止】!」
その瞬間、世界に流れる時間が停止する。
時空間魔法。
魔を極めた先にある、時間操作の魔法だ。
前世での俺の師匠、賢者サリーすらも習得できなかった術。
勇者神しか習得できなかった魔法ですらも、ガイアスは身に着けていたのだ。
さて、時間が止まっているので、俺も身動きが取れなくなる。
そのすきにガイアスは、煉獄業火球をあと10個だし、俺めがけて放つ。
時間が動き出し、連続して10度の、激しい爆撃が起こる。
どがぁあああああああああああああああああああん!
海が蒸発し、砂地になる。
「時空間魔法使えるなんてやばいな」
俺はガイアスの背後でつぶやく。
「くそっ! なんで無傷なんだよ!?」
「え、おまえが時間停止を解いた刹那に、転移しただけだぞ? なにも難しくないだろ」
「そりゃあんたならね! この化け物が!」
ガイアスが至近距離で煉獄業火球を放つ。
爆風が煙幕となる。
そのすきにガイアスが、俺から距離を取る。
「そんなことないぞ。そら、【時間停止】」
世界の時間がまた停止する。
「ほいっ」
魔法の名前を呼ばず、俺は同時に無詠唱で、煉獄業火球を放つ。
「そら、時よ動け」
爆撃が再び海を干上がらせる。
その刹那、ガイアスは転移して、俺の背後を取り、一撃を放って来る。
ピタッ!
「ほらぁ、できるじゃないか。すごいすごい」
俺はガイアスの双剣を、指でつまんで止める。
「くそ! 魔法名すら言わず極大魔法を同時に放ってるやつに褒められてもうれしくなんだよ!」
「いやいやできるっておまえも。ちゃんと見てたんだろ?」
止まった世界だとしても、俺たちは体の中に時間停止対策の結界を常に展開している。
だが弟は、きちんと見ていたはずだ。
俺の技を。
「くらえ!」
その瞬間、俺の周囲に巨大な業火の球が、複数同時に展開した。
俺が今さっきやって見せた技だ。
「うん、正解」
魔剣を取り出し、俺は軽く横に振る。
パリィイイイイイイイイイイイイイイン!
攻撃反射によって、ガイアスの出した業火球がすべて弾き飛ばされる。
それらは明後日の方向へとすっ飛んでいく。
だが散らばっていく前に、ガイアスの双剣がそのすべてを切り伏せる。
虚空剣。
万物を切り割き、虚空へと消し飛ばす、剣聖の剣術だ。
「街へ誤って飛んでいかないようにしたんだな。やるじゃん」
「ぜぇ……! はぁ……! くそっ!」
ガイアスは複数の極大魔法を、刹那の間に転移・切り伏せた。
体力をかなり消費したのか、汗びっしょりで、肩で息をする。
「もうやめるか?」
「まだだよ。まだ……兄さんに【すべて】を見せてない!」
「ほぅ、まだ奥の手があるのか?」
こくり、とガイアスはうなずく。
目を閉じて、呼吸を整える。
吹き出ていた禁術のオーラが、一瞬、消える。
「受け止めて兄さん。ボクの……全力を!」
そのときだ。
ガイアスの両手に、すさまじい量の魔力と闘気が噴き出す。
それらは混ざり合って、弟の体内に取り込まれた。
ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
吹き荒れる禁術のオーラは、先ほどの非ではなかった。
荒れ狂う竜巻のごとき莫大な力は、弟の体を変化させる。
美しい、金の髪の毛は、純白へ。
青い瞳は、紅玉のように赤くなる。
そして目の周りには、雷をほうふつとさせる、痣が出現した。
それはともすれば、美しい入れ墨のように見える。
「【鬼神化】。身に着けてたか」
禁術の一段上に存在する、身体強化の秘奥義だ。
全魔力と、全闘気を、寸分狂いもなく等量まぜて、体内に取り込む。
どちらがほんの数ミリ量がずれるだけで、死を招くほど危険な技だ。
だが成功させれば、鬼神のごとき強さが手に入る。
「鬼神化なんて、俺教えたっけ?」
「ううん。自分で技を極めて行くうちに、自然とたどり着けたんだ」
「そうか。素晴らしいな、弟よ。さて、じゃあ行くか」
俺は魔剣を構える。
ガイアスは、両手に双剣を持つ。
「いくよ、兄さん!」
「来い、弟よ」
その刹那、弟は消える。
転移? 否、超高速で動いたのだ。
鬼神となれば、ただの動きが転移に等しくなる。
がきぃいいいいいいいいいいいん!
ガイアスの双剣の一撃を、俺は剣で受け止める。
その余波は海を割り、地を割る。
星の一部を切り取るほどの一撃だ。
しかし即座にガイアスが、創生魔法で大地を修復。
素晴らしい一撃だ。
このまま連撃につなげていくのだろうと思った、そのときだ。
ばきんっ!
ガイアスの双剣が、粉々になったのだ。
「くっ!」
即座に剣を作り直し、ガイアスが振る。
ばきんっ! ばきんっ!
「くそっ!」
「うーむ……」
その後もガイアスは剣を振るが、そのたびにバキバキと壊れる。
俺が武器を破壊しているのではない。
勝手に、剣が壊れるのだ。
ややあって。
「よし、5分。終了だ」
ガイアスは鬼神化を解く。
陸地へとふたりで転移する。
弟はぎりっ、と歯噛みしていた。
「結局、一撃食らわせられなかった……ちくしょう」
「いや、おまえは十分だよ。おまえはな」
俺はガイアスの手に握られている、双剣を見やる。
魔法で弟が作ったものだ。
刃が折れている。
「兄さん、ボクは十分って、どういうこと?」
「おまえも薄々わかってるだろ」
ガイアスは折れた双剣を見やる。
「この剣のこと?」
「そうだ。明らかに、お前の強さに、武器がついていけてない」
先程の戦いを思い出す。
剣は振るたび壊れていた。
鬼神のごときガイアスの膂力とスピードに、剣が耐えきれてないのである。
「もっと強力な剣を創生したほうがいい?」
「いや、魔法で作れる武器は神意鉄の武器までだ。鬼神の強さに耐えられない。それは今のバトルで証明されただろ?」
現にガイアスの武器は、オリハルコンのものなのだ。
「……なんか今更なんだけど、ボクってオリハルコンさらっとポンポン作れるようになってない?」
「え、それがどうしたんだ?」
「なんか兄さんと一緒にいると……最近感覚がマヒしてきて、なにが常識なのかわからなくなってくるよ」
深々とガイアスがため息をつく。
「とにかく、魔法での武器創生は便利だけど、そのつどタイムラグが生じるし、鬼神化したガイアスに耐えられない」
「じゃあ、どうすればいいの?」
俺は少し考えて、ぽんっ、と弟の頭をなでる。
「兄ちゃんに任せとけ。最高の武器、作ってやるからさ」
【※読者の皆さまへ とても大切なお願い】
今回から第7章がスタートです!
引き続き頑張って書いていきます!
「面白い!」
「続きが気になる!」
「ガイアスがんばったな!」
と思ったら、
下の【☆☆☆☆☆】から作品への応援おねがいいたします!
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つまらなかったら星1つ、素直に感じた気持ちで全然かまいません!!!!!!!!
なにとぞ、よろしくお願いします!




