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【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、学園で無自覚に無双する〜  作者: 茨木野
第5章

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68.聖騎士団、壊滅する



 転生勇者ユリウスが、聖騎士ヘンリエッタを撃退した、その翌日。


 王都某所。

 天導てんどう教会。


 純白の間には、円卓が置いてあった。

 その椅子は13。


 1つは空席となっていた。


「まったくさぁ、ヘンリエッタも馬鹿げた報告してくれるよねぇ」


 聖騎士の1人、小柄な少年ナインが言う。


「学園内にいたのは規格外の大悪魔? しかも何もしないだけで負けたとかさぁ~さすがに嘘でしょ」


「そうだべ。きっと負けたのが恥ずかしくて、過剰評価してるだけだべ」


 太った男トゥエルブが小馬鹿にしたように笑う。


「われら神に選ばれし聖騎士【13使徒】。我らが敗北することなどあってはならん。ヘンリエッタの恥さらしめ」


 神経質そうな男、トゥーがため息をつく。

 そう、彼らこそ天導教会最強の騎士たちだ。


 現在、ヘンリエッタだけが欠席している。


「それで、あの負けたザコの馬鹿はどこにいるっしょ?」


 軽薄そうな男スリーが言う。


「部屋に引きこもっていますわ。なにやら心に深刻なダメージを喰らったそうです。心配ですわ」


 長い髪のフォーが言う。


「はっ! 聖騎士のくせに負けたあんなゴミに、同情の余地なんてないっすよぉ~?」


「全くもってその通り。しかも負けた言い訳までするとは。聖騎士失格! 即刻クビにするべきと、【上】に報告すべきである!」


 ファイブとシックスが、うんうんと同意する。


「そもそも悪魔ごときになーに遅れ取ってるんだよ?」


「なにが『アレは地獄から来た真の悪魔だ。理を外れた力を持つ。挑んではいけない』だよ。ヘンリエッタはおおげさなんだよ」


 と、全員がこの場にいない彼女のことを非難していた、そのときだ。


「みな、静粛に」


 円卓に座り、腕を組んでいた男が小さくつぶやく。


 それだけで、残り11人の騎士達が黙った。


「ヘンリエッタが敗北したことは事実。相手は相当な強さであると考えた方が良い」


「リーダー! あんた、あの腰抜けババアの言うこと信じるのか?」


 リーダーたる騎士【ファースト】は、静かにうなずく。


「天に仕える我らが同胞が、虚偽の申告でみなを混乱させるとは思えない」


「で、では……どうすると?」


 ファーストは立ち上がる。


「みなで総攻撃を仕掛けるぞ。なに、いくら強いと言っても、所詮力を合わせた我ら最強の聖騎士たちにはかなうまい」


 ……騎士達が余裕でいられたのは、そのときまでだった。


 ガチャン……と、部屋のドアが開いたのである。


「邪魔してすまんな。俺、ユリウス」


「「「なっ!? なにぃいい!?」」」


 聖騎士は全員が、驚愕の表情を浮かべる。

 そこにいたのは、ヘンリエッタから報告のあった黒髪の少年。


 大悪魔ユリウスだ。


「そんな馬鹿な! この部屋は神聖なる結界が張ってあり、聖騎士以外立ち入れないはずだぞ!?」


「え、あんな紙みたいなのが結界だったの?」


「しかもこの教会内部は聖なる領域! 神の許可なく入ることはできない! まして悪魔は強力な神聖魔法により消し飛ぶはず!」


「え、普通に入ってこれたけど?」


 ざわ……ざわ……。


 聖騎士達は、全身に汗をかいていた。


 彼らは皆、並ぶものの居ない猛者ばかり。

 それでも……今の目の前に居る大悪魔には勝てない。


 本能が……そう訴えていた。


「う、うわぁああああああああ!」


「サーティ! 待て! 早まるな!」


 最年少の聖騎士が、ユリウスめがけて攻撃を仕掛ける。


 騎士達は全員、【神器】と呼ばれる、神から授かった最強の武器を持っている。


「ぼ、ぼくの【天の機関銃マシンガン】! くらえぇええ!」


 ズガガガガガガガガガ!


 1秒に凄まじい数の、銀の弾丸が射出される。


 ユリウスはそれを至近距離で受けた。


「え、なにこれ? ツボ押しマッサージ?」


「う、うわぁああああああ!」


 ズガガガガガガガガガ!


 ユリウスは銃弾の雨を受けても、ものともしていなかった。


「このぉ! 化けものめ!」

「天にその命を返しなさい!」


 天の槍、そして天の斧を持ったふたりが、息の合ったコンビネーションで斬りかかる。


 ガキィイイイイイイイイイン!


 2人の武器は、相手に届く前に弾かれた。


「何が起きてるんだ!?」


「え、あ、すまん。魔力の鎧きたままじゃ失礼だったか?」


 とぼけた表情で、悪魔が邪悪に笑いかける。


「ひぃいいいいい! 怖いよぉおおお! ママぁあああああああ!」


 その笑みを見ただけで、まだ幼い聖騎士は泣き出してしまった。


「ど、どうするリーダー! このままじゃ俺ら壊滅だぞ!」


「…………」


「リーダー!」


 ファーストは恐怖で動けないでいた。

 彼はこの騎士の中で、誰よりも強い。


 だからこそ、相手の規格外の強さを、わかってしまったのだ。


「か、勝てない……ヘンリエッタの言ったとおりだった。こいつは……この世の理の外に存在する、地獄よりやってきた破壊と死の大悪魔なのだ……」


 するとユリウスは、ファーストに近づいてくる。


 残りの騎士達は、武器を放り投げて、惨めに泣きながら逃げていった。


「あんたヘンリエッタの知り合いか?」


 ファーストは、その場に平伏した。

 話しかけられただけで、伝わってくる。


 圧倒的なまでの、死。


「申し訳ございません! ヘンリエッタは、貴方様に楯突いた女は! ここにはおりませんぅうう!」


 ファーストにできることは、必死になって命乞いをすることだった。


 それほどまでに、この男からは、圧倒的な破壊の力を感じる。


 気分を害せば……死ぬ!


「え、なんでそんな大仰に謝ってるの? ……まあいいや。これ、返しておいて」


 ユリウスはどこからか、黄金の剣と盾、そして鎧を取り出す。


「い、今それをどこから……?」


「え、【異空間】に収納していただけだけど?」


「な、なるほどぉ! さすがは大悪魔さま! いにしえに滅びた異空間魔法をお使いになさるとはぁ! いやさすがだぁ!」


 もはやファーストに、先ほどまであった余裕はない。


 今は必死で媚びを売り、この場を生き抜く。

 ただそれだけを考えていた。


「これ、あの人に返しておいて。壊しちゃったから、新しく作り直したって」


「なっ!? じ、神器を破壊!? そして作った!?」


「え、簡単だろ。何驚いてるんだよおまえ?」


 ファーストは戦慄した。

 この破壊神は……神の武器すら容易く破壊創造が可能なほど規格外なのだ。


「じゃ、ちゃんと返しておいてね」


「ははー! この命に代えましてもぉお!」


 もう駄目だ。

 こいつに逆らったら死ぬ。

 今は一秒でも早く、この場からこの暗黒大邪神が立ち去ることを祈るのみ。


「あ、そうだ」


 ピタリと立ち止まり、ユリウスはこちらにやってくる。


「あんたヘンリエッタの同僚だろ? 伝えておいてくれ。……次はないからな」


 次はない。

 つまり、お前らの命はない……と。

 ファーストは恐怖し、気絶した。


「俺、人混みが苦手なんだよ。王都に来るの面倒だから、もう次は物を置いていっても届けないからな……って、どうしたの?」


 ぶくぶくと泡を吹いて、ファーストは仰向けに寝ている。


「疲れてるのかな? そっとしとこ。じゃあなぁ」


 かくして、聖騎士最強の13使徒は壊滅したのだった。

面白いと思っていただけましたら、下の【☆☆☆☆☆】からポイント評価をしてくださると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「え、なにこれ? ツボ押しマッサージ?」 メチャクチャわらった。ひどすぎですよユリウス [一言] 兄さんの壊れた鎧を届けにくる優しい行為が聖騎士団に壊滅になるとは
2020/07/12 23:44 退会済み
管理
[良い点] どうせすぐ負けるキャラなのにずるずると長引かせるわけでもなく,ささっと終わらせるのが本当に好き。実に読みやすいと思う。深さよりも爽快さがポイントになる小説ね。頑張れ!
[一言] 新規登場キャラを覚えなくていいのは楽。 といいつつ、これ伏線だったらめんどくさいなぁ…
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